夏になると少女漫画が読みたくなる! 学生時代、漫画を読む習慣が全くなかった私でも、夏になるとなぜか、少女漫画を買っていました。恐らくそれは、夏休みという自分だけの時間の中で、現実離れしたイケメンが出てくる、現実離れしたラブストーリーに胸キュンしたかったからだと思います。
『絶対にときめいてはいけない!』は、そのころ読んだ少女漫画を彷彿とさせる、ちょっとドジでお茶目な女の子とツンデレ・イケメンが出て来る王道ラブストーリーです。
主人公は、親の再婚で誕生日が1日違いの弟ができ、「いいお姉ちゃんにならなくては」と張り切る西山さくら。
そんなさくらと弟の楓が初めて出会ったのは、夏休み直前の学校でした。さくらは学年で一番人気の波多野涼に告白して振られるのですが、その様子を楓に見られてしまいます。
ところが家に帰ると楓がいて、今日から一緒に暮らす弟として紹介されるという具合です。
いやいや、ないない。いくらなんでも、一緒に暮らす前に顔合わせするでしょ、とツッコミを入れてしまいましたが、さくらは腹痛で毎回、パスしていたとか。
失恋で落ち込んでいるさくらを慰めるために開かれた合コンにも、偶然、楓が居て、最初は他人のふりをするものの、さくらが他の男にちょっかいをかけられると、さくらの肩を抱き寄せ、「俺とあいつ、どっちがいい?」とみんなの前で言う楓。しかも、2人が学校に行くと、まさかの同級生に!
さらにさらに、両親が旅行に行った2人きりの夜、風呂場でさくらが倒れるという展開、ベタすぎるでしょ!と、またまたツッコミを入れてしまいました。
このあとも、かなり力技的な展開が続くのですが、作者である築島治(つきしまはる)先生自ら「少女漫画の鉄板ネタを全部やるつもりで描いてます」と公言しているのを見て、納得。
そうなんです、これらは全部、少女マンガの鉄板中の鉄板、王道中の王道なんですよね。
そして、それらがすんなりハマるのは、オシャレでゆるふわ髪の可愛い主人公と、長身で引き締まった肉体を持つ超イケメン君たちが出て来るから。
今から三角関係の匂いがプンプンする楓と波多野の二枚看板が、もう甲乙つけがたいイケメンというのは、この漫画の大きな魅力でもあります。
そのイケメン君たちが、「壁ドン」ならぬ、こんなふうにされたらキュンキュンしちゃうよね、という思わせぶりな美しいシーンが一杯出てくるところも鉄板かつ王道です。
「弟にどきどきする姉って変態みたいじゃん???」とさくらは悩むのですが、こんなことされたら、誰だって好きになっちゃうよねというシーンが、まだまだ出て来ます。
例えば、2人で部屋にいたことを母親に見つからないようにと、抱き合って布団に隠れるのですが、楓は上半身裸。(楓は、なぜかいつも脱いでいる!)。
そして、波多野からさくらを引き離すために、中2階にいたさくらに「飛び降りろ」と言う楓。こんな絵になる抱きかかえ方、少女漫画でなければ絶対にできません。
でも、私の中の極めつけは、ケガをしたさくらの指を楓が舐めて、「おまえの指って忘れてた」というセリフ。思わず楓に、「おまえ、絶対、確信犯だろ!」と言いたくなりました(笑)。
こんな思わせぶりなことをする楓ですが、本人は無自覚で、さくらの「楓のこと好きになったらどうする?」の一言で、今度は楓がさくらを意識するようになります。そして、さくらを振った波多野が、さくらに急接近。ライバルが現れた途端、さくらに対して違う感情が芽生える楓。いよいよ三角関係に突入です。
このあと、どれだけさくらと楓が接近するのか、そしてどれだけ“少女漫画の鉄板ネタ”が出て来るのかを想像しつつ、現実離れしたラブストーリーにときめいて欲しい漫画だと思います。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp