「人間は中身勝負。私は(僕は)無理して見た目を素敵にしようという努力はしない。だってそんなことしてモテたとしても、それは本当の自分じゃないと思うから。ありのままの私を好きになってくれる人を探してる!」という理論の人をよく見るわ。
まあね、言いたいことはわかるけど、万年恋人がいないことを開き直ってそう言い訳するのはお門違いなのよ。
面と向かっては言わないけど。
そういうあなただって人を見た目で判断してるのよ。
面と向かっては言わないけど。
そりゃ「人間は中身が一番大事」は合ってるけど、見た目をどうにかする努力を怠るのは別の問題。
生物だってそうじゃない。美しい羽を持つ鳥、大きな体を持つ動物を異性から選ぶでしょ。
人間だって見た目を考慮するのは当たり前! 仕事でも恋愛でも。
本作品の主人公、南サヤカはうまれてから30年間、彼氏なし。もちろん処女。見た目を可愛くする努力ゼロ。
典型的な上記の「人は中身だから」と夢見る、ちょっと痛い女子。
現実から目を背けて「でもだって」と言い訳して努力しない人は、愛されにくい。懸命に頑張る子を、人はやっぱり好きなの!
本作品は「Kissラブストーリー大賞」という公募コンペの大賞受賞作で、著者の天沢アキ先生のデビュー作になったもの。
「ラブリラン」ってどんな意味?と思ったら「Love-Rerun」だそうです。rerun=再演する、やり直す、再び行うの意。
サヤカ目線で物語の序盤を話してみるわ。
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私は彼氏いない歴30年の処女。IT企業に勤めている。女の子らしいオシャレに興味はない。髪はひっつめ1つ結び、メガネにパーカーにジーンズ。
でもね、好きな人はいるの。
大学のゼミが一緒だった鷺沢(さぎさわ)亮介くんと、映画の話で意気投合してから、彼に十数年来の片想い。
鷺沢くんには常にキレイな彼女がいたけれど、無理して見た目をキレイにして張り合わなくても、鷺沢くんは今の私が「らしい」って言ってくれる。ありのままの私と過ごすことを楽しいと言ってくれる。
だから私はこのままでいいの……そう、きっといいの!
そんな私にもようやくチャンスが巡ってきた。
最近彼女と別れた鷺沢くんが、映画祭に誘ってくれた。2人きり……。これってデート?!
初デートを前に緊張して眠れない。明日目が覚めたら、新しい世界が待っていて、私は物語の主人公になれるかもしれない!
「……サヤカ……サヤカ……! 大丈夫か?」
目覚めたら…あれ、なんで同僚の町田くんが目の前に? ここはどこ?
「サヤカは先週からおれんちに住んでんだろ」
ええええ……!? ウソでしょ!?
どうやら頭を打ったショックで、ひと月分の記憶を失ったらしい。新しい世界には違いないけれど、こんなの想定外……。町田くんと同棲していたなんて、信じたくない……。鷺沢くんとはどうなったの? デートを楽しみにしてたのに。
しかも知らない間に処女まで失っていたなんて……!
返して、私の記憶、初めての体験!
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記憶喪失の期間に好きじゃない男と同棲を始めて処女でもなくなっていたなんて、なんというハイパー衝撃な設定。
好きでもなかったクールなドS男・町田と、何がどうして付き合って同棲を始めたの? 鷺沢くんとのデートはどうなったの? 電話にも出てくれない。
完全にミステリーですわこれ。
そしてサヤカを取り巻く男性たちから驚きの言葉が。
町田「そういうがんばってる姿を、おれは……か、かわいいって思ったから付き合ったんだ」
鷺沢「付き合おうか、おれたち」
知らない男「寝た男の顔、忘れたわけじゃないよな」
……なにこれ、知らない間にモテキがやってきていた!
過去の知らない自分は「自分」なの? 自分なんだろうけど自分じゃないみたい……。
これはただの恋愛漫画ではないわね。謎解き、ミステリーの要素も兼ね備えた、入り組んだ物語よ。一筋縄ではいかないわ。
あえて町田と同棲を続けることにより、記憶を取り戻そうとするサヤカ。町田も協力して過去にやったことの再現を繰り返していくと、断片的に蘇る記憶!
1話ごとに、少しずつ少しずつ、じらしながら紐解かれていく1ヵ月の秘密。この絶妙なじらし加減に心臓のドキドキが止まらないわ。なんてうまいストーリーの流れ。完全に心を鷲掴み、翻弄されてしまった!
「早く次を読みたい!」の連続にドーパミンMAX放出。
そして過去の自分を思い出すたびに、今の自分が変わっていく。自分自身の現状や気持ちと真っ向から向き合おうとするサヤカ。それによって周りの人も変わっていく。
過去が今を変え、今が未来を変える。
ドラマチックなラストシーンに、決定的なキュンキュンの一撃をくらい、悶えたわ……。
ドキドキの末、泣きそうなほど幸せな気持ちで胸が満ち溢れた。
こんなときめく記憶喪失なら何回だってしたい!
ただの恋愛漫画じゃない、ミステリーのようなドキドキのスパイスが見事に練り込まれたこの漫画。最近生活がマンネリで……というあなたに是非読んでいただきたいわ。
そしてドラマ化もされました!
主人公は中村アンちゃん。いい女オーラが出過ぎてしまって、サヤカの地味パートでも「いや、地味にしていてもここまでの美女ならもてちゃうわ……」とツッコんでしまったのはさておき(笑)、町田くん役の古川雄輝さん、鷺沢くん役の大谷亮平さんと、いい女いい男揃いで目の保養。漫画とともにこちらも要チェックです!
レビュアー
占い鑑定士、ヒーラー歴15年。鑑定してきた人数は1万人を超える。漫画と映画と舞台をこよなく愛する○5歳。