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2026.02.15

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世界を壊したのは眠り姫だった……歪められた童話を巡る騎士道ファンタジー『眠れる森のレガ』

俺はロラーナ姫の騎士、レガ!

王国最強の騎士と誉れ高いレガは、かつて奴隷だった。鎖に繋がれ、行き倒れた奴隷少年のレガを、救ったのはロラーナ姫。
少年は体を鍛え、剣の腕を一心に磨いた。しかし、運命とは皮肉なもの。ロラーナ姫は邪竜の呪いを掛けられ、長き眠りについてしまう。なにがあっても姫を救い出すと心に決めたレガは成長し、眠り姫の騎士団団長となり、ついに邪竜を倒し、姫の呪いを解く!
ロラーナ姫は、レガの知るかつての心優しい姫ではなかった。姫は魔法を操って、イバラで人を貫き、瘴気で体を溶かし、大殺戮を繰り広げる。さらには邪竜を復活させ、両親である国王と妃の住む城を……!

王国はカタストロフィー(破滅)を迎えた。

そこに現れたのは、悪夢のなかで姫に魔法を与えた《彼》。
姫は長き眠りの中で《彼》に惑わされ、闇落ちしていたのだった。
かくして世界は、姫の見た悪夢の具現「眠れる森」に沈み、あまたの物語が歪められていく。

赤ずきんは獣の血を啜る怪物となり、
シンデレラは永遠の舞踏会で踊り続ける亡霊と化し、
人間になることを諦めたピノキオは、人々を操り人形へと変え、
海に還ることを許されない人魚姫は、轟く歌声で嵐を巻き起こし、
七人の小鬼を従えた白雪姫は、滅ぼした国々で赤い果実を頬張った……。

しかし、諦めない男がひとり。それはロラーナ姫の騎士レガ。
彼は気がついていた。姫のある仕草に。
レガは決意する。
夢の彼方まで君を迎えに行く!

猛烈なスピードで展開する童話アッセンブル

第1話で1巻分の物語が展開する圧倒的なスピード感。だからといって、物語が上滑りすることなく、グイグイ読ませるのは、誰もが知る童話の展開を裏切りながら、騎士道精神やプリンセス・ストーリーがしっかりと息づいているからだ。作者は『はめつのおうこく』や『国産少女クラリス』のyoruhashi氏。キャラクター、アクション、ストーリー、もうどこを切り取っても“脂が乗った”無双状態の一作になっている。

第2話では、さらに貪欲に童話やファンタジー世界を取り込んでいく。
ロラーナ姫を討伐し、眠れる森を打ち払うため、聖剣王アーサーは「幻想騎士団」を結成。その狼煙がわりに、ロラーナ姫を目覚めさせた咎で、レガは断頭台へと送られる。怒号が飛び交う人々の前、アーサー王が剣を振り上げたとき……。
パンチャの狙いは、眠れる森の手つかずのお宝。森への冒険の相棒に選ばれた(ヘッドハンティングされた)レガは、パンチャの助けで窮地を脱する……、とまぁ、出てくる、出てくる魅力的なキャラクター(で、この後も出てくる、出てくる)。このワクワクがたまらない!

そして物語は続く。
眠れる森に足を踏み入れたレガとパンチャ。すると早々に、森に巣食う《狂いの帽子職人》サリヴァン・ザ・マッドハッターと、彼が“縫い上げた”ジャバウォックに襲われる。姫の呪いよって歪んでしまった物語の登場人物たちの力は強大で、生身の騎士など太刀打ちできるものではない。まったく刃が立たず、窮地に立たされたとき、レガの胸の刻印が輝き始め、体から湧き上がる力を感じる。

マッドハッターは語る。
呪いとは存在を歪ませ食らう──“死の牙”
ですが稀
(まれ)に存在するのです
その身に受けた呪いを力に変えて武装する手合いが
さまざまな物語の登場人物は、ロラーナ姫の呪いを受けたことで「SPELL」という特殊能力を得て、本来あるべき存在を歪ませていった。レガもまた、覚醒めた姫によってイバラで胸を貫かれたときに呪いを受けていた。
いや違う。
レガが受けた呪いとは、それよりももっと前、姫が眠りにつく前にかけられたもの!

その呪いは、きっと「愛」なのだ。

愛と怨嗟、愛と嫉妬、愛と苦痛。それは一枚のコインの裏表。レガもまた、ロラーナ姫の目覚めによって投げられたコインの一枚なのだが、表を上にして眠りの森に落ちたのだ。そして光属性を帯びて立ち上がったレガは、姫がかけた呪いによって歪んだ存在となった物語の登場人物、その誰よりも強いことを証明しなければならない。「愛」こそ最強の呪いでなくてはならない。つまり、この冒険物語は、愛の証明の物語なのだ。

なんて、素敵なフェアリーテイル(おとぎ話)。

第1巻の4話分で、3巻分くらいの展開、読み応えがあるのだが、物語はとば口に立ったばかり。
これは眠れる森の姫が
覚醒めた後の物語──
長い長いおとぎ話の幕が、今、上がった。

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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