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最強カードは結婚!? 整形してコンプレックスから抜け出した後のリアルすぎる人生

結婚したいモンスターになった私の話
(著:愛内 あいる)
2020.03.21
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私 何も持ってないぞ

「ある」よりも「ない」を証明する方が難しいけれど、自分の問題については「ない」の方が答えとして強くて、ないないモンスターはいつも私の側にいる。だから『結婚したいモンスターになった私の話』の、このページを読んで「げっ」と思った。よく知ってる景色だったからだ。



私は結婚したいと願ったことがまだない。SNSの婚活ネタを面白がれないし、「みんな結婚したいでしょ?」という前提で話す人のアタマも不気味でしょうがない。でも私は知っている。主人公が立ちすくんだドロ沼のイヤーな感触を。熱くも冷たくもない、温度のない世界を。

このエッセイ漫画は、結婚したくてたまらない女の子の話……ではあるけれど、いろんな人の心に通じる物語です。ふと襲ってくる頼りない気持ちの正体と、その頼りなさの沼から自由になるさまを描いてます。あー、他人事じゃなかった!

戦える「カード」は?

本作は、作者であり主人公でもある“愛内あいる”さんが25歳のときの話。数年前に一重から二重への美容整形手術を受けて、容姿に対する最も大きなコンプレックスから解放され、百貨店で派遣社員として働いています。



自分で選んだ顔で、自分で選んだ仕事をして、毎日が居心地が良くて、楽しい!

……と思っていたけれど! 職場での何気ない会話で気づいちゃうんです。同僚たちが口々に語る「仕事の契約が終わったらどうするか」といった目標が愛内さんにはないこと、そして自分が「結婚していない」ことを。




容姿で悩んできた人にとって、美しい人は強者に見えます。そんな強者から自分がちょっと気にしていることを言われたら、たとえそこに悪意なんてなくたってグサリと刺さるもの。そして愛内さんは我が身を振り返ります。彼女にとって人生のハイライトは「整形」でした。



自分の容姿を変えるってそう簡単なことじゃないです。ほんと頑張ったんですよ。



が、周りは将来に向かってガンガン走り出している……一体どこに向かって走れば? 「何か」を手に入れたと思っていたのに、みんなが持っているような「手持ちのカード」はある? 私の将来はどこ? よみがえるコンプレックス。

そこで登場するのが、愛内さんの彼氏“秋ちゃん”です。愛内さんには、秋ちゃんが「唯一の手持ちのカード」に見えてしまったんです。

「想い」が「重い」になっちゃった

秋ちゃんとは付き合って2年。大好きで大好き大好きで「彼氏がいるから私は幸せ!」な愛内さん。いつも秋ちゃんに救われてきました。お守りのような存在です。

愛内さんは、自分の人生へのコンプレックスを前にして、「秋ちゃんと結婚したい」と考え始めます。



いろんな感情に集合をかけて脳内会議。この段階で本作の「答え」はかなり出揃っているのですが、人生のピンチを前に「結婚したい! 30歳までには結婚したい! 秋ちゃんがいないと困る! とにかく結婚!」と心が暴走してしまうんです。

では、秋ちゃんは?



い、言った~~~~~!

ところが「よし、結婚しよう!」となりません。愛内さんの心はますます冷静さを失います。



外堀埋め作戦。(友達の戸惑い気味な応答が全てを物語ってる!)



いたたまれないエピソードの数々。重い~~~~!

この段階で「愛内さんかわいそう、秋ちゃん、結婚しないんなら別れるべきでしょ!」と怒る人も大勢いるでしょう。でも、結婚に関心がなきゃ誰かと一緒にいちゃいけないとは思えないですし、結婚したいのは愛内さんの都合なわけです。

……と、偉そうに言いつつ、愛内さんを襲った「この感じ」に私はうなだれます。覚えがありすぎる。



相手を操作するために自分を変容させ、相手を自分の陣地に取り込もうと必死にもがく感じ。そしてそれは大抵失敗します。相手への超重量級の圧迫感もさることながら、自分で作り出したモンスターは、自分の身も心も食ってしまうからです。

やがて愛内さんと秋ちゃんの関係は厳しいものに変わります。そのとき愛内さんは?



“自分”がないことの頼りなさと、でも、“今”を選んだのは自分という事実。すごくしんどい事実ですが、大切な事実です。そして愛内さんは自分のなかの“結婚したいモンスター”と対峙します。

心に何かしらのモンスターを飼ったことのある人は「わかる」とうなずいて、彼女がたくさん悩んで泣いてがんばって出した結論と未来に心が明るくなるはずです。

  • 電子あり
『結婚したいモンスターになった私の話』書影
著:愛内 あいる

あの頃の私には「結婚」しかなかった──。 整形をしてコンプレックスから抜け出した新しい人生に待っていたのは、「結婚」という新たな壁! 彼への“想い”が“重い”に変わったとき、私は、一線を超えてしまったのかもしれない……。「幸せ」って?「自分の価値」って? 『自分の顔が嫌すぎて、整形に行った話』の著者がその後のリアルすぎる人生を描く実録エッセイコミック!!

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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