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2025.03.07

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金なし、資格なし。でもタワマンに住む!! 格差社会を生きる女子のサクセス・ストーリー!

タワマン、それは君が見た光――。タワーマンション、通称タワマン。一般的に20階以上あり、高さが60メートルを超える超高層マンションをそう呼ぶそうです。富裕層や人生の成功者を象徴するような存在である一方で、やっかみの対象になったり、あるいは災害時などに不便な一面があるなど、「タワマン」というフレーズに様々な意味や価値が生まれている、独特の建築物です。

本作の主人公は、そんなタワマンに住むことを生涯の夢とし、その実現に向けてブレずに突き進む、痛快かつぶっ飛んだキャラクター・藤村いちご。派遣OLとして働きながら、同僚女性たちを敵に回すことなど意に介さず、高給取りの男性社員に媚びまくり、常日頃からタワマンに住むための努力を惜しみません。

合コンで出会った青木がタワマン住みであることを知る場面は、いちごのタワマンへの執着ぶりがうかがえ、作品がスタートして十数ページで早くも「これ、ぜったい面白いやつ!」と思わせてくれる説得力があります。
四隅に配された「タ」「ワ」「マ」「ン」の文字演出も最高。まさにターゲット、ロックオン!状態。でも「タワマン」の言葉だけに踊らされず、分譲or賃貸、広さや階数など、タワマンの先にある真のステータスを確認しようとする慎重さも持ち合わせているいちごです。

青木の誘いに乗り、そのまま彼の住むタワマンへと同行するいちごは、しっかり高層階(28階)で広さも問題ないことを確認。青木から男女の関係を迫られると、(そう来なくっちゃ)とノリノリ。セフレ回避のため、青木から「真剣だよ」という言質を取ると、いざベッドイン。しかしそこに新たな登場人物が!
まさかの同棲相手帰宅。普通なら「ヤリモクで誘われた哀れな私」となるところですが、スーパータワマンドリーマーいちごは違います。彼女を追い出せばタワマンに住める、そう考えて相手の女性・岡入恭子に「あなたはもう用済みみたいですよ?」と言い放つメンタルの強さを発揮。「クズでもタワマン」な青木をアリとするタワマン至上主義な思考回路、さすがです。

ところがどっこい、悲しい現実が待っていました。
青木は、恭子のヒモ……。このタワマンは、弁護士である恭子の持ち家であることが発覚。タワマン獲得の夢は早々に散る……と思われたのですが、ここからが急展開。最初はバチバチだったふたりですが、親の価値観もあっていちごが不遇な学生時代を過ごしていたという背景、さらに強烈なタワマンへの憧れを知った恭子は、「青木を追い出して私を住まわせたほうがマシでは?」といういちごの大胆な提案を受けることに。

こうしていちごは、結果的にクズ青木のおかげもあって、念願のタワマン住民というステータスを手に入れることができたのです。

ちなみに、恭子がほだされた(?)いちごのタワマンへの思いが描かれる場面がこちら。
タワマンはいちごにとって、もはや家ではありません。暮らすエンターテインメントです。
高層階でカップラーメンを食べると、優越感がスパイスになって飽きたラーメンも新鮮な美味しさを感じるという、「ホテル宿泊時に外食せずあえて部屋でコンビニ飯食べるのがうまい」理論を持ちだしながらはしゃぐいちご。

タワマンに憧れなどもっていない私でも、その強烈なタワマン愛をなんだかかわいらしく思えてしまうほど、いちごはチャーミングなキャラクターなのです。

これまでも数多くの女性を部屋に連れ込んでいたという青木に対して、追い出すだけでは足りないとばかりに復讐を企てるふたり。裏切られていたのは恭子なのに、彼女より前のめりないちごが頼もしい。そんな痛快な復讐劇も見どころのひとつですが、タワマンといえば、欠かせないのが高層階マウントのボスキャラ。もちろん本作にも登場します。いちごたちが住む28階よりもさらに上、46階住民の喜多見(きたみ)です。
低層階住民が、「嫌われるといじめられる」といちごに忠告するほど要警戒な上層階住みのボス・喜多見。彼女に招かれたお茶会に、いちごは高級デパートで購入した5000円のお菓子を手土産として持参しますが……
さっそくのジャブ。このときのいちごの気持ち、わかります。ハイソサエティなタワマン住民の集まりに参加したことがあるのですが、高級で良質な食べ物を知り尽くす人たち相手の手土産はめちゃくちゃプレッシャーでした。今でもあのときのチョイス(当時話題だった某台湾スイーツ)が正解だったのかわかりません……。

いちごは手ごわそうな喜多見相手に、どんな立ち居振る舞いを見せるのか、めちゃくちゃ気になるところです。
「温かくて幸せな世帯ばっかりのタワマンはもはやタワマンじゃない」という、いちごの歪んだタワマンへの偏愛と超絶ポジティブな思考、さらにまわりを巻き込んで突き進むパワフルな行動力に、いつの間にか私は彼女に夢中。

タワマンあるあるコメディでありつつ、主人公を中心に魅力的なキャラクターたちの言動も楽しい本作。いちごの考えや行動を通じて、(住みたいかどうかは別にして)なぜだかタワマンそのものすらも愛おしくなってくるような、不思議な魅力にあふれた作品です。

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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