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2025.11.19

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有名店が続々実名協力! No.1グルメサイトを賭けた食レポバトル!!『フーディーズ』

1軒目でラーメンを食べ、2軒目にミシュラン3つ星のお鮨

「フーディー(美食家)」の条件は何か。ミシュランやゴ・エ・ミヨに載る高級店にバンバン通える経済力とコネクション? それとも1杯のラーメンのために朝から3時間並べる辛抱強さ? これらの条件は「それも大切」と思うが、もっと絶対的な条件が他にあるような……というのが、実際にフーディーな人たちと接して個人的に感じたことだ。そして今回『フーディーズ』を読んで「やっぱりな」と思った。
フーディーの必須条件のひとつは「ケタ違いに多くの名店を食べ歩く」こと。フーディーたちのめくるめく美食話を聞いていると「365日毎日外食しても間に合わないんじゃ」と思うことがあるのだが、この仕組みはシンプルだ。
彼らは2軒目に行くのだ。ラーメンの次にお鮨……そんな「ごはんのハシゴ」を元気よくこなせるフーディーは実在する。しかも「ちょっとお箸をつけてすぐに退店」なんて失礼なことはしない。「ごちそうさま!」と完食して、2軒目に向かう。で、2軒目でも気持ちよく料理をいただく。胃もスケジューリング能力もお財布も特上じゃないとフーディーは務まらない気がする。ということで非常にリアルなフーディーマンガだと思う。

有名店が実名で登場し、おそらくモデルとなった美食家はあの人では……といったキャラクターが活躍する。しかも現代の美食事情を少年漫画的世界観で描いているところも痛快。大好きだ。

美食を「バトル」にする方法

主人公の“頂拓味(いただきたくみ)”は、IT企業に勤める23歳。ある日、新規事業でグルメレビューサイトの立ち上げを命じられる。グルメレビューサイトなんて既にいっぱいあるのに、今さら始める意味や差別化ポイントは?
ここで「わかる」と思う方も多いはず。大好きなお店に心ない一言だけの雑レビューがつけられたときのガックリ感! つまり、誰でも情報が発信できる今だからこそ、情報の発信者を超絞ったサイトにするぜ、というわけだ。拓味とチームメンバーの“四条味緒(しじょうみお)”の最優先タスクは、フーディーに「私たちのサイトにレビューを書いてください」と依頼すること。でも彼らの実名も顔もわからないから、探すところからスタート。本作は「まだ見ぬフーディー探し」の冒険でもある。

フーディーがいそうなところ=名店ということで、西麻布の有名ラーメン店「楽観」に向かうと……?
いた! たぶんこの人絶対フーディー! 圧巻のビジュアルの彼は、“食龍ガロ”というフーディーだ。拓味と味緒は幸運にもガロさんと楽観のラーメンをいただくことに。
ああおいしそう……。拓味は、どのお店でも本当においしそうに料理をいただく。そしてきちんと「いただきます」「ごちそうさま!」と手を合わせる。ガロさんも拓味を気に入っている様子。じゃあレビューも書いてもらえるかと思いきや……。
競合がいる! ガロさんはどっちのサイトでレビューを書いてくれるの? 3つ星の超有名鮨店でフーディーの奪い合いバトルが始まる。が、それはそれとして、お通しが出てきたら席について「いただきます」だ。この「料理と、料理人と、お店へのリスペクト」もフーディーのとても重要な条件だと思う。

そして『フーディーズ』もまた「料理と、料理人と、お店へのリスペクト」で描かれている。本作は美食バトルマンガだが、お店や料理は比べないのだ。点数をつけることだってしない。料理は、ただそこにあるとても尊い(&美味な)ものとして描かれる。

では何でバトルするのかといえば、
「レビュー」だ。その料理をどう味わい、どう表現するか。毎話、競合のフード大手企業“天食”からの刺客(本当に刺客みたいな社員ばかり在籍する会社なのだ。採用サイトを見てみたい)と拓味とのレビューバトルが繰り広げられる。

そして戦いはありとあらゆるグルメのジャンルで展開される。
超一流うどんフーディー探し! アツい!

しかもただレビューを書いて優劣を競うのではなく、足の引っ張り合いや因縁もあるのが非常に面白い。
拓味は、彼自身の「ある才能」とその出自によって、フーディーたちと出会うことが宿命づけられた男ともいえる。

とはいえ、美食マンガを読むときに楽しみなのは、やっぱり食事そのもの。ここもまた愉快な作品だ。
おいしいうどんを食べて頭髪が逆立つなんて最高じゃないか。シズル感と勢いがたまらない。こちらのうどん屋さんも実在のお店で、読むと絶対に訪れたくなるはずだ。

フーディーズ(1)

著 : 中西 淳
原作 : 亜樹 直
原案・協力・その他 : ショーキチ

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レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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