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2026.09.16

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好きになった相手は異母兄妹!? 予測不能のピュアラブコメ『ひめごとかくしごと』

「私を誘拐してほしいの」

『ひめごとかくしごと』に秘密があることは間違いなさそうなのに、読んでも読んでも秘密の規模が全然わからない。あと、その秘密の真ん中にいるふたりがピュアでかわいらしいのでウッカリ油断して、なにか大事なことを見落としているような気がしてならない。さあ困った!

主人公・“上田直臣”は、ある日突然父の死を知らされ、オマケに自分は隠し子だったことも17歳にして知ってしまう。
父親は「胤森」という知らない名字で、普通の会社員だったハズなのになぜか秘書がいて……ということで、直臣の父とは別人のような男だった。とんだオマケである。

当然だが直臣はビックリしてショックも受け、何も考えずに家出する。そして同じように家出中の同い年の少女“藤埼夕鶴”と出会う。
夕鶴はお金をたくさん持っているようで、ファミレスでなんでもごちそうしてくれるが、「足」がないらしい。そして直臣は所持金が千円とちょっとで、バイクだけはあった。

ただ、夕鶴は乗せてくれるなら誰でもよかったわけではないようで、直臣を選んだ理由は「顔がタイプだったから」などと冗談めかして言う。
顔がタイプだったのは半分冗談。つまり半分は本当で、残り半分は「信用できそうだったから」だそう。そして信用できそうな相手にしか頼めないような「お願い」を切り出す。
この狂言誘拐は本当にずさん&ヤケクソで、犯人役の直臣は棒演技な上に、夕鶴が考えた身代金は300億。ふたりはとりあえずバイクに乗って直臣が行きたい場所へ向かう。いかにも17歳が発作的に思いついたような誘拐ごっこだ。

その道中ふたりはいろいろな話をする。すると家出の理由や困った父親のことなど、なんだか共通点も多いことがわかってくる。
何も知らずに「ウチもだよ!」なんて無邪気に盛り上がるふたりのつたない逃避行を読むとなかなか切ない。
夕鶴は直臣の「顔がタイプだった」と言っていたが、それも直臣の父親の面影が理由なのかも。

やがて狂言誘拐はアッサリ終了する。夕鶴の母親はちゃんと300億円を持ってきたし、誰も彼もがふたりの居場所を突き止めて駆けつけるのだ。

ここでやっと直臣にも、自分と夕鶴の父親が同じで、母親が異なる兄妹だとわかる。
ちょっとイイ感じだったし、「デートしよう」なんて言ってたのにね!

巨大なお屋敷と秘密だらけの家族

さあこれで異母兄妹の切ない恋が始まるのかと思いきや『ひめごとかくしごと』はちょっと様子がおかしい。

直臣は、父・一臣の遺言により、胤森家に引き取られることになる。隠し子だから子どもとしておおっぴらには扱えないが、住環境や教育は胤森家と同じ扱いにするのだという。

その大きなお屋敷には直臣が見たことのないような世界が広がっていた。増改築を繰り返した屋敷は部屋数が100を超え、そこに出入りする人たちは一癖も二癖もありそう。
誘拐された娘を取り戻すために300億円をポンと用意できるような家に、家族や血縁者以外の人間が常駐しているなんて、事件と秘密の匂いがプンプンする!

それはそれとして、異母兄妹だと判明したふたりの関係も描かれる。
あの狂言誘拐で芽生えた恋心は宙ぶらりんのまま、兄と妹の関係を築こうとする。このふたりの間には、今のところ秘めごとはなさそうだが、お互い口にしていないことはいろいろありそう。

なぜ父はわざわざ遺言状に残してまで直臣を胤森家の居候としたのだろう。隠し子であることをずっと秘密にしていたのなら、その秘密も墓場まで持っていけばよかったのに、あえてそうしなかったのはなぜなのか。直臣に対して好意的かどうかはさておき、妙に物わかりのよさそうな胤森家のメンバーも絶対に何かを隠していそうだが、異母兄妹のふたりが目下知りたいのは「父親の愛」なのだという。お互い、自分よりも相手の方が父親に愛されていたと主張する。
切なくて愛らしい会話に思えるが、なんだかイヤな予感がするんだよなあ……。本作のタイトルは『ひめごとかくしごと』で、これは「秘めごと隠しごと」なのかと思ったら、第一話のタイトルは『姫御と隠し子と』で、いわれてみればそういう漢字変換もできるよなと感心した。本作のあちこちに似たような罠がありそうで怖いが、どうか私の気のせいであってほしい。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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