「何を飲む?」と聞かれると、「とりあえずハイボールで!」とよく答えます。私にとってビールよりも飲みやすく、甘さがなく食事にもよく合うハイボールは、友人との時間に欠かせない1杯です。
そんなハイボールに欠かせないウイスキー。大きな氷を入れたグラスに注げば、ロックで楽しむこともできます。すると、それは急に“大人の風格”を感じさせる1杯へと変貌します。個性豊かなウイスキーの中から、お気に入りの銘柄を見つけたいと思うこの頃。特にジャパニーズウイスキーは世界的にも評価が高く、その魅力は尽きることがありません。
そんなジャパニーズウイスキーが生み出される蒸留所を舞台にしたマンガが『駒田蒸留所へようこそ ~わかばが芽吹くまで~』です。廃業寸前の家業の蒸留所を復活させるため、娘がゼロからウイスキーの世界に飛び込み、奮闘する姿を描いています。
駒田蒸留所の娘・駒田琉生(こまだるい)は、父亡き後、廃業を検討していた母に対し、蒸留所を継ぎたいと直談判します。しかし、母からの答えは「NO」。
なぜなら、今の駒田蒸留所では新たにウイスキーを製造することができないから。ウイスキーに必要な原酒は最低でも3年は熟成させる必要があり、すぐに製品化して利益を生み出すことが厳しいのです。
さらに、駒田蒸留所のブレンダーも父の死後、空席のままです。(ブレンダーとは、ウイスキーの風味や品質を決める調合の専門家のこと)
初めて足を踏み入れたウイスキーの世界で、琉生は次々と新しい事実を知ります。ですが、彼女は挫折するどころか、どんどんとウイスキーの魅力に惹かれていきます。
琉生の視点を通して、ウイスキー作りへの理解が深まる様子が丁寧に描かれており、お仕事マンガとしても非常に読み応えがあります。
数々の映画祭に出品されたアニメーション映画の前日譚
本書は、2023年に公開されたアニメーション映画『駒田蒸留所へようこそ』のコミカライズ作品で、映画の前日譚がオリジナルストーリーとして描かれています。
映画の中で琉生は、若くして実家の「駒田蒸留所」を継ぎ、新進気鋭のブレンダーとして業界から注目されています。そして、原酒を失い製造できなくなった駒田蒸留所の代表的なウイスキー「独楽(こま)」の復活に奔走します。
本作は、フランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭」コントルシャン部門、スペインの「2023 シッチェス・カタロニア国際映画祭」、日本の「第36回東京国際映画祭」アニメーション部門など、数多くの映画祭に正式出品され、話題となりました。
現在はAmazon Prime Videoをはじめとする配信サイトで視聴できるので、マンガと併せて楽しむのもおすすめです。
また、マンガに登場する「独楽」のファンである安元さんは、映画では駒田蒸留所のPRに重要な役割を果たしています。
しかも、映画内で安元さんたちが運営するニュースサイト「news value Japan」は、実際に映画のPRの一環として、ジャパニーズウイスキーに関する記事を公開しています。
https://gaga.ne.jp/welcome-komada/special/
さらに、本書には物語の合間に、実際の蒸留所を取材した記事も収録されています。
『駒田蒸留所へようこそ ~わかばが芽吹くまで~』は、ウイスキー入門書としても魅力的な1冊ですが、こうした記事はウイスキー好きにとっても必見の内容です。
何かと注目を集める「日本のモノづくり」。ウイスキーもまた、日本の職人たちによるこだわりが詰まった「作品」なのだと改めて実感します。本書を片手に、たまには居酒屋のハイボールではなく、バーで様々なウイスキーを飲み比べてみるのも良いかもしれません。
レビュアー
Micha
ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier