付き合うならバニラアイスを選ぶ人がいい
『バニラとオレンジ』の“珂生(かい)”は、ドラマや映画のような純愛にあこがれる高校1年生。いつか“運命みたいな人”に出会えると思って16年、恋愛映画は山ほど見てきたけれど、まだ恋の気配はみじんもありません。つまり“恋のベンチ”を温め続けて“出場(恋!)”の予感が全然ない「恋愛ベンチ女子」で、恋多き姉に「そんなに恋愛が好きなら現実で彼氏作ればいいのに」なんて言われる始末。お姉ちゃんの指摘はごもっともですが、珂生としては失敗したくないし、大切にしたいわけです。ハズレなし、鉄板の恋を大切に育てたい!
でも、珂生が出会った“運命みたいな人”は、珂生とは正反対の、ハズレも不確定要素も山ほどの男で………。
最初の印象は最悪。ピアスじゃらじゃらで髪はオレンジ色、珂生が愛する恋愛映画には出てこなさそうなビジュアル。そして他にもイヤなところがあって、珂生の理想とは真逆。
ビジュアルも、一貫性に欠いた言動も、恋をライトに扱っている感じも、とにかく全部が無理。珂生は、いつもバニラを選ぶような人が安心できるのに。
梓はとにかくモテる男でした。モテるし、恋の新陳代謝が激しい。
ところで、珂生のいう「大切」な恋のなかに、不安や興奮は含まれていません。本作が連載されているのは「デザート」です。デザート読者ならば、既におわかりかと思いますが、不安や興奮のない恋って、ないに等しいんですよね。
本当の愛ってみんな知ってるものじゃないの?
自由だけど、梓は「おかいまなし」でもなさそう。珂生の希望は彼なりにきちんと大切にしてくれます。
そういえば珂生と梓が初めて会ったアイス屋さんでも、梓は珂生のおすすめするバニラを選ぼうとしていました。1巻を通しで読んだあとに、あのアイスの場面を読み返すと、彼なりの優しさや興味の揺れ動きが、よりビビッドにわかるはずです。
恋愛マンガ史上でたぶん上位20%には入るくらい慎重で頭でっかちで不器用な珂生は、少しずつ初恋を育てていきます。展開が早かったり遅かったり、計画通りには何も進みません。みっともない失敗をいくつも重ねていきます。そして恋愛マンガの定番ルートとも違うんです。








