Twitter発の連載にして、今、口コミで人気が爆発中の、ほんわか癒し系妖怪フルカラー漫画『いい百鬼夜行』。その創作秘話を、漫画家の川西ノブヒロさんと、担当編集者に聞いてみた。
漫画家。「少年ライバル」で『機械少年メカボーイ』、『かぐやと宇宙の秘密』から始まる「かぐや」シリーズ(全3巻)を連載。WEBに掲載した「いいなまはげ」が評判となり、講談社文芸第三出版部Twitter(@kodansha_novels)にて、『いい百鬼夜行』を連載し人気を博す。
著者Twitter:@nkawani
著者ウェブサイト:川西ノブヒロのホームページ
Twitterで連載されることになったきっかけは?
――では、最初に、どういう経緯で『いい百鬼夜行』の連載が始まったのか、教えていただけますでしょうか。
川西ノブヒロ(以下、川西):2013年の暮れに、もともと習作として「いいなまはげ」という3コマ漫画を自分のTwitter(@nkawani)にアップしたんです。ありがたいことに、それがすごい勢いで数千RTされて、togetterやNAVERまとめ、2ちゃんねるのまとめサイトなどに紹介され拡散されて……。あわあわしていたら、編集さんから急に連絡をいただいたんです。
一番最初にUPされ、1万以上RTされたなまはげの漫画
――それが編集さんとの出会いですか?
編集担当・河北(以下、河北):いえ、僕は今は小説の編集部署にいるのですが、もともとは漫画編集者だったんです。川西先生はその頃……というか、デビュー前からの担当でして。漫画をウェブで見て、「なまはげさん、優しすぎる!」と感動しながらも、「あれ? この画風、何だか記憶にあるぞ? これ……川西さんでは!?」と。
(左)デビュー作の『機械少年メカボーイ』(右)初のシリーズ作品「かぐや」シリーズ。全3巻
川西:久しぶりの連絡だったので、びっくりしました。それで、一度会って話をしよう、ということになり。その場で「これを連載にしてコミックス化しよう!」と河北さんが言い出して(笑)。
――それは急転直下ですね!
河北:あれだけネットでバズっていましたし、しかも、なまはげさんの、全肯定癒し力! 今の時代に読者が求めているものだ、と感じたんです。ともかく、このなまはげさんの優しさをもっと読者に伝えたい、と。
泣いている人なら、大人でも子供でも癒しまくり!
川西:小説の部署で、雑誌は季刊小説誌の「メフィスト」しかないのに、どうやって連載に?と思ったのですが、河北さんが「これはTwitter発の連載だからそのまま、Twitterで連載するべきだ!」と言って。ふと気がつくと、文芸第三出版部の公式Twitter(@kodansha_novels)とFacebookで連載することになっていました。
――小説部署の、しかもTwitterでの漫画連載というのは、かつて例がないことなのでは……。しかも、今でも過去の投稿作は、<#いい百鬼夜行>のハッシュタグで読むことができますよね。
河北:そうですね、ただ、ウェブ媒体では、小説誌も漫画誌も垣根はないですから。また、Twitterの連載を抜粋した総集編を、小説誌「メフィスト」にも連載しました。この雑誌は、石黒正数さんの『外天楼』や、道満晴明さんの『スーサイド・パラベラム』といった漫画を連載するなど、実は漫画とも親和性の高い媒体でもあります。
(左)「メフィスト」発の大ヒットとなった、石黒正数『外天楼』(右)現在連載中の道満晴明による『スーサイド・パラベラム』2017年コミックス化予定
川西:その経緯もあり、石黒先生に推薦帯を頂いたんですよね! 僕自身、大ファンだったのですごく感動しました。
――そういえば、『外天楼』も「メフィスト」発でしたね!!
ネット上で、そしてリアルに伝わる感動の波
――実際、連載中の反応はどういうものだったんですか?
川西:平日毎晩9時に投稿していて、毎回100くらいはRTやいいねをいただいていました。読者の反応がダイレクトに伝わるのは、すごく励みになりましたね。
――なまはげさんだけではなく、老いを気にするねこまた様や、寄生先を探す座敷童、ペンギンに似ている河童なども、すごく可愛くて、ネット上でもすごく人気がありましたよ。
(上左)ねこまた様:ねことしての尊厳に悩むお年寄り(上右)河童:ひっくり返されると固まってしまう。女子高生好き?(下)座敷童:通称ざっしー。ダウンジャケット装備
川西:本当にありがたいです。自分で想像していた以上に皆さんが気に入ってくださって。ご恩返しの意味も含めて、「いい百鬼夜行」のLINEスタンプも作ってみました。使ってくださっている人が結構多くて、それも嬉しいですね。
現在、「いい百鬼夜行のやさしいスタンプ」として、LINE STOREで発売中
――発売後も、COMICZINさんを始めとして、いろんな書店さんが大展開をしてくださっていましたし、名だたる作家さんや、イラストレーターさん、多くの読者が「感動した」という声を上げてくださっていましたね。
川西:あまりにも嬉しくて、感想のコメントなど、togetterにまとめさせていただきました。一ファンとして読ませていただいている作家さんも褒めてくださって……。
(左)秋葉原 COMICZINさんの大展開 (中)漫画家の坂本憲司郎さん (右)イラストレーターのtoi8さんが描いてくださったファンイラスト
河北:書店さんからも、読んで癒された!という声が大量に届いています。今も口コミでどんどん読者が広がっている最中です。作品自体にも、ある仕掛けが入っているんですが、そこも皆さんがビックリしてくれて嬉しいですね。
川西:はい、何度か読み返すうちに、コマの背景などに隠された意味や、このキャラがこんなところに? といったネタがたくさん入っているので、そこも注目していただければ。コミックスにまとめるときにも、かなり編集して手を入れていますので、連載を追いかけてくださった人も、まとめて読むと、また違う発見があるようになったかと。
(左)P18 より。この2コマ目にいるのは……?(右)P58より。このコマ、よく見ると……?
――なるほど、早速読み返したくなりました。最後に、読者の皆さんに何かメッセージがあれば、お願いします。
川西:今も少しずつ、漫画の後日譚やサイドストーリーなどをアップしていますし、ひょっとしたら、続編なども書けると……。
河北:おっ!?
川西:あはは、できるといいなぁ、と思っています(笑)。
――それはぜひ楽しみにしています! 本日はありがとうございました!