新たなる冒険の始まりは、新たなる伝説の始まり
『GALAXIAS』は、そう確信させる漫画だ。
物語はラニアケア王国という国の西の端、とある島から始まる。
ちょうどそのとき、島にもうひとりの訪問者がやってくる。
その訪問者とは、政府に忠実で残酷な竜騎士のヤーキス。
竜騎士とは、ラニアケア王国にだけ“まれ”に生まれる、尻尾がついた「竜人」の騎士のこと。特別な力が使える竜人は、その腕っぷし次第では領地を治める「竜騎士」になれるのだ。ほかの土地の竜騎士を倒せばその領地を我が物にでき、さらには王国の重臣「王撰十二宮」に加わることもできる……。
父を痛めつけ、ジオを見つけたヤーキスは言う。
貴様を『国家転覆』の罪で連行する
世界最高の冒険家ユーリ・ホルスト
その実の娘——ジオ・ホルスト
そして、ジオが父だと思っていた村長は育ての親で、実の父は憧れの人ユーリ・ホルストだった。
村長とジオの必死の抵抗も虚しく、もはやこれまで……というところで
純度100%のバトルファンタジー
これが面白い。
非の打ち所がない。
この作品を2年かけ、連載作品に練り直したものが本作となる。力が入って当然の第1話。その冒頭でいきなりブチ込んできたのは……(この原稿の最初のコマのところを見てちょうだい)!
「わき腹 攣った……」
「ああー! 右足まで攣った」
「え!? なんかこめかみがピクピクする」
もうひとつ、鷲づかみにされたシーンを紹介したい。
竜騎士ヤーキスに必死の抵抗をするジオの場面だ。
あ~、もっと褒め倒したい!
第2話の舞台は、旅に出たふたりが最初に訪れた風光明媚な街。そこでは、鉄道誘致で利害が相反する商会と馬車乗りが対立している。ジオとネレイドは、その対立に悩む少年ポルタと出会い、双方を納得させる方法を考える。それは鉄道を誘致して観光客を呼び込めば、商会は街が活気づくし、馬車乗りは案内人という新しい仕事を得られるのではないか、というアイデアだった。しかし商会と馬車乗りの大人たちは「現実的でない」と却下し、こう言うのだ。
子供ってのはいつだって正しい答えを教えてくれる
だがそれは俺たち大人が「分かっていて諦めたこと」でしかない
悪いが提案は受けねぇ
もしこれが青年漫画なら、この苦い言葉を飲み込んで次の展開に進むだろう。でも『GALAXIAS』は少年漫画なのだ。ここから少年ポルタとネレイドは、大人の理屈をひっくり返す。それも言葉だけに頼らず、圧倒的な絵のカタルシスでもって、大人たちを理想に向かわせるのだ(そこは、漫画を読んでくれ!)。私が大人だったからいいようなものの、子どもだったら拳握って泣いてるぞ、感動で。
冒険、夢、友情にバトル……。これまでの(そして現在進行形の)偉大なる作品が描いてきた、そのど真ん中を、『GALAXIAS』は恐れずに進もうとしている。それを「王道」と呼ぶのはたやすいけれど、それは凡百の作家が歩める道じゃなく、王の才を持つ作家にしか歩めないから「王道」というのだ。幸せにして、この作品と年を重ねることになる少年少女に「おめでとう、いい漫画に会えて良かったね」と言いたい。