腐女子=BL(ボーイズラブ)などのマンガやアニメが大好きなオタク。という程度の認識しか持っていなかった私ですが、仲良しの27歳の子が腐女子だということがわかり、その実態を聞くと。
男性より腐女子仲間と話すほうが楽しくて、結婚願望ゼロ。推しキャラは、アイドルマスター(アイドル育成ゲーム)の松尾千鶴ちゃん。BLの「受けくん」は、強面なのに、いざってときにウブなヤンキーに萌えますと言われ、凄いな、面白過ぎるぞ! 腐女子!! と思いつつも、イマイチ腐女子というものがわからない……。そんなときに発売されたのが、この『腐女子クソ恋愛本』でした。
もともと、このコミックは、腐女子仲間から聞いた面白おかしいエピソードを同人誌に描いたものだそうです。
ところが、「恋愛より趣味に生きてるだけで、あんなに色んな方面からパンチされるとは……」というほど読者からボロくそに言われ、プロの編集者からもダメ出しの連続。
そんなとき講談社から、「連載目指しませんか?」と連絡が来て、本にまでなってしまったのだとか。これは絶対に「詐欺だ!!」「掲載には、お金がいるのか?」と思ったという面白裏話も、もちろん描かれています。
そんな実話をベースに、ここに登場するのは、彼氏よりも同人誌作りを優先する女たち。その生き方は、世間の常識なんかにとらわれず、実に痛快なんです!
「結婚はまだ? 1人暮らし? 寂しくない? 彼氏は? いないの? 焦ったり不安になったりするでしょ」という世間の風潮に対しては……
これが、クリスマスや年末年始ともなると、「寂しいね」という前提のもと、「どうするの、この先?」という世間のお節介がさらに加速されるのですが……
──どうもこうも ひとりでも普通に過ごすよ!
男がいねぇと人生楽しめない人種じゃねぇんだよ!──
というセリフに、「ああ、これわかる~」と思ってしまいました。腐女子に限らず、1人でも楽しく生きている女性なら、誰もがこう思っているはず。
私も昔、1人で好きな料理を作って食べるのが楽しいと言っただけで、「だから結婚できないんですね」と初対面の仕事相手(注:くたびれたオッサン)に言われ、ぶった切ってやりたい気分でした。
そんな女心を代弁してくれるのが、表紙にもなっているハムスター。最初、なぜにチェーンソー? と思ったのですが、本編では斧や竹槍、鉄球がついた鎖を振り回して、世間の「概念」をぶった切るのです。
腐女子でもなく、年齢的にもギャップがあるのに、妙にスカッとするなと思ったら、この本は腐女子だけでなく、「腐」がつかない女子や、おひとり様にもエールを送る本なのだと気付きました。
とにかく、何でもかんでも、笑い飛ばしちゃえ! たった1度の自分の人生、好きに生きてて何が悪い! という吹っ切れ感が気持ちいいのです。
一方、腐女子の中には、彼氏持ちもいるわけで。ところが同人誌作りを中心に生きているので、スケジュールは同人誌が最優先で、彼氏がいても別れてしまう場合も多いようです。
気持ちいいほど未練も残さず、スパッと別れる腐女子たち。カッコよすぎでしょ。
結局、腐女子にとっては、彼氏といるより、家で1人で過ごしたり、女友達(腐)と過ごすほうがずっと楽しくて、デート中でも締切間際の原稿のことが気になってソワソワ。
「締切以外に縛られたくない」というセリフに、またまた「わかる~」と思ってしまいました。
この『腐女子クソ恋愛本』は、pixivコミックで300万PVを超える人気を誇り、共感の声も続々。今後、続編が出るであろうことを考えると、乗り遅れる前に手に入れることをオススメします。
腐女子はもちろん、腐女子以外も、腐女子の実態を知りたい人にも、とにかくスカッと笑い飛ばしたいときにぴったりの1冊です。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp