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2023.12.11

レビュー

終わりなき家事と介護の日々。54歳主婦のキケンな初体験! 平凡な人生「急カーブ」物語

日々の生活に疲れきっている54歳のオバちゃんが、“未知の世界”への扉を開ける……これが沁みる~、細胞の隅々まで沁みてくる。

あまりにもリアルで、もしかしたら私もこんな人生だったかもしれないと思ってしまいました。

“みっちゃん”こと庵未知(いおりみち)は、87歳の認知症の母の面倒をひとりで見ながら、小さな書店を営み、家族の面倒や家事もこなす毎日。

婿養子の夫・庵洋二は、穏やかだし仕事もきちんとするけれど、毎晩近所に飲みに行き、家事は一切手伝わないぐうたら亭主。

      



甘やかしすぎて、「仕事以外な──んにもできないオッサン」にしてしまったのは自分だと思っている未知に、わかる!ひとりで頑張りすぎちゃったんだよね、と思わず声をかけたくなります。

大学生の長男(22歳)も、中学時代の不登校のなごりか、部屋にこもりぎみ。
その上、母親と仲が悪い50歳になる妹までいて、身も心も休まる暇がない。

何より大変なのが、認知症の母親。
補聴器を失くしたり、パジャマ姿で店に出てきたり、手づかみでご飯を食べるのはまだ序の口。すさまじい寝言や夜の徘徊のため、毎日睡眠不足の未知。

      



認知症の親の面倒って、こんなに大変なのかぁ……と思うのと同時に、みっちゃん、投げ出したり爆発したりせず、よくここまで頑張ってこられたね、と同情してしまいました。

「あー… どっか行きたい」
そう思っても、どうすることもできない未知は、颯爽とした女性がポルシェに乗る姿を見て、突然「運転免許を取りたい」と思い始めます。

これもわかる!! 実は私も仕事が忙しすぎて頭が変になったとき、この際ド派手な外車でも買ったろかぁ!!と思いましたもん。みっちゃんと一緒で、車の免許を持ってないのに(笑)。

しかし未知には、思い通りに動けない日常が重くのしかかります。
ある日、 おつーじが出ないことで母親が倒れてしまい、家族全員を巻き込んでの大騒ぎ!! ところが誰もアテにできない。
車の免許さえあれば、病院に連れて行けるのに……ということで、免許取得を決意するわけですが、ここで水を差すヤツが。

       




誰か、みっちゃんが追い詰められてることに気づいてよ、と思ってしまいますが、なんでもこなしてしまう未知の頑張りが、家族には当たり前になっているのでしょう。
「私もこのタイプだわぁ~」と、ため息をついている人も多いはず。

結局、居候することになった甥っ子の後押しもあり、ようやく教習所に通い始めることに──。という話なのですが、ここまでくるのに次から次へと難題が押し寄せ、みっちゃんの孤軍奮闘ぶりが、まるで同世代の女友達の話を聞いているようで引き込まれました。

それもそのはず、著者である入江喜和(いりえきわ)先生の実話に基づくところが大きいようで、入江先生ご自身が55歳で車の免許をお取りになったとか。

私は必要性がなかったので免許は取らなかったのですが、運転ができたらもっと違う人生だったのではないかと思うことがあります。
その一歩踏み出すか、踏み出さないかで、人生は大きく変わるわけで……。みっちゃんが教習所生活を経て、どんなふうに自分を取り戻していくのか、この先も見届けたいと思いました!!

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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