一流企業の営業マンである香川秀太(25歳)は、上司から日々パワハラを受け、精神的にも限界を迎えていました。
ある日、人づてに教えてもらった「京都市中京区麩屋町通上ル六角通西入ル富小路通下ル蛸薬師通東入ル」というヘンテコな住所をもとに訪れたのは、「中京(なかぎょう)こころのびょういん」。
風変わりな医者と看護師の2人しかいないその病院で処方されたのは、なんと推定8歳のメス猫・ビーでした。



早速、処方された猫が効いたのか!?と思いきや……、


というのも、この書類はパワハラ上司のものだったのです。
せっかく入った一流企業だからと、精神を病んでもなんとか踏ん張ってきた秀太でしたが、激怒した上司から「お前みたいな会社の損失にしかならんやつは、いなくなってしまえ!」と、クビを宣告されてしまいます。
ところがビーを返しに病院へ行くと、先生から「あなたは頑張りやだから、あんま無理せんでもええやないですか?」と言われます。さらに……、

不幸を運んでくる猫なんて、さっさと返したい。私ならそう思いますが、秀太は違います。留守にする時間が多いからビーがかわいそうだと言うのです。そして、再びビーを処方されてしまう秀太(笑)。
この憎めないお人好しな感じ、絵からも伝わってきます。
しかしその帰り道に、またしてもとんでもない出来事が起こります。
やっぱり秀太はツイてない。


人間誰しも悪いことが起こると、なんでこんな目に遭わなければならないんだと思いがちですが、後で振り返るとそれが転機になっていたということは往々にしてあります。
ふと、「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」という言葉が頭をよぎりました。これは、不運に思えたことが幸運だったり、またその逆だったりということわざですが、この作品はまさに「塞翁が猫」。
先生も看護師も謎が多い「中京こころのびょういん」ですが、ここにやって来た人々は、処方された猫たちに振り回されつつも、新しい視点に気付かされるのです。
この作品の原作小説は、累計30万部の大ヒットシリーズ。それが漫画化されたことで温かみのある絵が加わり、心にそっと寄り添ってくれます。
特に、何も喋らない表情豊かな猫たちが、いい味をだしてます。
仕事や日々のプレッシャーに疲れている人に、ぜひとも読んで欲しいお話だと思いました。