アナタの「ざわめく」時間はどんなとき?
日々生活をしていると心が「ざわめく」時間はないでしょうか。この場合はどう立ち回るのが正解なのか、どう返答するのがベストなのかなど、アレコレと考えてしまう時間のことです。私の例でいうと、夫が率先してやってくれた家事。もちろんありがたいですが、あと一歩、ここが気になる……!というときになんて伝えたらいいのだろうかとざわめきます(笑)。
そんな日常に潜む「ざわめく」瞬間を切り取り、クスクスと笑えて、同じ体験はしていないがどこか共感ができてしまう『山田君のざわめく時間』が2024年01月23日に発売されました。
味わい系日常ショートストーリーとは?
主人公の青年・山田雄一(やまだおいち)はいろんなことに「ざわめいて」しまう性格。
例えばエレベーターに乗ると、どう振る舞うのがスマートなのかと様々なシミュレーションをしてしまいます。
確かにエレベーター文化が日本にはあり、新卒の時は「率先してボタンの前を陣取れ!」と言われたものです。たった数十秒のエレベーター空間に疲れ果ててしまう山田君がなんとも愛おしい……! 本作ではこのような「ざわめく」時間が14のエピソードで紹介されており、1話10ページほどでまとめられています。
庶民さとマニアックさが融合したハイブリッド作品!
他にも、友だちからの興味のない話を逸らす方法や、名前が思い出せない人との会話の切り抜け方など、共感する話題があるとおもいきや……
アイドルに詳しい斉藤君によるアイドルネタのマニアックさに驚かされます。
それもそのはず、本作の作者・中丸雄一先生はアイドルグループKAT-TUNのメンバーである、“あの” 中丸雄一さんなのです。学生時代に一度は諦めた漫画家という夢を大人になってから再び本格的に目指し、なんと約7年の月日をかけて「月刊アフタヌーン 2023年8月号」で漫画家デビューを叶えたそうです。
中丸先生の描く「ざわめく」時間のエピソードは、四半世紀もの間アイドルとして経験値を積んだからこその着眼点が存在しています。それは中丸先生にしか描けない唯一無二のエピソードであり、おもしさでもあります。しかし、そんなアイドル・中丸雄一をずっと見てきた私たちにとって、本作で描かれるくだらなくも超庶民的な「ざわめく」エピソードこそ最大の魅力だと感じるのです。アイドルという一種の偶像のような存在からぬるりと抜け出し、隣に座ってたわいもない話をするクラスメイトのような距離感を描き切った本作は熱中せずにはいられないでしょう。
アナタは紙派? 電子派? 大充実の単行本!
今回の単行本には、2023年8月号~2024年1月号の「月刊アフタヌーン」に掲載されたエピソードだけでなくなんと、新たに80ページ以上の描きおろしエピソードが追加で収録されています。……80ページって単行本のほぼ半分は描き下ろしじゃないですか!? 連載で読んでいた読者も新鮮な気持ちで楽しめるなんとも贅沢な単行本です!
そして電子限定特装版も発売されており、こちらには漫画家になることを夢見ながら一人コツコツと書き溜めていたデビュー前の習作ネーム「かぐや」の冒頭19Pが特別収録されています。
発売前から重版が決まり、発売後は一時書店から品切れ状態が続く事態となった『山田君のざわめく時間』。2024年の一大マンガニュースとして盛り上がっているこの流れに、皆さんもぜひ乗り遅れなく!
あ、ぜひ単行本を手にしたらカバーを外してみてくださいね! 本編にはない「ざわめき」に思わず頷いてしまいました!
レビュアー
ライター。フリーランスで働く1児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier