陰惨な連続殺人事件は、いつしか血と執着にまみれた「騙し合い」へ
都市の発展とともに人口が密集し、犯罪の数も増え続ける一方である。
物語は同地で起きた連続殺人、「ブラッディ・バード殺人事件」の捜査本部から始まる。
第1の事件は5日前、次の事件は昨日。
被害者2名はともに、生きたまま鳥に内臓を喰われて死亡している。
両手足には拘束の痕があり、遺体の傍には空の鳥籠が放置されていた。
この猟奇的な連続事件の捜査に当たるのが、内に秘めた情熱はあるが人付き合いが苦手で単独行動が多く、孤立しがちな刑事・黒地轍(くろじてつ)と、「警視総監になる」という大きな目標を持つ、やる気に溢れた若い刑事・冬野(ふゆの)。
黒地は自分勝手な行動で冬野を振り回しながらも、独自の推理と捜査で「次の事件」の現場に一足早く到着。
自分勝手な黒地に呆れていた冬野も、黒地のその操作能力を知って見直し、二人の間には信頼関係がようやく築かれつつあった。
しかし、その矢先、悲劇が訪れる。
連続殺人の「次の被害者」として、冬野が遺体で発見されたのだ。
バディである冬野の遺体を見て、怒りと衝撃で身動きが取れなくなる黒地。
そのとき彼の前に、一人の青年が現れる。
彼こそはTOKYO CITYの統一名探偵組織<ネスト>から派遣されてきた、ネスト内序列100位(最下位)である「アグリーダック」所属の探偵・天命大地だった。
大地を補佐するふたりの「記録者(レコーダー)」とともに、事件の真相究明へと乗り出す。
捜査を行う中で、この事件は<ネスト>に対する挑戦状であると気づいた大地と黒地。
現場の状況から、次のターゲットが「ネストの序列95位・メタルレアの探偵」であると推理し、現場へと急行する。
しかし、時すでに遅し。メタルレアの探偵はすでに殺されており、現場には、アグリーダックとともに合同捜査に入ると事前に知らされていた<ネスト>の事務所「ゲノムクークー」の探偵・壊堂眞白が一人、座っていた。
ここで読者は、彼(壊堂)の姿を見て戦慄するはずだ。
この壊堂眞白こそ、物語の序盤、かなりエグイ手法で女性を拷問するシーンが描かれていた男なのだから。
さらに偶然にも壊堂眞白は、黒地の高校時代の親友であったことが発覚する。
ねぇ天命君 探偵にとって
一番厄介な事件って 何だと思う?
捜査する側に 犯人がまぎれている事件だよ
類稀(たぐいまれ)な体力と行動力、そして真っ直ぐな情熱で泥臭く真実に近づく青年探偵・天命大地。
陰惨な連続殺人事件は、いつしか血と執着にまみれた騙し合いへと発展していく。
「天才の息子」が圧倒的な行動力と情熱で、真実へとアプローチしていく
シリーズに共通しているのは、犯罪都市と化した「TOKYO CITY」の治安を守るため、統一名探偵組織<ネスト>に所属する100人の名探偵と、探偵を支えるふたりの記録者(レコーダー)が3人1組のチームを組み、難事件に挑むというストーリー。
YouTubeやTikTokのアニメーション動画と並行して、複数のマンガ作品が連載されている。
本作の主人公・天命大地は、〈ネスト〉の創設者にして神のような推理力を持つ伝説的な「真の名探偵」、天命ハジメの息子。
大地にはハジメのような天才的な推理力は遺伝していないが、彼は泥臭く基本に忠実な独自のスタイルで、偉大な父の背中を追い続けている。
過去シリーズで天命大地が主人公を務めた、比較的オーソドックスな推理物である『ハンドレッドノート-高校生探偵 天命大地-』などと本作が異なるのは、物語の冒頭より、読者には犯人らしき人物が示されているということ。
この時点で、有名な所では「刑事コロンボ」や「警部補・古畑任三郎」シリーズのように、読者・視聴者には犯人を示したうえで、刑事や探偵がどう犯人を追い詰めるかを楽しむ、推理ミステリーの一つの手法である「倒叙ミステリー」の形をとるのかと思っていた。
しかし、そんな読者の先読みは、あっさりと裏切られる。
壊堂は、1巻のラストで合同捜査中の大地を罠に誘い込んで襲うことで、ほぼ自ら進んで、正体を明かしているのだ。
ちなみにそのシーンでは、大勢の暴漢に襲われた大地が、その可愛らしく華奢に見える風貌からは想像もできないほどのタフさと格闘能力を見せつけている。
大地は絶体絶命のこの窮地を、どのように切り抜けるのか。
壊堂の怪しさに気づいた大地の仲間たちは、無事、大地を助けられるのか。
第2巻(7月9日発売予定)を、楽しみに待ちたいと思う。








