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2024.11.17

レビュー

リストラ竜師&100頭の竜による最強の国づくり! 弱小国家が竜の楽園になるまで

異世界系のファンタジー作品における定番に「追放もの」「追放系」と呼ばれるジャンルがあります。本来の能力を評価されず、元の組織から追放されてしまうものの、新しい環境のもとでのし上がっていく、というパターン。本作もこのタイプに含まれるのですが、大きな特徴は、その職業です。騎士や魔術師といったこのジャンルでお馴染みのものではなく、なんと竜の飼育員(本作では「竜師(りゅうし)」と呼びます)。

『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』で知られる謙虚なサークルが原作を手掛けているという点でも注目の本作。

ファンタジー作品とドラゴンの相性は抜群ですが、ボスキャラや野生のドラゴンではなく、兵器として国が管理し、飼育員によって世話をされている、というのが本作でのドラゴンの立ち位置。

主人公となるのは、ブリード=スタリオンという竜師です。無敵の竜騎兵団を率いる、現大陸最強の軍事帝国ドラゲニアで、花形である竜騎士を羨ましく思いながら、地味で重労働な竜の世話をしていました。

周辺国をほぼ制圧し終えたドラゲニアでは、過剰な戦力は不要という軍縮の流れのなかで、コストのかかる竜の価値も低下。そして竜師はリストラされ、ブリードは20年働いた職場をクビとなってしまうのです。

竜師ってどんな仕事?

まず、竜師の仕事とは一体どんなことをするのかを紹介しましょう。
このように、竜にまつわるあらゆることを一手に担っていたのが竜師。きつい、汚い、危険のいわゆる「3K」職場です。一番の問題は、染みついた竜のニオイが取れず女性にもモテないこと。辞めていった竜師たちも、「悔しい」より「ホッとする」くらい、厳しい現場のようです。ファンタジー作品の中でも特殊な職ゆえ、こういったセリフや描写で仕事内容を理解させてくれる構成は親切。より深く本作に入り込むことができます。

老竜バルバロッサ

本作でカギとなりそうなのが、老竜バルバロッサ。ドラゲニアの全竜たちのリーダー的存在で、かつてはドラゲニア帝国の英雄王が跨った竜です。
ブリードがお別れの挨拶に来ると、彼が口を開くよりも先に何かを察するバルバロッサ。ブリードと明確に意思の疎通ができるほど賢い。そんなバルバロッサは、ブリードがドラゲニアの竜師をクビになったことを知ると、突如行動を起こします。
なんと、ブリードを連れ、さらには仲間の竜100頭たちと共に、ドラゲニアを脱出。バルバロッサをはじめ、多くの竜たちがブリードを慕い、そしてそんなブリードをクビにしたドラゲニアを見限って、新天地を求めて旅立ったのです。

人生一変、ある女性との出会い

目的地などないまま、ドラゲニアを後にしたブリード一行に早くも危険が迫ります。
突如襲い掛かってきたのは、飛竜を操(あやつ)る騎士。ドラゲニア領の外に脱出したブリードと竜たちは、他国から見れば自国領に進軍してきた竜騎兵団そのもの……というわけで、これを駆逐すべく騎士はブリードたちを攻撃します。

しかし、ブリードとバルバロッサは見事なコンビネーションを発揮して、この騎士と飛竜をノックアウト。しかも、余計な火種を生まぬよう怪我をさせることなく戦いを終わらせました。ところが、飛竜の様子がヘン。ブリードが調べると、この飛竜は蛇に咬まれており、その毒が体内に回りかけていたのです。
手際よく毒抜きをして飛竜を救ったブリード。攻撃は阻(はば)まれ、手なずけている飛竜の治療までされてしまい、「完敗だよ」と完全に白旗を上げる相手の騎士。その正体は、なんと一国の王女様でした。
弱小国の王女であるフィアナは、その見事な操竜術を持つブリードと強力な100頭の竜を、自国に迎えたいと提案します。行く当てもないまま、バルバロッサに連れ出されて途方に暮れていたブリードにとっても、願ってもない申し出。こうしてブリードは、彼女の誘いを受けて北の小国・レーヴァティンでその手腕を発揮することになるのです。

ブリードの竜師としての技術は超一流

フィアナとの一戦にて、ブリードは高度な連携を行っています。
このフィアナとのバトルで、ブリードは口頭での指示とは別の命令をハンドサインで出しており、これを読み取ったバルバロッサの攻撃により、フィアナと飛竜は敗北を喫することになります。敵を欺く見事なフェイント。これもブリードとバルバロッサ、ふたりの熟練度の高さゆえでしょう。

本作の世界においては、竜を操るのは一対一が原則であるという記述もあり、100頭の竜を引き連れるブリードがいかに異次元の操竜術の持ち主なのかがわかります。

ブリードがフィアナの提案を受け入れた最大の理由。それは「この人の力になりたい」という思いでした。

彼が20年働いたドラゲニアでは、クビになった際に上司からこんな扱いを受けています。
一方、フィアナがかけた言葉は、正反対。
仕事を、そして人を正しく評価することの大事さを痛感させられる、この2つ対比はとても印象的です。

小国へと移ったブリードは、バルバロッサを筆頭に100頭の竜たちと、いったいどんな成り上がりを見せるのか。彼らが巻き起こすであろう快進撃に、ワクワクが止まりません。

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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