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全員片思い中。高1男女4人、片思いの行方は──。すべてが愛おしい青春群像劇!

きみの横顔を見ていた(1)
(著:いちのへ 瑠美)
2022.10.30
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全員片思い

私が想像する「私の顔」は真正面から見たそれだ。パスポート写真みたいなやつ。でも、他人の目にたくさん触れるのはたぶん横顔のほうで、あと視線が交わされることってそうそうない。それでも、そんな横顔をちゃんと見てくれている人がいるのだと想像すると、そして大切な人の横顔を思い出すと、優しい気持ちになる。

『きみの横顔を見ていた』の主人公は4人の男女。みんな高校1年生で、それぞれに好きな人がいて、全員が片思い中。交わらない視線がたくさん描かれます。チクッと胸が痛む。なのに、どうかこの4人の時間がゆっくりと流れますようにと思う。なんとも優しいマンガです。



誰もが認める美少女の“麻里”と、朗(ほが)らかでいいやつでムードメーカーな"大谷くん"と、



こういうことをチョロッと言うけれど真意が見えないイケメンの“朝霧くん”。



そしてとても平凡な女の子・“光(ひかり)”。光は誰の横顔を見ている?



ああ、もう!

主演のあの子に似合うのは誰?

光はいつも「麻里が主演だったら相手役は誰かな?」なんて想像しています。麻里は少女マンガでもドラマでも映画でも主役になれるような、アイドルみたいに可憐な女の子だから。



かわいい。そして光本人はというと、



これといって特徴のない女子高生。つるんとした一重まぶたの持ち主です。ドラッグストアで売ってる二重糊を試してみるも……、



なんかしっくりこない! このリアリティがたまらない。私も一重です。むかし美容クリニックで二重整形手術のシミュレーションを受けて「無理、これ自分じゃない。っていうか母方の叔父(二重)に激似!」と思って以来、迷うことなく一重のまま生きてます。

光が思わず言っちゃう「だれだこれ」は本作の光のパートの大切な要素です。

成績も普通で、体育はちょい苦手。学校で大きなトラブルもなし。そんなこんなで、光は脇役キャラが自分にはうってつけだと思って生きてきました。大好きな親友を主役に見立ててあれこれ想像する方が楽しい。そして光は大谷くんを見いだすのです。



表情豊かで人気者な大谷くんは光の前の席に座ってます。プリントの受け渡しなんかで交わす会話が感じよくて、彼なら大切な麻里を幸せにしそうだなと思うわけです。

でね、この大谷くんは麻里のことが好き。なんとかお近づきになりたくて、イケメンの朝霧くんと連れだって、まずは光に話しかけます。なぜなら光と麻里はいつも一緒にいるから。



「将(麻里)を射んと欲すればまず馬(光)を射よ」作戦? 光はイヤな顔ひとつせず協力します。



超人見知りな麻里が自分から誰かに話しかけるなんて絶対できない。だから光が必要。指を怪我した大谷くんに麻里から絆創膏を渡すように光がお膳立てをすると……、



大谷くんは光にもお礼を言うんです。大谷くんいいやつだ。そして大谷くんの声が光の頭の中からはなれない! ああどうしよう、三角関係になってしまうの?

どーよこの愛すべきわたし?

『きみの横顔を見ていた』の1巻では光の心の動きが丁寧に描かれます。一重で、平凡で、脇役な自分。初めての恋からは目をそむけたいし、部活だって控えめにしているのでちょうどいい。本当?



本当にそれでいいと思ってる? 光は鏡に向かって「自分は平凡」と念じてきたかもしれないけれど、はたしてそれは本当の顔なんでしょうか。そうは言っても、自分の気持ちに向き合うってかんたんじゃない。どのページからも光の葛藤がさりげなく伝わってきます。これがたまらなく面白い。



大谷くんは今日も高橋さん(麻里)への気持ちを隠さないで光に伝えるし。光のことを気遣ってくれるけどさ。ほろ苦いよー。でも自分でどうにかするしかないんですよ。この容赦のなさと、光の頑張りと、光を大切に思う人たちとのバランスがとても心地いい。



お風呂で鬱々(うつうつ)としてみたり、ペシーンと気合を入れてみたり。



そう、これが自分、これが愛すべきわたし。光のことをすごく好きになって元気が出る1巻です。そして第2の主人公“大谷くん”へとバトンは渡されます。愛されキャラの明るい大谷くんだけど……?



ああ、もう! 麻里は誰を見つめているの? こっちの片思いも気になる!

  • 電子あり
『きみの横顔を見ていた(1)』書影
著:いちのへ 瑠美

高1男女4人、全員片想い中。すべてが愛しい青春群像劇!

1人目の主人公は平凡を極めた高校1年生の光。
恋愛とは縁遠く、親友の美少女・麻里に見合う男子を探す日々。
そんなある日、麻里の相手役として妄想していたクラスのムードメーカー・大谷くんと学年一のイケメン・朝霧くんから話しかけられて――。

さらに、2人目の主人公は大谷くん。
愛されキャラの彼が想いを寄せるのは――。

4人の恋と友情がはじまる!

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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