ジェンダーレス制服でスカートを選んだ男子
この「なんでって言われても……」の続きは、いくつか考えられる。「自分でもわからないんです」の場合も多々だろうし、「ナイショ」かもしれない。ものすごいデタラメが出てくることもある。もっとひどいときは「なぜ私がアナタにそれを教えなきゃいけないのか、質問したらなんでも無理やり返事をくれる生成AIと一生しゃべっていたほうがいいんじゃない?」もある(私はこれを言ったことはありませんが思ったことは二度ほどあります)。
個人と個人との対話で、なぜと問われた側には「なぜならば」と理由を説明する義務が発生するように思えるが、実際のところそんな義務はどこにも存在せず、なんなら「わかりません」を言う必要すらその人にはないと思う。
ということで、本稿で紹介する『笹森くんのスカート』に登場する高校生たちに、私は「なんで?」が言えない。おそらく彼らが胸の中で一生懸命考えている最中だったり、そもそも誰かに明かすためにその答えがあるわけではないからだ。
本作はそんな彼らの胸の内の嵐を描く。原作は、『恋とポテトと夏休み』などで知られる神戸遥真さんによる同名のYA小説だ。
物語は2学期の初日、“笹森くん”の「ある装い」から始まった。
「わかる」
ところが、だ。
心と皮膚の内側にある悩みは、言わなければわからないだろうにと考える篠原くんは、誰の目にも明らかな「ものすごい汗っかき」に、彼がどれだけ苦しんでいるか、家族にもわかってもらえないでいた。
そんな篠原くんのことを、隣の席の“倉内さん”は、いつも「わかる」と言う。
2学期の初日以降、笹森くんはずっとスカート男子で、そのまま学校生活は進んでいく。彼なりの着こなしも生まれてきたりして結構楽しそうだ。スカートのせいで何かが起こるわけでもないが(そりゃそうだ)、彼の姿を見たクラスメイトたちは、いろいろなことを考える。
さて、笹森くんがスカートをはいて登校する理由について、クラスの誰かが彼に「なんで?」と尋ねたとき、笹森くんは「穿いてみたかったから。それ以外に理由って要る?」と答えた。本作の最後のエピソードを読むと、彼の回答のよさがよりビビッドに感じられるはずだ。笹森くんは何も嘘を言っていない。








