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2025.05.30

レビュー

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コミュ障だってバスケしたいっ!! ぼっちJK、仲間とのバスケで才能が開花する!

隠れた才能が開花する瞬間、あるいは、知られていなかった意外な特技が誰かに見つかるシーンに興奮してしまうという人は、多いのではないでしょうか。かくいう私もそのひとり。

そんなゾクゾクする描写が楽しめるのが本作です。主人公は苔石花江(こけいしはなえ)。大神高校(おおかみこうこう)の新入生です。一方、双子の妹・咲月(さつき)は、推薦でバスケ強豪校に入学した全国レベルの有望選手。
花江は、そんな咲月を部員ではなく姉としてサポートする存在でした。

コミュ障少女、コートに立つ!

自他とも認めるコミュ障な花江は、心の中ではやりたいと思いながらも、チームスポーツであるバスケットボールをプレイすることを諦めていました。

入学早々、クラスで孤立しかけた花江に「友達になって」と話しかけてくれたひとりの少女・小緑(こみどり)つぼみ。彼女の「バスケ部に入りたいから部活見学についてきて欲しい」という言葉が、花江の運命の扉を開けることになります。

実は大神高校バスケ部は、全国大会を狙うほどの熱い部活。バスケ初心者の小緑と、中学時代生物部だった花江に対し、同じく1年生でバスケ部期待のルーキー栗原夏凛(くりはらかりん)は、初心者は足手まといだとふたりの入部拒否を宣告。

しかし花江は、趣味である生物観察の知見から、生物の「完全変態」、すなわち幼虫→蛹→成虫と段階を踏んで、より優れた形態へと大きく変化させる生態になぞらえて、小緑をこう評価します。
入部を拒絶され、諦めの悲しい笑顔を見せる小緑の胸の内を想い、そして初めてできた友達が否定されたことに、ムクムクと沸き上がる闘志。花江は、中学2年で地区大会得点王という実績を有する夏凛に、1on1(ワンオンワン)の勝負を持ち掛けます。花江が勝てば小緑の入部を認める、という条件付きのバトル。

この時点ですでに胸熱ですが、待っていたのはさらなる興奮の展開……!

妹を陰で支えた努力と観察眼が花開く

自分が負けるなど微塵も思っていない夏凛、そして実力未知数な花江にハラハラする読者の私が心の準備を整える間もなく、花江がするどいドライブで切り込んで、先制点を奪取!
ここまで、弱々しいコミュ障キャラとして描かれていた花江が、まるで別人のように躍動する圧巻のシーンです。夏凛を完璧に封じ込んだ花江。生物部出身の彼女に、なぜこんなプレイができるのか。その秘密の裏には、妹・咲月の存在と、花江のある特性が隠されていました。

花江は優秀なプレイヤーである咲月の自主練相手として9年間も1on1を続けており、大神高校の選手にもその名が知られる咲月をして、こう言わせるほどの実力を持っていたのです。
コミュ障ゆえチームプレイに苦手意識があって選手にはならなかった花江。だからこそ、咲月しか知らなかった本当の実力。もともとの才能に加え、咲月との長きにわたる1on1で、そのスキルはさらに磨かれていました。

そしてもう一つ注目すべきは、夏凛との勝負を観ていた大神高校バスケ部の2年生エース、藤咲音(ふじえのん)のこの指摘。
花江の「観察」に関する描写は、本作の序盤から散りばめられていました。最初に小緑が花江に話しかけようとしたときも、その表情から緊張を感じ取っていたり、体型からバスケ初心者と見抜いていたり。また趣味として夢中で虫の観察をしていたことや、咲月の練習を日常的に動画撮影してチェックしていたことなど、小さな伏線がたっぷり。

これまで好きでやっていた「観察」で培われたスキルが、バスケにおいて有効な武器になることが示されたシーンでもあります。

可愛いキャラ&絵とのギャップ! ヒリヒリするバスケシーンに注目

ふわふわした可愛い女の子たちがたくさん登場するので、一見ラブコメかなと錯覚しそうですが、実は本格青春バスケ漫画。先ほど触れた、花江がドライブで切り込むシーンをはじめ、臨場感溢れるゲーム描写には思わず引き込まれます。

自らの言葉を伏線回収! 新しい自分へ

初心者だからと入部拒否された小緑について花江は、「繁栄するのは『強いもの』ではなく『変化できるもの』」と話し、彼女を肯定しました。

周囲から他の部活に勧誘されても「バスケがやりたい」と意志を貫く小緑に、バスケをやるチャンスを(コミュ障ゆえの集団競技への怖さから)自ら手放してしまった幼い頃の後悔がフラッシュバック。今もまた、バスケ部加入に及び腰でいる自分を奮い立たせ、彼女はついに行動するのです。
まさしく「完全変態」への第一歩!

無事にバスケ部入部を果たした花江たち。その一方で自分たちの入部を拒否した夏凛は、罰として入部NGを食らってしまいます。夏凛の入部を認めてもらうため、花江は夏凛とのペアで1on1最強と噂の先輩・藤&初心者・小緑コンビと2on2バトルに挑むのですが、果たして……?

妹との1on1で磨かれたバスケスキルと持ち前の観察力を武器に、花江はどんなプレイヤーへ成長していくのか。そしてコミュ障を理由にチームスポーツと距離を置いていた過去と決別し、ついにバスケ部デビューを果たした彼女が、友人や先輩たちとどんな部活ライフを送っていくのか。

幼虫から蛹(さなぎ)、やがては成虫へと姿を変えていくであろう花江の、ひとりのバスケット選手として、またひとりの女子高生としての成長から目が離せません!

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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