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2026.03.18

レビュー

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両手打ち&ストリートのコンビが奇跡を巻き起こす! 最高にCOOLな青春バスケ『ゼロとヒャク』

スポ根漫画の新たな伝説が始まる

すごい新人が現れた。昨年11月の芳根京子が表紙の週刊少年マガジンで連載が始まって以来、ずっと追いかけている『ゼロとヒャク』の江戸翔一朗だ。その魅力を一言で言うぞ!

カッケェ!

高校1年生の静華(シズカ)はバスケ少年。ポジションはSG(シューティングガード)。両手打ちだけど自分のリズムで打ちさえすれば、3ポイントシュートも外さない。でも、今どきの高校バスケはパワーと高さを前面に出したスタイルが主流。身長161.2cmの静華のプレイは、同情されるほど、ことごとくブロックされてしまう。
そんな静華の前に、長い髪を後ろでくくった怪しげな男が現れる。身長180cm。豪快なダンクを見せつける彼に、静華が「10cmくらい身長わけろぉ」とボヤくと、彼は言う。
俺は体のデカさでバスケしてんじゃねえよ
ハートのデカさでバスケしてる
これはNBAリーグの平均身長より20cmも背が低かった得点王アレン・アンバーソンの名言の引用だ。その言葉は美しく力強い。しかし、アイバーソンだって183cmあったのだ。静華にしてみりゃ、恵まれてる。

両手打ちのシューティングガードなんて、チームに迷惑をかけるし、ブロックされるし、なによりダサい……。
バスケ辞めたい
そんな静華に男は言う。
そんな話をしているとき、部活の先輩たち3人が現れ、彼らとバスケ勝負をすることになる。自信満々の男は静華に言う。
オマエの“領域”
オレが広げてやる
しかし、やはり静華の両手打ちシュートはブロックされる。男は言う。
その言葉に押されて静華はもう一度シュートを放つ。しかし、わずかに短い。
そこに男が飛び込んで空中でボールを掴み、そのままバスケットゴールへ……!
翌日の学校。教室には昨日の男がいた。彼はアメリカからの転校生。名前は美阪百。“百”と書いて“はく”と読む。そして相棒は、静華零。

語りたいことが多すぎる

さて、『ゼロとヒャク』の第1話のあらすじを話したところで、この漫画のカッコ良さを、引用したコマをさかのぼりつつ解説したい。スマホの画面を上に下に“SWISH! SWISH!”しながら読んでほしい。

まず、最後のページに「The Beginning」ってエピソードタイトルが来るの、カッコいいよね。バカみたいな感想だけど、コレはすごい。第1巻の全話、ラストにエピソードタイトルが来ている。もう全話そうする気マンマンでしょ。こういう構成、アニメやドラマではたまにあるけど、漫画でやるには結構勇気がいるはず。だって連載で次号に話を「……。次号に続く」って感じで曖昧に引っ張りたいこともあると思うんだけど、この手法はそれを許してくれない。毎回ラストでテンションを上げて、次回につなげる自信がないと、これはできない。

次。百がボールを叩き込むシーン。めっちゃ、カッコいいな。バッシュをこの位置で裁ち落としにしているのとか、すごいクール。この見開きの構図の大胆さ、もう琳派じゃないすか?

さらにもひとつ前の引用シーン。吹き出しが、ラップのリリックになっている。ラップを題材にした漫画って結構あるけど、そのほとんどが韻や言葉が先行して、絵や物語、感情が追いついてこないものばかり。でも、本作のこのシーンでは見事にハマっている。よく分からない? じゃあ、コミックでこのページの次の展開を読んでほしい。このリリックに押されて静華の感情が動き、次にバスケの動作が描かれる。リリック→感情の動き→バスケのモーションという流れは、まさにヒップホップで言うところのフロウを生みだしている。

最後に百がボールを弄んでいるシーン。手の、指の動き、その表現の巧みさ。「シュッ」「とるるるるる」「バッ」という擬音が、本当に聞こえてきそうなほどに、繊細に描き分けられている。これはとんでもない力量。絵のうまい漫画家はたくさんいる。でも、その時代ごとに(それこそ1年ごとにくらいに)“今のうまい絵”というものは更新されるものだ。それは「流行り/廃(すた)り」じゃなく、その時代を決定づけるような絵のこと。江戸翔一朗という漫画家はその実力を持っているし、間違いなくそれを更新する漫画家になると思う。

あと、第2話以降に登場するチームメイトやライバルのキャラクターの素晴らしさとか、語り始めたらきりがないので、これから読む人にどうしても伝えたいことだけ。

あとがきで作者はこう書いている。
私の高校バスケはコロナとの共存でした。(中略)
人と関わりづらい時代を学生として生きた私だから描ける令和のバスケを土台に面白い漫画になればいいなと思います。
作中に登場するアレン・アンバーソンの名言の正しくは
“I don't play it with my size, I just play with my heart. ”
(俺はサイズでバスケしてるんじゃない、ハートでプレイしてるんだ)
である。
作者もまた、満たされなかった情熱や悔しさを抱えたまま、今も漫画の中でバスケをプレイしている。この『ゼロとヒャク』は、そういう漫画なのだ。

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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