ジャズをモチーフに高校生の瑞々しい青春を描いた「青の物語」
小さな漁村で、ひとり黙々とトランペットを吹き続けてきた少女。親代わりだった祖父を亡くし、幼い妹のため大学進学を諦めた姉と、そんな姉を見守る高校教師の親友。過去の失敗から音楽と決別してしまった元天才ピアニストの少年。本作には様々な背景をもつ人物たちが登場します。
タイトルの「カインズオブブルー!」はモダン・ジャズの帝王マイルス・デイヴィスが1959年に発表した伝説的アルバム『Kind of Blue(カインド・オブ・ブルー)』から取られているかと思いますが、「カインド」ではなく「カインズ」である点に注目。いつみや彼女が出会う仲間たちそれぞれの群像劇であり、さらには青、すなわち青春の物語であることを示しているように思えて、その洒落っ気のあるセンスにも心惹かれます。
トランペット少女、念願の初セッションは思わぬ結果に……!?
約10年間ほぼ毎日練習してきたいつみ。セッション未経験ながら、ジャズスタンダード200曲が掲載されたセッション用の楽曲集を見て「全部吹けます」と告げ、東京のジャズ好きもあ然。
バッティングセンターで無双していた猛スイングのバッターが、いざ試合で投手と相対した時に、まったく打てない、そんな状況と近いかも。バンドセッションならメンバーと、野球なら投手との呼吸や駆け引きが大事。人間同士の“プレイ”は、ひとりよがりではうまくいかないもの。
この絶体絶命な大ピンチを救ったのは、飛び入りしたスゴ腕のピアニストでした。
トランペットがあればどこにでもいける――そう笑顔で語るいつみ。世界中どこだっていけるのと同時に、彼女の世界そのものも、ジャズとトランペットによって広がっていくことを予感させる、エモーショナルな見開きに胸が熱くなります。
魅力倍増!? ジャズの名曲を聴けば作品世界がより豊かに響く
音楽を追い続ける登場人物たちの息遣いから生き様までを瑞々しく描いていて、そこには自然なかたちで、音楽が鳴っている。いつみのトランペットや、初セッション時のバタバタしてしまうバンドサウンド、飛び入り参加の圧の強いピアノの音も、ページをめくれば聴こえてくるのです。
ただ、さらに踏み込んで、より深く本作の魅力を味わいたい人は、ぜひジャズの名曲たちを聴いたうえで、改めて読み直すことをオススメします。作中にはたびたびジャズの名曲が登場しますが、今はYouTubeや音楽サブスク配信などで気軽に世界中の音楽が楽しめる便利な時代。実際の楽曲を聴いて読むと、演奏シーンでの臨場感や、登場人物たちが語る楽曲の魅力を、より立体的なかたちで捉えることができます。
個人的には、一周目はまっさらな状態で、二周目に楽曲を聴いてから読むスタイルがオススメ。漫画の描写から楽曲や演奏の雰囲気をイメージして、そのあとで実際の曲を聴き、自分のイメージとのズレや合致を楽しむ。ジャズの名曲も知ることができるので、いつみに比べたら些細なことかもしれませんが、本作を通じて自分自身の世界も広がっていく、そんな可能性を感じるのです。
確かなテクニックはあるが、セッションは初心者。そんないつみが、どんな仲間たちと出会い、どんな音を鳴らしていくのか。彼女のセッションが紡ぐ青春の日々を存分に楽しみたいと思います!








