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講談社社員 人生の1冊【26】『霧のむこうのふしぎな町』長く素敵な旅から帰ってきたような幸福感

霧のむこうのふしぎな町
(著:柏葉幸子 絵:杉田比呂美)
2017.07.01
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出永安奈 別フレ・デザート編集部 20代 女

好きがつながっていく、堪らない瞬間

私は人のおすすめの本を読むのが好きだ。自分の知らない作品、世界に出会えるとともに、教えてくれた人の人となりや意外な一面も少し、わかる気がするからだ。

『霧のむこうのふしぎな町』という本も会社の同期にすすめられてつい5日ほど前に読んだばかりだ。上野の森親子フェスティバルという児童書のイベントに一緒に行った際、「この本読んだことないの! 信じらんない!! 絶対に読んで!!!!」とすごい勢いで迫られたのだ。そこまで言われたら買うしかない。その場で即購入し、家に帰ってさっそく読んでみたのだった。

久しぶりに読むファンタジー。しかも30年以上前に書かれた作品だということが私の興味をそそった。しかも児童書には少しうるさい同期のおすすめだ。一体どんな世界が待っているのか……。子ども向けに書かれた全203ページのこの本は、遅読な私でも3時間かからずに読むことができた。あっという間だ。しかし読み終えた後の心と体を満たす何とも言えない幸福感は、長く素敵な旅から帰ってきたような、3時間の出来事だったとはとても思えない濃密さを持っていた。

主人公は小学6年生の少し泣き虫な女の子、リナ。父親のすすめで夏休みを過ごすために訪れた霧の谷は四季の花が同時に咲き誇り、赤やクリーム色の洋館が立ち並ぶちょっと変わった町だ。この町では働かざるもの食うべからずというのが決まりでそれはリナも例外ではなかった。「なんていったんだい」が口癖の意地悪なピコットばあさんをはじめ、自分たちは魔法使いの子孫だというめちゃくちゃ通りの住人たち、口の悪いオウムや気の弱いトラなど個性豊かな人々のお仕事の手伝いを通して、リナは少しずつ成長していく。読んだ後には自分もリナと一緒に霧の谷で、不思議で楽しい夏休みを過ごしたような興奮があった。

私もリナと同じ小学6年生の時にこの本に出会えていたら、このふしぎな町を探して遠くまで出掛けたりしたのかもしれない。そんなことを考えながらこの本を紹介してくれた同期の顔を思い浮かべた。そういえば彼女も、遠くの町や国に出かけるのが好きだったような……。やっぱり彼女がすすめてくれたのが納得できる素敵な本だったな。私は満足して本を閉じた。

その後、もう一度この本の余韻に浸るべく某読書感想サイトをスマートフォンで何とはなしに見ていた。素敵な本に出会うとその気持ちを共有したくてよくやってしまうのだ。「そうそうこのシーン良かったよね」と一人ベッドで頷きにやけていると、こんなような一文が目に飛び込んできた。

〈この『霧のむこうのふしぎな町』はジブリの映画「耳をすませば」の中で天沢聖司が読んでいた本で…。〉

なんと! 私が大好きな「耳をすませば」の中に登場していたなんて!! 確認してみると、図書館で必死に物語を書いている主人公の月島雫の向かいの席で天沢聖司が読んでいたのが、まさにこの本だった。好きな映画と好きな本のふしぎなつながり。二度おいしい! 人から人へ、作品から作品へと好きがつながっていく堪らない瞬間を楽しみながら私の好きな1冊がまた増えていく。

  • 電子あり
『霧のむこうのふしぎな町』書影
著:柏葉幸子 絵:杉田比呂美

『千と千尋の神隠し』に影響を与えた、ファンタジー永遠の名作。

心躍る夏休み。6年生のリナは1人で旅に出た。霧の谷の森を抜け、霧が晴れた後、赤やクリーム色の洋館が立ち並ぶ、きれいでどこか風変わりな町が現れた。リナが出会った、めちゃくちゃ通りに住んでいる、へんてこりんな人々との交流が、みずみずしく描かれる。

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出永安奈【別フレ・デザート編集部 20代 女】

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