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2025.11.30

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不吉な銀髪の少女と若き外交官、明治の世にもたらした革新とは『白銀のキュイジーヌ』

料理は“心”を伝える言語である

人に料理を振る舞うというのは、どれだけ相手のことを思っているかが伝わる瞬間です。喜んでほしいからこそ、その想いが自然と料理に込められていくのだと思います。

それは外交という場でも同じ。料理はとても重要なアイテムであり、国と国の対話という大切な場面で、時として言葉以上に強い“言語”として役目を果たします。

2025年10月30日発売の『白銀のキュイジーヌ~明治外交官の料理人~』は、明治時代初期の長崎出島を舞台に、若き外交官に見出された銀髪の少女が、料理人として駆け上がっていくシンデレラストーリーです。

真之が見抜いた“光”──美鈴が選ばれた理由

漁村で暮らす美鈴には両親がおらず、その目立つ容姿から村でも世間でも冷遇されてきました。
そんな彼女にとって、料理人であった父から教わった西洋料理の数々は、かけがえのない大切な思い出です。
4ヵ国語を操るエリート外交官・本多真之は、強気な態度ゆえに周囲からは異端視されながらも、出島外交の停滞を“料理”の問題だと見抜き、新たな料理人を探していました。
そんなときに出会ったのが、とうもろこしでポップコーンを作って食べていた美鈴です。
ハーブやニンニクを使って異国の味を再現する腕に可能性を感じた真之は、遊郭に売られかけていた美鈴を100倍の値段で買い取り、公邸料理人として迎え入れます。
「この世で一番の料理人になれ」という真之の一言で、公邸料理人としての美鈴の挑戦が幕を開けます。

外交で“料理”が果たす役割とは

本作において、料理とは“国の顔”そのものだと感じます。
どんな料理を出し、どのように調理し、どの食材を使うのか。そして、それを相手国がどう受け取るのか――。そのすべてが「国の価値観をどう伝えるか」という一種の外交戦略になります。
外交交渉は、言葉の選び方ひとつで関係が揺らぐほど繊細な場です。だからこそ「料理」と「味」は、言葉を越えて共有できる“揺るがない体験”として、国と国の距離を近づけるのだと感じます。

そういった意味でも、料理はときに言葉よりも大切な“伝達手段”になるのではないでしょうか。

だからこそ真之は、和食の形式である「本膳料理」だけではこれからの外交に通用しないと考え、革新を起こそうとしているのだと思います。その志は、食の力で外交を変えようとする彼の熱意そのものです。

料理という“言語”で未来を切り開く美鈴

真之との出会いによって運命が開かれた美鈴もまた、料理という“自分の言語”で未来を切り拓いていくひとりです。
美鈴にとって料理は、差別され続けた自分を肯定し、世界とつながる唯一の手段。
厨房でただひとりの女性であり、周囲からの理解を得られない中で、どう信頼を掴んでいくのか──その道のりにも期待が高まります。

外交デビューは目前! 2巻で彼女は“何を作る”のか?

1巻のラストでは、いよいよ美鈴が“外交の舞台”で料理を振る舞う準備に入ります。
真之が突きつける無理難題を彼女がどう乗り越え、どんな一皿で相手国に向き合うのか。美鈴が自分の料理で世界に向き合おうとする挑戦は、2巻でさらに大きな飛躍を見せてくれるはずです。

料理好きはもちろん、“努力が未来を変える物語”に胸を熱くしたい人にもぜひ手に取ってほしいです。差別や孤独を抱えた少女が、自分だけの“味”で運命を切りひらいていく姿は、多くの読者に勇気をくれることでしょう。

レビュアー

Micha

ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!

X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier

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