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2018.05.13

レビュー

出会いから最高のカップルに育つまで。ときめき365日『まいりました、先輩』

はじめに強くお伝えしたいことは、人前で読むと大変ですよというところだ。

うっかり私は人前(週末の午後、東急線の渋谷~三軒茶屋間)で読んだ。数分でニヤニヤが止まらなくなりヤッベと閉じ、「今日はまっすぐ帰ろ」と唇を噛みながら無意味に窓の外をカッと凝視……なんていうことをやった。人生初だ。

できれば誰もいない部屋で思いっきり赤面しながら盛大にバタバタもがいて一気に読むと大変よろしいと思う。そうすれば肌のくすみや小さな悩みはすぐに吹っ飛ぶだろう。5巻がもう欲しい。大変だ。

むかし、とある女優さんが「宝塚は観る美容液です」とおっしゃっているのを読んだ時、そりゃよっぽどだなと思ったが、今ならよくわかる。ときめきは美容液に匹敵する。

なので、とりたてて不満はないし幸福なのに、ときどき酸いも甘いも気だるさもなぜか溢れ返りそうになる女友達のみんなに「これ、すごいから読んでみて」と配布したい。男性にも「ねえ聞いて、こんなサイコーな漫画がありまして……」とニヤニヤ語りたい。繰り返すが私は5巻がもう欲しいし、なんなら100巻くらい続いてほしい。5巻、18年10月ごろの予定だよ……。とりあえず今ある4冊を大事に読み返します。

ということで、私が心酔してやまない可愛い有効成分のいくつかを挙げてゆきたい。


その1:主人公に彼氏が即できる

“世里奈”は高校1年生。ある日、ちょっと塩顔で男前な1コ上の“水川先輩”から、ラブソングの歌詞を机にラクガキされる。

なかなか珍妙ないたずらであるし、世里奈もこのラクガキに対して「キモイ」と満場一致なアンサーを書き込むのだが、これをキッカケに先輩を意識しはじめ、なんとか仲良くなろうとあの手この手で先輩に近づいてゆく。

で、想いが極まり告白して無事オッケーをもらうわけですが、問題は、なんとここまでの展開が第1話に収まっているんですよね。


このページを読んで本当に吹っ飛びそうになった。 

なんだこのスピード感。先輩は世里奈の名前をさっき確認していたレベルだ。本当に好き? あの、「付き合おうか」のセリフは一生モノの素晴らしさでしたけど(ヤバいから読んで!)、大丈夫!?

私が甘かった。彼らはこれで大丈夫、いや、むしろ最高なのだ。

これ「最強のカップルが育ってゆく」お話なんですよ。どこにでもいそうな高校生の2人が「カップルらしいこと」をいっこずつ積み上げ、相手を特別な存在にしてゆくところが楽しくて美しい。ここに本作の有効成分がつまっています。

ゆえに「お互いのこと、まだあんま知らないけど、付き合っちゃおうか」というゼロ地点からのスタートが大変重要なのです。下の名前すらよく知らないくらいの広い野っ原にいるけれど、でも相手のことがちょっと忘れられないピュアな2人だからこそ、ながーく、ずーっと、あれこれ手探りで関係を深めてゆける。

素晴らしいですよ、これ以降、第2話からず───っと手探りでイチャイチャしてますから。これがすでに4冊もある! もう大変!

ちなみに、その怒涛のカップル成立な第1話もとても良い。下北沢と井の頭線がフル活用された疾走感でいっぱいのクライマックスに「えっもう付き合うの!?」と思いつつもあちこちで泣きそうになる。

2人はもちろん、読んでる側も最初から胸いっぱいで、そして、お付き合いが始まると更にニヤけるわけです。


その2:ロケーションと絶妙なおしゃれさ

2人の通う高校は東京の下北沢にある。この地理表現や情景描写がとてもリアルだ。

下北沢は、こぢんまりとした街なのに、レコード屋もゲーセンも劇場もあるし古着屋もある。美味しいカレー屋やカフェもすぐ見つかるし、ヴィレッジヴァンガード本店(日本最高峰のビレバン)だってある。気取らず、子供っぽすぎず、大人びてもいない場所だ。たとえ大人が夜道を歩いていても、なぜか夜更かしをしているような気持ちにさせる、唯一無二の街だと思う。ちょっと足を伸ばせば渋谷にも新宿にもすぐに行ける。

つまり、放課後デートが最高に楽しい街なのだ。

そして、さすが下北の高校生、私服や制服の着崩し方もおしゃれだ。バイト先もかっこいいし、さりげなく出てくるスマホカバーも可愛い。ホワイトデーには新宿ルミネでジル・スチュアートのキラッキラなコスメを買ってもらっちゃったり(この“新宿ルミネ”という舞台設定も絶妙で、同じジルでもお向かいの“新宿タカシマヤ”だとちょっと大人すぎる)。

……いいなあ~。


その3:彼氏が最強に有能

高1にとって高2というのは良い感じの年齢差だ。受験はまだ少し先で、2年間は高校時代を共有できる。同級生とは違った「こなれ感」も備わっているだろう。水川先輩もそういうスマートな彼氏ぶりをちょいちょい発動する。

挙げるとキリがないのだが(どれも最高だよ)、たとえば世里奈の誕生日プレゼントを買いに2人で原宿へ行った時。ネックレス2つで迷いに迷う世里奈を前に「俺が決めるから先に出てろ」と言い、どちらを選んでくれるのかなと待つこと数分、こうである。

まいりました。ここを読んで、この世里奈と全く同じ顔になった人は少なくないはずだ。水川先輩……ときおり高2男子のスペックを軽く超えてくる末恐ろしい彼氏である。そりゃ、ラブソングの歌詞を知らない子の机に書き込む人だもんなあ。


その4:夢みたいなのに、夢じゃない

冒頭でも述べたが、本作は「最強のカップルが育ってゆく」マンガである。最強に向けて 「2人であれがしたいな」「何が起きちゃうのかな」が目白押しだ。

遊園地にも湘南にも行くし、誕生日もファーストキスもバレンタインデーも文化祭もクリスマスも、グループ旅行も、元カノ(絶妙にイラつくショートヘアの美人)も、彼氏が妬くような他の男子も、喧嘩も、2人だけの仲直りのルールも、もちろん来るべき“お泊まり”も揃(そろ)っている。隙なしの布陣である。ぎゅうぎゅうに楽しい。

そして、そんなカップル的イベントがフルコンプな世界ではあるものの、それらを消費する物語ではない。すべてお互いを思う気持ちありきでイベントは進むのだ。

だから「いつか大好きな彼氏に言ってもらえたら……」や「彼氏にいつか言えたらいいのに」という、夢みたいなセリフがボンボン出てくる。



もうファンタジーかなってくらいの勢いで、すんごいことをいっぱい言われ、すんごいことをいっぱいされて、全ページ「まいりました」なのに、なぜか現実離れしていない。これは、先輩と世里奈の感情の機微や息遣いがページの隅々から伝わってくるから、そう感じるのだと思う。 この最強カップルはちょっと本当に下北にいそうだ。

以上4点が「まいりました、先輩」の可愛さであり凄みだ。

4巻で世里奈は2年生になり、先輩は3年生になった。 もちろん期待以上の「きゃー!」なイベントの連続なのだが、環境が変わりはじめ、「今しかできないこと」をお互いが意識する場面が少しずつ増えてくる。

ぜひ、ときめきに身をまかせるように読んでください。 保証します。体温は上がり、口元は和らぎ、ため息もいっぱい出て、今しかない高校時代を生きる2人から目が離せなくなります。でもほんと1人で読んだ方が安全です。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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