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講談社社員 人生の1冊【6】なぜフルマラソン初心者は30kmで失速するのか?

2017.04.15
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岩崎卓也 宣伝部 50代 男

走れ! 56歳、目指せ! 標準体重

“歩幅は狭く にこにこペースで走ろう”というスローガンを背中に大書したTシャツに、スポーツタイツ(短パンなし!)姿で六本木ヒルズに現れたのは田中宏暁・福岡大学スポーツ科学部教授だ。ブルーバックス『ランニングする前に読む本』の著者で、この日はラジオCM収録のために上京していただいた。

田中教授は、天皇皇后両陛下が、皇居の庭をゆっくりジョギングされている映像が公開されて注目を浴びた「スロージョギング」の提唱者である。

スロージョギングについては様々なサイトで紹介されているが、ごく簡単に説明するとポイントは2つに絞られる。

【1】「にこにこペース」でゆっくり走る。
【2】歩幅を狭くして、フォアフット(足指の付け根あたり)で着地する。

たったこれだけのこと。しかし、その効果は凄まじいのだ。列挙すると、

・ウォーキングの2倍もカロリーを消費するため痩せる。
・血圧・血糖値が低下する。
・善玉コレステロール値が上昇する。
・脳の認知機能が向上する。
・誰でもフルマラソンを完走できるようになる。……etc.

にわかには信じがたい「上手い話」が並んでいるように見えるが、『ランニングする前に読む本』を読むと、すべて運動生理学の裏付けがあることがわかる。私も2年半ほど前からスロージョギングを続けており、ラジオCM収録後、田中教授に一言アドバイスをいただきたいことがあった。それは1ヵ月後に出場するマラソン大会の目標タイムの設定について。教授は私の腹に視線を落としながらおっしゃった。

「あなたのハーフマラソンのタイムから計算すると、5時間を切ってもおかしくないよ。でもねえ、その体重だとどうかなあ」

1ヵ月後、田中教授の懸念は的中してしまった。

3月19日。「5時間ちょっと」のタイムを目標に板橋CITYマラソンに出場したのだが、30キロを過ぎてからガタッとペースダウン。歩きではないものの、「超スロー」ジョギング状態を続けてよたよたとゴールイン。グロスタイムで6時間16分。ネットタイムでも6時間2分かかってしまったのである。

完走した満足感よりも「敗北感」が強く残る結末。あの極端なペースダウンは何が原因だったのか? 痩せれば全て解決か? どんなトレーニングを積めばいいのか? レース翌日にあらためて『ランニングする前に読む本』を読み返してみると、実際にレースで体を酷使したからこそ、ストンと腑に落ちることが書かれていた。

長距離を速く走れる人と走れない人の違いは、乳酸閾値と酸素摂取能力の差であること。この酸素摂取能力をアップさせるためには、ミトコンドリアの機能を高める必要があること。ミトコンドリアは「PGC-1a」というタンパク質で増加すること。このタンパク質を発現させるにはスロージョギングが有効であること……。すなわちこれまで通りのトレーニングを継続すればいい、という結論だ。だが知識は強力な武器になる。体調の変化に合わせてトレーニング内容を科学的に調整できるし、なによりランニングの最中に自分の体内でどのような化学変化がおきているのかを理解していることは、大きな励みになるのだ。

そして体重の問題。『ランニングする前に読む本』の第3章末の付録に「減量でどれだけ速く走れるようになるか?」という項目が4ページにわたって詳述されている。そこにある方程式y=0.2x+3.5(yは体重あたりの酸素摂取量、xはランニング速度)を応用すると、私の場合はあと13キロ痩せることでフルマラソン5時間切りを達成できる計算だ。13キロという数字は大きいように見えるが、それだけ痩せてもまだ標準体重オーバー。さほど困難な減量とは思えない……ような気がする。

次の目標は8月の北海道マラソン。去年は35キロ関門でタイムオーバー、失格となったレースだ。今年こそ本書で得た知識を活用し、リベンジを果たしたい。

  • 電子あり
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』書影
著:田中宏暁

運動生理学の研究から生まれた「走るための最強メソッド」

走ることは、本来、決して苦しい運動ではありません。 誰でも持っている「走る才能」を100%発揮するには、フォアフット着地で、ラクなペースで走ること。 「スロージョギング」から始めれば、一流ランナーと同等のスキルが簡単に習得できます。
準備運動も筋トレもいらない、膝や心臓への負担もない。それでいて、消費カロリーはウォーキングの2倍。初心者から、サブスリーを目指す上級者まで、ランナーの弱点を克服し、確実に結果を出す「科学的なノウハウ」を徹底解説。

執筆した社員

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講談社社員 人生の1冊

岩崎卓也【宣伝部 50代 男】

※所属部署・年代は執筆当時のものです

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