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あの女よりは上、あの女よりは下……。水面下で繰り広げられる女子高生たちのマウンティングを描いた青春群像劇『17歳の塔』。「ハツキス」で連載開始とともに、新人離れした巧みな心理描写が話題に。1巻発売時に送られた高橋留美子先生絶賛コメントとともに、本作の見所、著者・藤沢もやしさんと女子校出身の担当編集の”女子校あるある”を掲載します。
2015年、「ハツキス新人マンガ賞」大賞を受賞した『ファムファタルと昼食を』でデビュー。Twitterでも大きな評判に。高橋留美子先生のアシスタント経験あり。
誰もがみんな、こんな感情に出会った事があるはず。
作り笑顔も虚勢も嫉妬も、彼女たちの気持ちが切なく、そしてリアルに迫ってくる。
「今はキツくても、しのぎ切れ」とエールを送りたい。
藤沢さんの、荒々しくも豊かな表現力に感嘆する。
高橋留美子
そもそも、『17歳の塔』とは……
舞台は中高一貫の女子高・2年3組。主人公の高瀬理亜は、美人で学校内でひときわ目立つ存在であり、クラスの頂点に君臨している。
そんな時、クラスの冴えない少女・小田嶋美優が理亜のグループにやってくる。自分に心酔して何でも言うことを聞く小田嶋を理亜は心地良く感じ、側に置こうとする。
ところが、徐々に生徒会などの活動に力を入れ、理亜の誘いを断るようになってくる小田嶋。
怒りを感じた理亜は、小田嶋を仲間外れにしようと画策する。
そんな時、小田嶋が彼氏と思わしき人物と一緒に登校してきて……!?
火花散る2人の関係、事件により変わっていくクラス内のパワーバランス、そして息をのむ展開に目が離せない!! ひとつの教室をそそり立つ「塔」と見立て、それぞれの視点から鮮やかに描きだす、衝撃の青春群像劇!
藤沢もやしさん×担当編集ツチ対談「あなたの知らない女子校あるある」
女子校、それは入学したことのない者にとっては未知の世界……。中高共学でのんびり過ごしたという藤沢さんと、中高6年間女子校という生粋の女子校育ちの担当編集・ツチが「女子校」、そして『17歳の塔』について熱く語る!
──女子校あるある① 責任感が強い?
藤沢: 友達の女子校育ちの子は、やっぱり責任感が強いイメージでしたね。 自分のやる範囲のことはちゃんと自分でやる、みたいな。
ツチ: それは女子校育ちの特徴だと思います。やっぱり男子がいない分、全て女子がやる世界なんですよね。クラスや学校のリーダー、重いものを運ぶ、身体をはって笑いを取る、全部女子の役割です。全部自分でやらなきゃ!という自主独立感が強くなると思います。自分のことは自分で、という。
──女子校あるある② 共学出身の女子にビビる
藤沢: 共学出身の女子と触れ合う機会はありましたか?
ツチ: 大学に入ってからですね〜。
藤沢: 違いは感じるものなんですか?
ツチ: 男女グループでいる時の振る舞いは、やはり、全然違いますよね。 共学出身の女子は、「正しい振る舞いが分かってる」という感じです。
藤沢: サラダ取るとか?
ツチ: そういうステレオタイプ的なものにまとめちゃうと誤解を生むんですけど……。でも、サラダを取ってくれるとかって気遣いなわけじゃないですか。男性といるときの女性である、という意識の強さを感じました。それが正しいことかは分からないですが、女性であることを自然と引き受ける、 みたいな……。
──女子校あるある③ 男子に「ありがとう」って言えるかどうか
藤沢: 私は、ずっと共学でしたけど、女子っぽいことはできなかったんです。例えば、荷物を「持って〜」とか、そういう子を見て「すごいな〜」と思うほうでした。
ツチ: じゃあ、藤沢さんは自分が重い荷物を持っていて、男子が「重いじゃん、持つよ〜」とか言ってくれたら、どうするんですか?
藤沢: それは「ありがとう〜」って言いますけど、でも「持って〜」はないですね。そこはちょっと違うじゃないですか。
ツチ: 女子校での線引きは、そこで自然に「ありがとう」と言えるかどうかにかかっている気がします。
藤沢: えっ!?
ツチ: 女子校出身者は、「えっ、いやいや、自分で持ちます」ってなるんですよね。
藤沢: それは、なんでですか?
ツチ: 優しくされることに慣れていないので申し訳なさと、あと女子だからってナメないでくださいというのが半々という感じでしょうか。
藤沢: つまり、「持って〜」と言うかどうかではなく、自然と「ありがとう」と言えるかどうかが分かれ目になってくるわけですね。
──『17歳の塔』着想のキッカケとは?
藤沢: 高校の頃、あまりに女子の友達関係が辛くて。でも、いじめがあったわけではないんです。みんないい子で、ちゃんとした子ばっかりだったんですけど、そうはいってもグループはあるんですよ。そして仲の良い・仲の良くないは水面下でちょっとあるわけです。それを考えると、誰に何を思われてるか想像するのが凄く怖かったんです。高校では楽しいこともたくさんありましたけど、未だに思い出すのは辛かった時のことばっかりなんですよね。
ツチ: それって、わかりやすいことではないんですよね? つまり、誰かに無視されたとか……?
藤沢: もちろん、そんなにわかりやすいことはありません。でも、この子ちょっとやだなってピリッと思うことってあるじゃないですか。そういうのを、「あっ、私もこの子に思われているんだろうな」とか「あっ、この子、気が合わないな」とか、そういうことを気に病むのが本当に嫌だったんです。みんなこういう気持ちはどうしているんだろうって、絶えず疑問に思っていました。
ツチ: その思いが、作品を作るきっかけになったんですね。
藤沢: 私自身は、高校生の時が一番がんばってたと思うんです。いじめとか大げさなことと戦っているわけじゃなくても、がんばってる子ばっかりだと思うんです。でも、その他愛のない日常の人間関係にどれだけ神経をすり減らし、がんばってるかということを、あまり「私、がんばってる」って言わないなって思ったんですよね。それが最初です。
ツチ: その人間関係のがんばり、名前がつけられなくないですか? 表現する言葉がない気がします。
藤沢: みんなそれについて語ろうとしない。そういうことあったよね〜ってあまり言わない。 でも私は、それで一日嫌な思いをしたりした記憶が確かにあるんです。そういう 形容し難いなにかを描いてみたかったのかもしれません。
ツチ: あまり友達とも話す機会がないようなことなので、物語にするのは難しくないですか?
藤沢: 基本的には、こんなことあったな〜ということを描いているつもりです。漫画ですから、絵的に分かりやすくなるようにということで塔をモチーフに描きましたけど、普段あるようなことをベースに描くことを心がけています。
ツチ: 名前はつけられないけれど、みんながなんとなく感じていること、でも深く語ったことがない部分を漫画で表現しようとしているんですね。
藤沢: 漫画なので、引きの強い絵にするため、あえてショッキングに描いちゃうこともあるんですけれど、実際にあるある、ということを描いていけたらなと思ってますので、これからもよろしくお願いします!
ツチ: よろしくお願いします!
第1回「ハツキス新人賞」大賞を受賞し、Twitter上で大きな話題となった伝説の読み切り作品『ファムファタルと昼食を』お試し読み公開中!
「私はこの女よりは上 でもこの女よりは下」 閉塞感に満ちた中高一貫の女子校のなかでは、自分の地位を確認しようと、今日も水面下での争いが繰り広げられる。ひとつの教室を舞台に、思春期の自己愛と心の闇を炙りだす新たな青春群像劇、開幕──!!
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