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【超訳・西遊記】原典を拡大解釈したら、最強に変態なチームができた。

Webコミック「モアイ」で好評連載中の『西遊筋』。コミックス2巻発売を記念して、OTOSAMA先生にインタビュー! まったく守る必要がなさそうな最強坊主・三蔵法師やドS女子の孫悟空はどのようにして生まれたのか? ハイテンション新感覚西遊記ギャグコミック『西遊筋』制作の舞台裏を聞きました。

2016.07.22
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OTOSAMA(おとうさま)

1989年マレーシア生まれ。日本のマンガやアニメをこよなく愛し、2009年より創作活動を開始。2014年、自身のブログと中国語版Facebookで掲載したのが本作となる。好きな日本食はうな丼。推しキャラは白竜。

史上最強で変態な三蔵一行が生まれたワケ

西遊筋

物理的にデカいOTOSAMA版・玄奘三蔵。守る必要なくない……?

──マッチョな三蔵法師はものすごいインパクトでした。このキャラはどうやって生まれたのでしょうか?

OTOSAMA先生(以下敬称略):3、4年前に偶然ネットでマッチョな男性の体に三蔵の頭を貼りつけたコラージュ写真を見かけたのがきっかけです。見た瞬間に閃いて、あっという間に三蔵のキャラが出来上がりました。そこから『西遊筋』のもとになる話を少しずつ作り上げていきましたが、すぐに描こうとは思いませんでした。2014年になって仕事が行き詰まったので気分転換のために描き始めたのが、この『西遊筋』です。

西遊筋

TSUYOI…

──三蔵法師以外のキャラクターも個性的ですごく新しいですよね。

OTOSAMA:実は白竜以外の3人は全て原典からインスピレーションを受けて設定しているんですよ。例えば悟空の「悪戯好きで剛勇」という設定は原典のままです。ドSな性癖は原典の悟空が悪さばかりするトラブルメーカーというところからアイデアをもらい、第2話でバイブ化した如意棒で白竜をイジっていたのが楽しかったので、他の弟子たちと一緒に下ネタをまじえながら敵をいたぶるのが好きなキャラになりました。八戒は悟空のドSな行動に激しく喜びを覚えるドMにしたら思いのほかうまくハマって(笑)。ちなみに正確に言うと、八戒はただのドMではなくて、全てのプレイを受けいれるタイプ。これも原典中の「大食いで好色で自分の欲望に忠実」という特徴からもらったアイデアです。

西遊筋

メイドコスでドMで好色という特盛キャラ・八戒

難しかったのは悟浄ですね。原典の悟浄は存在感がすごく薄いので個性豊かな「西遊筋」のキャラクター中では埋もれてしまって。他のキャラと同じくらいアクを強くしなきゃと思ったのですが中々……。そこで思いきって電波系にしよう!と。それもただの電波系ではなく「変な世界の中でひとりだけ正常な人は、そこでは変な人と思われる」という、逆説的なキャラにしました。ちょうどツッコミのキャラがいなかったので、彼女にその役回りもお願いしました。白竜はほぼオリジナルです。リアクション芸というか、もてあそばられて魅力が引き出されるキャラ。強気で真面目で責任感強く、単純に師匠を尊敬し強さに憧れるというところも、自然と出来上がりました。ちなみに一番好きなキャラは白龍です。

西遊筋

そんな棒でつついちゃらめぇ……!

──かなり原典を読み込んでらっしゃるんですね。OTOSAMA先生のお気に入りのエピソードはありますか?

OTOSAMA:アイデアが湧くように出てきた最初の3話は印象に残っています。あと、悟浄が登場した第6話、悟空が破門された白骨夫人篇、奎木狼(けいもくろう)と百花羞(ひゃっかしゅう)のラブラブ話を描いた黄袍怪(こうほうかい)篇、師匠が酔った金角銀角篇もお気に入りです。あ、踊り子になった白竜のシーンはやっぱり好きですね! 原典では大して見せ場がないので活躍すると嬉しくって。紅孩児(こうがいじ)が三蔵にお尻ぺんぺんされたシーンは原典にはないシーンなのですが、絵で笑わせるシーンなので頑張りました!

──アイデアが湧くように出てくるなんてすごいですね。

OTOSAMA:第1話などは、ほぼ考えずにネームもすっ飛ばして描きました。第2話も最後まで決めないような状態で、描きながら内容がどんどん決まっていったのを覚えています。観音さまが英語を混じえて話すことや白竜の強気な性格もここで決まったんですよ。今はオチを考えるのに毎回四苦八苦していますが……(笑)

ペンネームの意外な元ネタとは!?

──OTOSAMA先生はマレーシアのご出身だそうですが、ペンネームはマレーシアの言葉なのですか?

OTOSAMA:いえ、実はこれ、『あずまんが大王』に出てくる「ちよ父」がもとなんです。アニメで声をあてていらっしゃった若本規夫さんの声も含め、このキャラがすごく好きで。「お父さん」と呼ばれていたので丁寧に呼びたくて「お父様」と言っていたのですが、好きすぎてついにはペンネームを「OTOSAMA」にしてしまいました。

──まさかの日本語というのは驚きました(笑)。日本の文化には以前から親しまれていたのですか?

OTOSAMA:そうですね。初めて出会った漫画は『ドラえもん』かな? 従兄弟の影響で他の漫画も読み始め、『クレヨンしんちゃん』に出会いました。子供の頃大好きだったので結果的に一番影響されたのもこの作品です。特に日本のオタクカルチャーばかりを意識していたわけではないのですが、好きで積極的に触れていたのがたまたま日本のものが多かった。漫画やアニメやゲームどのジャンルでも、笑いと感動を呼ぶ熱い作品が大好きです。

──1巻の巻末漫画では2巻が出ないかもしれないと心配されていましたが、無事に発売されることになりましたね。

OTOSAMA:どうにか生き残っています(笑)。連載したばかりの頃はあまり実感がなくって、単行本が出版されて実際に手にした時、すごく感動したんです。でも同時に売れ行きが心配になってしまって発売日は裁判を受けるような気持ちでした。売れ行きを心配した友人たちが「応援のために単行本を買おう!」と言ってくれたのですが、近所の本屋さんで一冊も見つからなかったそうです(笑)。でも先日、重版がかかったので、少しは見つかりやすくなったのではないかと思います。

──めでたく2巻発売ということで、読者の方へメッセージをお願いします。

OTOSAMA:『西遊筋』は油断すると終わってしまうような漫画です。1巻を買ってくださった方、本当に応援してくれてありがとうございます。これからどうなっていくのかは分からないけれど、この作品の連載が終わってしまったら、漫画家のキャリアも終わってしまうのかもしれません。ほんの少しの応援でも、わたしにとって大きな励みです。第2巻は第1巻より内容が揃っていて更に面白いです。とても自信があるエピソードが収録されており、第1巻と合わせて読んだら、非常に満足できることと思いますのでどうぞよろしくお願いします!!

『西遊筋』はWebコミック「モアイ」にて連載中! 更新は毎週月曜21時、ゲツクは『西遊筋』!

『西遊筋(2)』書影
著:OTOSAMA

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