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2025.07.25

レビュー

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突然の鬼バズで俺の人生一変! 独身社畜がギャルと一緒に飯ウマの日々!

パワハラ上司に理不尽に怒られるようなことがなくても、日曜の日が沈む頃には憂鬱な気持ちになるし、月曜の朝は会社(あるいは学校?)へ行きたくないなと思ってしまうのは世の常。
次の週末を楽しみになんとか1週間乗り切るのが社畜の人生なのか? でも、趣味がきっかけで人生が180度変わったとしたら……?
本稿で紹介する『ダンジョンキャンパーの俺、ギャル配信者を助けたらバズった上に毎日ギャルが飯を食いにくる』(以下、本作)は、そんな「好きなことで、生きていく」といった社畜の夢を叶えてくれる痛快エンタメ作品です。原作はカクヨムにて高評価を獲得し、講談社Kラノベブックスで書籍化。コミカライズ版を風光めいびさんの作画でモーニング・ツーにて連載中の現代ファンタジーです。

最強なのに隠れてキャンプする主人公の哀愁

主人公・岡本英介は、最強の冒険者の実力を隠し持っているのにも関わらず、会社ではパワハラ部長のターゲットにされている底辺社畜。
平日は理不尽に耐え、週末だけが生きがい。そんな彼の唯一の楽しみが、柴犬の見た目をしている犬神さまをお供に、ダンジョンでのソロキャンプ。
モンスターを狩って、それを食材にキャンプ飯を作る。誰にも邪魔されない、自分だけの時間。
仕事のストレスから解放されて、焚き火を眺めながら一人で過ごす時間の贅沢さ。区内にあるダンジョンという非日常空間で行われることで、ファンタジーとリアルが絶妙にミックスされています。

そんな英介の平穏なキャンプタイムに、突如として現れたのがギャル配信者・伊波音奏(いなみメロディー)。強力なモンスターに襲われているところを、つい助けてしまったことから物語は急展開します。
最強の英介と、弱可愛い彼女のキャラクターが本作の大きな魅力。遠慮の欠片もない行動力と、まっすぐな性格。家に押しかけてくるレベルの積極性は、配信者ものでよくある「恋愛禁止」みたいな設定を完全無視していて新鮮です。
その救出の様子がバズって、英介の名前がトレンド入り。社畜だった彼の人生が一気に変わっていく様は、まさに現代の男性版シンデレラストーリーと言っても過言ではないかもしれません。

飯テロ必至! ダンジョンキャンプ飯の魅力

そして本作のもう一つの柱がキャンプ飯の描写。ダンジョンのモンスターを食材として使うという設定に、「キャンプ」と「配信」という現代的な欲張りセットが、しっかりとそれらの要素がそれぞれを引き立て合っています。
食材調達のためのモンスターとの戦闘も、アクション描写に躍動感があって緊迫感もありますし、英介がSS級冒険者だからか、無双状態の強さも紙面からしっかり伝わる画力もあり、もっと戦闘シーンが欲しくなるほど。
そんな気持ちを知ってか知らずか、戦闘のあとには深夜に読むと確実にお腹が空く「飯テロ」描写です。キャンプの醍醐味である「非日常空間での食事」が、ダンジョンという究極の非日常と組み合わさることで、読者の冒険心と食欲を同時に刺激してきます。実際に食材はモンスターですからね。

現代的な「ざまぁ展開」の爽快感

序盤から繰り広げられる痛快な展開も本作の魅力です。パワハラ上司を週刊誌のネット記事や炎上で現代的にやりこめていくのは生々しさもあり、ファンタジーの中でも現代社会であることを再確認できるいいスパイスです。
安定した収入と社会的信用が欲しかった英介が、劣悪な環境でもしがみ付かなければならない悲哀からの解放。現代的で地に足ついた「ざまぁ」の爽快感はあまり類を見ないこの作品ならではです。
SNSでバズることで人生が変わるという展開も、現代ならではのリアリティがあります。
実際、一夜にして有名人になる人も身を持ち崩す人も珍しくない時代。そんな「もしかしたら自分にも起こるかも」という期待感が、読者を引き込みます。

社畜×最強×キャンプ×ギャル×配信×メシという、要素てんこ盛りの設定をそれらを絶妙にブレンドすることで、既存ジャンルの進化形として成立しています。
月曜の朝が憂鬱な全ての社会人に贈る、現代版おとぎ話。主人公の逆転劇を見ているうちに、芸は身を助けるということで、きっとあなたの好きなモノゴトや趣味が人生を変えてくれるかも?という希望が湧いてくるかもしれませんよ。

レビュアー

宮本夏樹

静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。

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