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2024.02.21

レビュー

芸能人のパパ活を支配して大金を掴み取る!! 芸能界という地獄めぐりの物語

芸能界とパパ活とアテンダー

マンガ『スキャンダラ』は、リアルタイムのニュースとリンクするようで、少し先んじていて、少しずつ異なる。時代と並走している、今まさに読むべき作品だ。

物語の主人公は、元天才子役で芸能科のある高校に通う荻野ハク。しかし今のハクは芸能関係の仕事がなく、毎日登校しているため、欠席や中途出席が当然の芸能人同級生から「皆勤賞」と呼ばれてバカにされている。しかし、彼には裏の顔があった。それは芸能人同級生のパパ活をアテンドする仲介人。カンダという偽名とスマホを駆使し、事務所や親に搾取されてお金に困っている同級生と、金持ちクライアントの密会をアテンドしている。

パパ活(女性に限らず男性も)といっても、彼のアテンドは「おさわりなし」「指定場所以外には行かない」など、安心安全の信用第一を貫いている。なぜなら自分を蔑(さげす)み、嘲笑(あざわら)う芸能人同級生はハクの金ヅルだからだ。どんなイヤな奴でも、ハクにとっては大事な商品。



とはいっても、荻野ハクはまだ高校生。かつては自分にまとわりついていたクセに、上から見下ろす輩には、お仕置きを下す。ターゲットは人気男性グループのメンバーで、ドラマ「君の肝臓マシッソヨ」(最高だね、このタイトル!)の主演・日野友介。アテンドする相手はブラックリストに入っているクライアントのひとりで、広告業界の重鎮・荒牧フミ子(68歳)。

日野のビビる顔を見て溜飲(りゅういん)を下げるハクだったが、荒牧は札束をチラつかせて、設定されたサービス以上の行為を要求。マスコミの目に絶対触れない完璧なアテンドから逸脱する荒牧の行動に、ハクは焦りに焦るのだが……。共演女優を妊娠させてドラマを降板させたことで、多額の違約金を払わなければならなくなった日野は、荒牧の要求に逆らえない。運良くマスコミの目に触れることなく事態を回収したハクは、荒牧からルール違反の違約金をたんまりせしめる。

自分を笑い者にしたヤツらを裏で操り、巨額の金をつかむ男の勝利の雄叫び。
それは誰かに告げることもできず、誇ることもできない、あまりに孤独な勝ち名乗りだ。

荻野ハクは、悪いヤツなのだ。ハクがどんな虐待を受けてきたとしても、どんなに芸能界が腐っていようが、まわりの同級生がヒドいヤツだろうが(同情はしても)やっていることは肯定できない。それに完璧なアテンドを謳っていても、しょせん薄氷を踏むような危うい行為でしかない。

普通科生徒からの脅迫

彼女の名前は、蓮見糸乃。同じ高校の普通科の生徒だ。密かにハクの活動を追い、その事実をチラつかせながら一気に距離を詰めてくる。なんとかそれらしい嘘をつき、パパ活アテンダーの活動についてシラを切ろうとするハクだったが、糸乃はお構いなし。


芸能人同級生のパパ活を撮り、SNSでばらまく。それが本心であれば、糸乃はハクの金儲けの敵。彼女の正体を突き止めて、その目的を阻止しなければいけないのだが……。
同時刻、ハクのアテンドでパパ活をしていたモデルの小田まゆ美が、睡眠薬入りのドリンクを飲まされてピンチに陥っていた。目の前のピンチと、見えないところで進行するピンチ。どうなる!

ここで糸乃の真意が語られる。

蓮見糸乃には、一歳年上で芸能科に通っていた兄がいた。
その兄が半年前に屋上から飛び降りて自殺した。
しかし糸乃は、芸能科の誰かに殺されたのだと確信している。

ハクが歩んできた薄氷は、すでに踏み抜かれた。もう、お金という蜘蛛の糸にすがって上へ登ることはできない。ハクができることは、蓮見糸乃が下ろした糸をつかみ、ヤバいことだらけの芸能界の裏側へと降りていき、殺人犯を探すこと。これまでハクが行なってきたパパ活アテンダーの仕事は、その巣窟へつながる入り口となる。
ここから物語はサスペンスのギアを上げていく。
糸乃の兄の死の真相は?
悪に手を染めているハクに救済はあるのか?
芸能界という地獄めぐりの物語が、これから始まる。

レビュアー

嶋津善之 イメージ
嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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