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11月に発売された「都会のトム&ソーヤ」14作目『夢幻 上巻』とコミカライズ第2巻を記念して、表紙と挿絵を担当するにしけいこさんと、コミカライズを担当しているフクシマハルカさんの対談がコミックナタリー上で行われました。対談後、両先生にサイン色紙を描いていただきながら、BOOK倶楽部読者のために対談の延長戦が実現! その様子をお届けします。
新刊発売記念! にしけいこさん、フクシマハルカさん特別対談 延長戦!!
「都会のトム&ソーヤ」と「ひょっこりひょうたん島」に見えるもの
── コミックナタリーでの対談の中で男性キャラクターの距離感という話がありましたが、女性キャラクターについてどう思いますか?
にし:理想を分散させていますよね。男の子が良いと思う女の子の要素を色んな人物に割り振っていると思います。神秘的であったり、可愛かったりっていう。色んな人(キャラクター)が分担していると思う。
フクシマ:麗亜さんとか意外と面倒見がよさそう。
にし:栗井栄太の面々はみんな孤独ですよね。プロフィールが暗いですよね。
── 柳川とか凄いバックグラウンドを持っていますよね。
にし:何であんなことになっちゃったんだろうって(笑)。
── 14巻ではやみね先生のツボだったのが神宮寺の……
フクシマ:あれでしょ! 酒びたりになった神宮寺!
── あれがお気に入りでしたね。仕事を失ってボロ雑巾のようになっている神宮寺(笑)
フクシマ:(挿絵の原画を見て)みんなすごいことになってる(笑)。読むのが楽しみ。
にしさんの描くマチトム登場人物たち。14作目では、シリーズの人気キャラクターが総出演!
—— ジュリアスはクラスの女子とカラオケに行ったりしています。
にし:普通にリア充生活ですね。
── 14巻の中で挿絵を描いていて印象に残っているシーンはどこですか?
にし:2人が創也の祖母宅に行くのですが、祖母宅にシビレましたね。普通の家に住んでるんですけど、それが都心のど真ん中に建っているところ。本来ならビルが建っていなければならない場所に、一軒家が建っているっていう設定にシビレました。不動産大好きなんですよ。
(一同笑)
── 豪邸とかではなく普通の家なんですよね。それが竜王グループの贅沢というか。
フクシマ:いいですね。
にし:こんな地価幾らするかわからないような所の一戸建てにおばあさんが住んでいるっていう設定なんですけど、本当のお金持ちってそういうことなんだと思いましたね。持っていることもひけらかさないし。
── 内人と創也、同級生に2人いたらどっちを好きになりますか?
フクシマ:創也です。創也みたいな人間は普通のクラスにはいないんで。内人はいそう(笑)。
にし:私は創也とは同質のものを感じるので、うまくはいかないでしょう。
(一同笑)
── 創也と内人が上手くいっているのも、お互いに無いものを補っているからかもしれませんね。
にし:さりげなく挟まれる内人の家庭の様子とか好きなんですよね。「冷蔵庫を開けっ放しだとお母さんが怒るから」みたいな描写とか、お母さん自体は決して出ては来ないけど、細かいお母さんの気配みたいなものが好きですね。
── 創也と内人を通じて見えてくる人物像ってありますよね。
にし:「ひょっこりひょうたん島」がそういう話だったと思うんですよ。子供が出てくる話だからと言って、親が出てきてどうこうしろっていう話ではない。基本的にあそこに出てくる子供達の親って描かれないんです。子供達だけで島に乗って漂流していて、子供達だけで問題を解決する。子供として大人と渡り合っていくという世界だと思うんです。「都会のトム&ソーヤ」の世界も親がどうこうしろっていうのはないですよね。親の影響を色濃く受けていないというのが良いなと思います。
── 作品の本質的な話かもしれませんね。
にし:子供はどこかで親を頼りにしなければならない反面、疎ましいですから。どうしても、何かをしようとすると親が「危ないでしょ!」とか「他の人はそんなことしてないでしょ!」とか言って止めちゃうんだけど、この二人は自分だけの判断で安全かそうでないかを考えるじゃないですか。そういう所が普通の子供じゃないし、気持ちがいいんじゃないですかね。
にしさんの生原稿。原稿用紙からはみ出さんばかりにキャラクターたちが大活躍。
主人公たちの背景に感じる大人たちの視線
── コミックス最新刊(2巻)の収録分でいうと、創也と内人が喧嘩をして、内人が夜にヤケ食いをしていると父親が声をかけるシーンがあります。そこでも父親は深く理由を聞かないけど心地よい距離感で接していますよね。
にし:男性ならではの目線ですよね。創也と内人を見つめる父親の目線はありますね。それは、はやみねさん自身がこの2人をお父さんとして見ている目線のような気がします。
フクシマ:はやみね先生の御宅がサバイバル教えながらも学校の勉強はちゃんとやらせているから、はやみね先生と息子さんみたいだなと思って描いていました。
にし:お子さんのことを信頼されているんでしょうね。そこが作品の親像にも反映されている気がします。子供って信頼されると責任を持つようになりますから。子供が責任を感じたいと思って頑張っているところに「やめておきなさいよ」とか言っちゃうと、すねるんですよね。手の離し方が難しい。
夢のコラボレーション色紙が完成!
── では、最後に原作の最新14巻の見所や期待するところなどいただけますでしょうか。
にし:なんと言っても創也のお祖母さんの登場ですよ。あの創也が緊張しているという、大変なおばあさんが出てきますから、最初の見所はまずそこではないかと。そこからグイグイとてつもないことが起こっていきます。今回はキャラクターが総出演という感じで、いっぱい出てきますし尺も長いので、お気に入りのキャラクターがどんどん動く様子を十分に楽しんでもらいたいです。
フクシマ:やっぱり酒びたりの神宮寺さんですね。ボロ雑巾っぷりが気になっていたので、どんな感じになっているんだろうと期待しています。
にしさんの膝の上でくつろぐ飼い猫「のんちゃん」。とても静かで人懐っこく、カメラを向けるとしっかりポーズを作ってくれた。取材時、もう1匹仔猫がいたが、恥ずかしがり屋なのか終始ソファーの下に隠れていた。
著者紹介
にしけいこ
鹿児島県出身。高校在学中、JUNE(サン出版・当時)でデビュー。月刊flowers(小学館)にて発表された「娚(おとこ)の一生」が「このマンガがすごい!2010」(宝島社)オンナ編で第5位を獲得したほか、「THE BEST MANGA 2010 このマンガを読め!」(フリースタイル)で第6位を受賞。同作は2015年に映画化も果たした。そのほかの代表作に「三番町萩原屋の美人」、「STAY」シリーズ、「姉の結婚」、「恋と軍艦」などがある。2003年より、はやみねかおるのヤングアダルトノベル「都会のトム&ソーヤ」シリーズの表紙と挿絵を手がけている。2016年11月現在、「初恋の世界」「たーたん」などを連載中。
フクシマハルカ
岡山県出身。大学卒業後、1999年に「さくらんぼ☆キッス」(なかよし増刊なつやすみランド)でデビューし、「おとなにナッツ」「チェリージュース」などなかよしで作品を発表。その後デザート(講談社)やベツコミ(小学館)にも活躍の場を広げ、マンガ版「都会のトム&ソーヤ」で少年誌にも初登場を果たす。
にしけいこさん、フクシマハルカさんの特別対談を記念した夢のコラボレーション色紙は、にしさんフクシマさんお2人から一枚ははやみね先生に、そして1枚は読者の方へ抽選で1名様にプレゼント!
応募は12月4日まで。下のバナーから応募専用フォームへ。たくさんの応募お待ちしております!
内人と創也はついに究極のゲームを完成させた! 基本コンセプトは「悪夢からの脱出」。竜王学園中等部に集まった参加者は、内人のほか、栗井栄太ご一行、真田志穂、健一、堀越ディレクター、浦沢ユラなど。専用のメガネとベルトを着けた参加者たちは、自分の意識が作りだしたアバターたちに惑わされることなく、現実世界に戻ることができるか? 人気キャラクターたちが一同に会し、シリーズのクライマックスがいよいよ始まる!
ごく普通の中学生の内藤内人と、竜王グループ御曹司で天才の竜王創也。凸凹中学生コンビの2人は、「砦」で究極のゲームを創るため、様々な冒険を経験する。伝説のゲームクリエイター・栗井栄太の手がかりを探すうちに、とある人気クイズ王のカンニング疑惑騒動に巻き込まれた2人は、生放送でクイズ王と直接対決することに……! そして、いよいよ栗井栄太の尻尾を掴む……!? 累計150万部突破の大人気小説コミカライズ、第2巻!
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