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2024.11.24

レビュー

最強の竜人と夢見る少女が未知へと挑む!かつていない冒険バトルファンタジー!!

新たなる冒険の始まりは、新たなる伝説の始まり

10年、20年……、いやいや、この漫画はもっと長く愛されることになる。
『GALAXIAS』は、そう確信させる漫画だ。

物語はラニアケア王国という国の西の端、とある島から始まる。
世界最高の冒険家ユーリ・ホルストに憧れ、旅を夢見る村長の娘・ジオは、島から逃げ出そうとしては、いつも頑固な父に引き戻されている。「私、一生このままなのかな…」と弱気になっていたある日、彼女は不思議な青年と出会う。ジオは彼に食料を与え、島の外の世界について聞き出そうとするのだが、青年は世界のことはおろか自分の名前まで記憶を失っていた。落胆するジオが、自分の夢のこと、それを果たせないでいることを愚痴ると
と、叱咤される。ジオは改めて父を説得しようと決意し、青年に「ネレイド」という名前を与えて、島から送り出す。

ちょうどそのとき、島にもうひとりの訪問者がやってくる。
その訪問者とは、政府に忠実で残酷な竜騎士のヤーキス。

竜騎士とは、ラニアケア王国にだけ“まれ”に生まれる、尻尾がついた「竜人」の騎士のこと。特別な力が使える竜人は、その腕っぷし次第では領地を治める「竜騎士」になれるのだ。ほかの土地の竜騎士を倒せばその領地を我が物にでき、さらには王国の重臣「王撰十二宮」に加わることもできる……。

父を痛めつけ、ジオを見つけたヤーキスは言う。
貴様を『国家転覆』の罪で連行する
世界最高の冒険家ユーリ・ホルスト
その実の娘——ジオ・ホルスト
ヤーキスの目的は、国王である「竜王」を殺害したユーリ・ホルストの実の娘を探し出すこと。
そして、ジオが父だと思っていた村長は育ての親で、実の父は憧れの人ユーリ・ホルストだった。
村長とジオの必死の抵抗も虚しく、もはやこれまで……というところで
ネレイドが現れて、ヤーキスを一発のパンチで吹っ飛ばす。これでラニアケア王国のお尋ね者になってしまったジオとネレイドは、村長の許しを得て旅に出ることになる。

純度100%のバトルファンタジー

作者の果坂青は、第108回週刊少年マガジン新人漫画賞で、3年ぶりに最優秀賞にあたる「特選」を勝ち取った漫画家である。その特選作は「マガポケ」で読める。
これが面白い。
非の打ち所がない。
この作品を2年かけ、連載作品に練り直したものが本作となる。力が入って当然の第1話。その冒頭でいきなりブチ込んできたのは……(この原稿の最初のコマのところを見てちょうだい)!
「わき腹 攣った……」
「ああー! 右足まで攣った」
「え!? なんかこめかみがピクピクする」
って、村人Aのギャグ。その度胸にもうハートを鷲づかみ!

もうひとつ、鷲づかみにされたシーンを紹介したい。
竜騎士ヤーキスに必死の抵抗をするジオの場面だ。
本作は人間のジオと、竜人のネレイドが主人公で、やっぱりかっこいい尻尾を持ったネレイドがキャラとして立ってしまうのだけど、物語を引っ張っていくのはジオなのだ。この5ページは、決意と勇気と機転で絶体絶命を乗り越えていくジオのキャラを、見事に描きだしている。もちろん画力もすごいのだけど、ジオの過去から戦術までたっぷり情報を詰め込み、物語のリズムとバトルの熱量をキープしながら、展開の最後を金的で落とす! これ、バトル漫画の100点満点を叩き出した瞬間ですよ。

あ~、もっと褒め倒したい!

第2話の舞台は、旅に出たふたりが最初に訪れた風光明媚な街。そこでは、鉄道誘致で利害が相反する商会と馬車乗りが対立している。ジオとネレイドは、その対立に悩む少年ポルタと出会い、双方を納得させる方法を考える。それは鉄道を誘致して観光客を呼び込めば、商会は街が活気づくし、馬車乗りは案内人という新しい仕事を得られるのではないか、というアイデアだった。しかし商会と馬車乗りの大人たちは「現実的でない」と却下し、こう言うのだ。
子供ってのはいつだって正しい答えを教えてくれる
だがそれは俺たち大人が「分かっていて諦
めたこと」でしかない
悪いが提案は受けねぇ
これは大人の理屈だ。その大人の理屈を噛み砕いたこの言葉には、やさしさと厳しさが入り混じっていてドキッとする。私たちはこの大人たちほどに、丁寧な言葉を使えているだろうか? 人が口にした理想を、「お花畑」の言葉で切って捨てることがいかに罪深いか理解しているだろうか? そして子どもが描く理想、こうあってほしいと思う世界を諦めた世界は、本当に生きるに値する世界だろうか?

もしこれが青年漫画なら、この苦い言葉を飲み込んで次の展開に進むだろう。でも『GALAXIAS』は少年漫画なのだ。ここから少年ポルタとネレイドは、大人の理屈をひっくり返す。それも言葉だけに頼らず、圧倒的な絵のカタルシスでもって、大人たちを理想に向かわせるのだ(そこは、漫画を読んでくれ!)。私が大人だったからいいようなものの、子どもだったら拳握って泣いてるぞ、感動で。

冒険、夢、友情にバトル……。これまでの(そして現在進行形の)偉大なる作品が描いてきた、そのど真ん中を、『GALAXIAS』は恐れずに進もうとしている。それを「王道」と呼ぶのはたやすいけれど、それは凡百の作家が歩める道じゃなく、王の才を持つ作家にしか歩めないから「王道」というのだ。幸せにして、この作品と年を重ねることになる少年少女に「おめでとう、いい漫画に会えて良かったね」と言いたい。

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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