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2008年『冷たい校舎の時は止まる』(原作/辻村深月 全4巻)でデビュー。
著作に『さよならフットボール』全2巻、『四月は君の嘘』1巻〜11巻(完結)。2013年、本作で講談社漫画賞少年部門受賞。
──まず、新川先生と『四月は君の嘘』を描こうと決めたのは、どういう理由からでしょうか?
担当: もともと青春マンガをやろうというのは決まっていました。連載に向けいろいろ話し合っているうちに、先生から「ヴァイオリンを弾く少女」の案が出てきたんです。音楽は先生が新人のころから温めていた題材でしたが、実は、絵が大変そうという理由からアイディア段階で私がボツにしてました(笑)。それが先生の希望で復活したんです。
クラシック音楽、特にヴァイオリンとピアノは3歳ころから始めないとプロにはなれないと言われていて、中学くらいで将来が決まってしまう大変な世界らしいんです。コンクールにも年齢制限があって、勝ち残る人はごくわずか……。そんな美しくも残酷な世界を描いてみたいと始めた連載でしたが、思った以上に「やりがい」のある題材でした。
──音楽をテーマにした漫画は音が表現できないので難しいと思います。あえて挑戦したのは、なぜでしょうか?
担当: 楽器に限らずスポーツでも、人が何かに打ちこんでいる姿は美しいと先生はいつもおっしゃっています。その人の一番美しい瞬間を描きたいんだと。作品の演奏シーンを見ていただければ、先生のこだわった美しさをご理解いただけると思います。
語弊がある言い方なのですが、この作品はただの音楽漫画ではないと思っています。中学3年って、進学や友人関係で悩んだり恋に破れたり、少しの事で自信を失ったりといろいろ不安定な時期ですよね。反抗期で親とは口もきかないとか(笑)。でも同年代の若き音楽家たちは、悩みながらも人生を懸けて戦っている。その姿に何かを感じてもらえれば、という気持ちで始めた作品です。キャッチフレーズも「青春×音楽×ラブストーリー」なので、音楽シーン以外の日常ドラマにも楽しんでいただける要素がたくさん詰まっています。
──担当編集者がおすすめするシーンはどこですか?
担当: 連載開始前に、ホールを借りきってプロのヴァイオリニストとピアニストに曲を弾いていただき資料映像をたくさん撮りましたが、最も美しい一瞬を切り取った先生の眼力に衝撃を受けた1コマです。まさに「時よ止まれ! 君は美しい」(ゲーテ作・ファウスト)ですね(笑)。
──新川先生が音楽シーンを描かれたとき、工夫した点はどこだとおっしゃっていましたか? また、編集者として苦労したところはどこでしょうか?
担当: 演奏シーンは実はバリエーションが少なくて、描くのが大変といつもおっしゃっていました。でも出来上がった演奏の絵は、指の位置も含め完璧です。ヴァイオリン体験がある方なら、「ああ、あそこのフレーズ」とニヤリとされると思います。
連載前に先生とは、音楽に関しては嘘を描かないようにしようとお話ししていたんです。そのためにプロの音楽家にいろいろお話を伺ったり、演奏会に行ったり、楽譜を集めたりと準備はきっちりしたつもりです。
ですが嘘を描かないというのは、制約も多いのです。ピアノは座ったきりだし(笑)。その中でいかに演奏者の不安とか高揚を描けるか、先生はいろいろチャレンジされています。楽譜の音符がはがれて消えたり、水の中で弾いているような心象風景がでてきたり。照明の輝きひとつにもいろいろバリエーションがあります。
漫画を読んでいただくとわかりますが、実は楽器自体の擬音はいっさい描いてないんです。音楽マンガとしては勇気のいるチャレンジだと思いますが、読んでくださる方が絵を通して音を感じてくだされば嬉しいです。そのかわり、YouTubeに作品内で使われている音楽をアップしています。「四月は君の嘘」と入れると出てきますのでぜひ聴いてみてください。
──新川先生が、ここは特に集中して描かれたシーンはどこでしょうか?
担当: 演奏シーンもそうですが、実は一番力を入れているのがコマ割りなんです。読者の方から「一気に読める」と嬉しい感想をいただいていますが、読みやすく、かつ印象的に伝えるためにセリフも含めた構成を、先生は考え抜いて作られています。
──第2巻の帯では、『はじめの一歩』の森川ジョージ先生が「漫画の最大の弱点のひとつを完全に克服している。音が視える」とコメントを寄せていますが、これは編集部から依頼されたのでしょうか? 帯にコメントが載るまでの経緯を教えてください。
担当: 人づてに森川先生が『四月は君の嘘』をほめていらっしゃったとお聞きして、コメントをいただけないかとお願いしました。快く応じていただいて感謝の気持ちでいっぱいです。
──9月には実写映画化されます。映画のどんなところに注目していますか?
担当: 何回泣けるか、です!(笑)。先に映像を見たのですが、身びいきではなく3回泣きました。演奏シーンもいいですよ。主演のお二人が楽器を猛特訓されたとお聞きしましたが、見事です。漫画の取材でプロの演奏を見ている私が言うんだから信用してください。
──今度始まる新連載はどのようなものでしょうか?
担当: 先生が大好きな題材です! 座っている姿ばかり描いてきたから、こんどは立っている姿だと(笑)。さまざまな青春を魅力的に描く新川節は健在なので、期待してお待ちください。
──最後に、ここは読者の方々に読んでもらいたい点をお教えください。
担当: 何回読んでも新しい発見がある作品です。表情に隠された本音、意味深なセリフ。音楽コンクールのひりつくような緊張感も見どころです。ホント私もこんな青春をおくりたかった!(笑)。 ピアノやりたかった!! ネタバラシはできませんが、最後まで読んだら必ず最初から読み返したくなります。
電子書籍でも読めます!
母の死をきっかけにピアノを弾かなくなった、元・天才少年ピアニスト・有馬公生。目標もなく過ごす彼の日常は、モノトーンのように色が無い……。だが友人の付き添いで行ったデートが、少年の暗い運命を変える。性格最低、暴力上等、そして才能豊かな少女ヴァイオリニスト・宮園かをりと出逢った日から、有馬公生の日常は色付き始める!! 青春を切り取る注目の作家・新川直司がおくる、切ない青春ラブストーリー。
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