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最強のロボット先生現る! 異能力問題児クラスの学園アクションコメディ

KIMURA×CLASS(1)
(原作:角石 透 漫画:土井 那羽)
2023.11.10
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新しくて懐かしい超能力学園コメディ

最近の漫画は設定が複雑で、しっかり読み込まないとついていけないことがあるのだが、本作はコレだけ押さえておけば大丈夫!


 
主人公は、自分が見たもの/感じたことをすべて記憶する超能力者・相馬輪。彼が通う高校のIG科には、使えるのか使えないのか微妙な特殊技能「IG(インネイトギフト)」を持つ生徒が集められている。そこで毎回騒動が起こるのだが、それをさらに掻き回すのが自律機動型教育機械の機村先生。つまり、超能力者×ロボット×学園×アクション×コメディなのです。

では、この漫画に登場する楽しい面々を紹介しましょう。
 

 
この技能じゃ、世界は救えません。
 

 
優しい性格のせいで、雑用を押し付けられているし。
 

 
技能の使い道がまったく見えないし。
 

 
うん、まぁ、人を感動させる歌唱力って……いいよね。
こうしたIG科の生徒たちは、共同生活を送ることで力が進化するという設定なのだが、この才能が進化してどうすんだ?

役に立たない超能力者を描くSF作品もないわけじゃない。それらは大体、役に立たない超能力を逆手に取って、とうてい敵わない相手に打ち勝っちゃったりするのだが、本作にはそんな敵は現れない(とりあえず1巻では)。毎回、IG科の騒動が狂騒的に拡大し、オチがついて日常に回帰していく展開なのだ。それはまるで藤子・F・不二雄か高橋留美子の漫画のようでもある。

IG科の生徒たちは、その特殊技能ゆえに、特殊技能を持たない一般生徒たちに馴染めないという悩み(ネガオプション)を持っている。それがまた誰もが経験するような、布団を頭からかぶって「わぁ???」と叫びたくなるような悩みだというのも共感が持てる点だ。たとえば主人公の輪は、記憶力の良さゆえに自分のこれまでの黒歴史が脳裏に浮かんでしまうし、目があった人間を恋に落としてしまう麻來は、自分に容赦なくぶつけられる好意や欲望に辟易している。つまりこの作品は、SF・超能力モノでありながら、思春期の悩みが詰まった真っ当な青春学園漫画なのだ。
戦闘力がバカ高い黒嶺開斗くんを例に見てみよう。彼は赴任してきたばかりの機村先生に、なにかと反抗するのだが……

 




強がっているだけだし。

ロボット条項を守らない機村先生

個性豊かなIG科を、毎回引っ掻き回すのが、ロボットの機村先生だ(ドラマ化の際は、是非とも吉沢亮でヨロシク)。お約束でもあるのだが、機村先生のロボットネタが、きっちりクリティカルヒットしているのも点数が高い。
 

 
毎朝、裸で登場するし(もちろんターミネーターネタ)。
 

 
キモイと思われているし(実際、抵抗あるな)。
 



ブルートゥースで接続されるし(便利だな)。
 

 
頻繁に充電が切れる……(使えない)。

しかし、生徒想いなのだ!!



悪い奴に生徒が襲われると、全力で助けるぞ!

 

 



ロボット条項を無視しちゃうけどな!

この機村先生、生徒以上に子供っぽくて、嫉妬するわ、拗ねるわ、なにげにマウントをとってくるわ、面倒臭いキャラクターなのだ。でも生徒たちの心に入っていくことには躊躇しない。そして高らかにこう宣言しちゃうのだ!
 

 
自己肯定感を爆アゲ! この清々しいまでの言い切り、教師ドラマで言えば『3年B組金八先生』ラインじゃなく『GTO』の鬼塚英吉ライン。さらにさかのぼれば『熱中時代』の北野広大先生、『教師びんびん物語』の徳川龍之介先生でしょう!

そんな機村先生のブレない教師像の反面、ロボットとしての機能面、外観は作品の回数を重ねるごとに過剰に変化していく。「機村 省エネ ドローンモード」「機村アームド:重機タイプ」、さらには幼児化するなど、どんどん(コメディ的にいい意味で)バカバカしくなっていく。この感じでいけるところまで突っ切り、もっと変な特殊技能を持った生徒がワラワラ出てくることに期待します。

そんな方向性の『KIMURA×CLASS』を私は肯定する!

  • 電子あり
『KIMURA×CLASS(1)』書影
原作:角石 透 漫画:土井 那羽

「俺たちの担任……最強だった!」

一握りの人間だけが持つ特殊技能「IG(インネイトギフト)」。東京の超エリート校に、稀有な才能たちが集められた。担任としてやってきたのは最強のロボ・機村先生! 相馬 輪は、見たものをすべて記憶できる「IG」持ち。学校なんてしんどいだけだと思っていたが……。異能力問題児クラスのアクションコメディ開幕!!

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レビュアー

嶋津善之 イメージ
嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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