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「話が下手すぎる」自覚はありますか? 口ベタのための「話す・聞く」指南
(著:佐野 剛平)
自分が口ベタだという自覚はあっても、「どうしたらうまく喋れるようになるのか」を見つけ出せる人は決して多くはないのではないでしょうか。
この本の著者は元NHKアナウンサー。そして、現在はカルチャーセンターなどで話し方の講師をされている方です。
アナウンサーといえば、美しい発音で澱(よど)みなく話すので普段の会話もきっと上手に違いない。「言葉の魔術師」そんなイメージがあるかもしれませんね。しかし、筆者は自らを「話しベタで苦労した人」と表しています。
プロをめざす方のための本ではありません。話すことに劣等感をもち、自分の話し方をなんとかしたいと思っている方々に読んでいただく本です
本書では「慣れが大事」「意識を変えれば緊張しなくなる」という漠然としたアドバイスではなく、具体的でイメージの湧(わ)きやすい改善方法が、優しい語り口で沢山載っているので、自分が実践しやすい方法から気軽に取り組むことができます。
例えば、声の出し方。筆者は、文中で「情報を伝える声の質」の重要性を説きます。他人の話を聞いているとき「声がボソボソ小さくて何を言っているかよく聞こえないな……」と感じたことはありませんか?
せっかくの面白い話題があっても、「よく聞こえないから聞きたくないや」と思われてしまってはもったいないですよね。
そして自分の声の癖は毎日聞いているから分からないのが怖いところ。誰かとの会話中に「え?」と何度も聞き返されたことがある方は要注意! 自分もボソボソ喋りになっているかもしれませんよ。
この場合の改善策は、「犬の吠え声」をイメージして練習すること。「ワンワン!」という鳴き声や威嚇の「ウー」という声を出してみる。そして、それを目の前の人に届けるのではなく、2~3メートル先にいる人に聞こえるようにお腹から目一杯出すように吠えてみる。
実際にやってみると、かなり腹筋を使わないと声が遠くに届かないことに気づきました。そして、「ただ喉から声を出すだけ」では何が言いたいか全く伝わらないのです。
犬は言葉を使えないからこそ、「威嚇」や「注意喚起」など何か伝えたい感情によって、その大きさや高さで使い分けているのだなという発見がありました。
人間も同じですよね。話が面白い人というのは声に感情をしっかり乗せているから、相手の心をつかむことができるのだと思います。
「話にオチがない」人の話が面白くないというのはよく言われることですが、本書を読むと、会話の順番の組み立てが面白いか面白くないかの大きな分かれ目につながることに気づきます。
とにもかくにも結論を最初に言ってしまう。そうすると、なぜそうなのかを説明しなくてはいけませんから、せっせと順序立てて話すことになります。これだと聞く側も、もう結論がわかっていますから、安心して聞くことができます。これは聞き手に親切であると同時に、話し手にとっても安心です。聞き手がこの話はいったいどこに着地するのだろうという不安を感じると、気まずいような嫌な雰囲気が広がりますが、そうなる心配がないからです
これは、スピーチや人前で話すときに限らず、全ての会話において通用する概念だそうです。例えば「仕事で疲れて帰ってきた夫が全然話を聞いてくれない」という妻の愚痴ってそこら中にあふれていますよね。
それはもちろん夫の対応力の低さもあるのでしょうが、「妻の話がどこに着地点があるかわからないし、聞いていて疲れる」というのも大きいのではないかなと思いました。私も含めとくに女性に多いと思うのですが、普段の何気ない会話で「今日あったこと」など頭に思い浮かんだことをそのまま口から出してしまう人が多いと思うのです。
「夫が話を聞いてくれない!」「私の話を誰も聞いてくれない!」と嘆くのではなく、会話の最初に何の話題を持ってくるか、起承転結をどう順序立てればわかりやすくなるかを考えて話せるようになれば、身近な人間関係がよくなるだけではなく、人生がとてもスムーズに回るかもしれません。
毎日何気なくしている行為だからあまり意識しませんが、「会話」という私たちの人生において不可欠なコミュニケーションツールを使いこなせれば人生はもっともっと楽しいものになるでしょう。
本書では、「突然会議中に指名されて意見を求められたとき」「結婚式など人前でスピーチをしなければいけなくなったとき」「会社の飲み会で話を合わせ、嫌われずにうまく立ち回る方法」など社会人として生きていく中で多かれ少なかれ求められるスキルを具体的にどう身につけていけば良いかが豊富な例とともに示されています。
とくに、会話中に沈黙が続くと不安になって、ついどうでもいいことをペラペラしゃべってしまう癖のある私は、「相手が思わず話したくなる会話のツボを探り当てる」という方法をすぐに試したくなりました。気になった方はぜひ本書を手にとってみてください。
- 電子あり
200万人の聴取者を癒やしてきた『ラジオ深夜便』の名インタビュアーが教える、 自分も相手も「心地よい」トークのシンプルなテクニック。
眠れない夜に、早朝の仕事の前に、200万人の聴取者が耳を傾ける『ラジオ深夜便』。
落ち着いた語り口の名インタビュアー、佐野剛平さんは「話しベタで苦労したアナウンサー」でした。
学校の授業では教えてくれない、社会に出ると誰もが苦労する「話すこと」「聞くこと」。
人前であがってしまう佐野さんだったからこそ、お伝えできることがあります。
小難しい表現方法や正しい言葉づかいの決まりごとよりも大事なのは、取引先で、プレゼンで、趣味の集まりで、相手も自分もちょっとだけ気分がよくなること。
「すぐに少しでも役立つ話し方と聞き方」がわかります。
レビュアー
![上岡史奈 イメージ](content/images/writer profile/kamioka.jpg)
20代のころは探偵業と飲食業に従事し、男女問題を見続けてきました。現在は女性向け媒体を中心に恋愛コラム、男性向け媒体では車のコラム、ワインの話などを書いています。ソムリエ資格持ちでお酒全般大好きなのですが、花粉症に備えて減酒&白砂糖抜き生活実践中。
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