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「変わったね」という評価は気にしない! 大草直子が語る軽やかな生き方
(著:大草 直子)
生きるのがラクになる
大草直子さんを知る入り口はいくつかある。「ミモレ」を創刊した編集長、インターネット上に躍る「大草直子着用」という言葉、大人の女性によく似合うおしゃれなファッションを提案する人気スタイリスト。
私の場合は「笑顔」だった。一度見たら忘れられない笑顔の持ち主。「ああ?こんなふうに笑いたい!」と大草直子さんの写真を見るたびに思う。ファッションのヒントがほしくてスマホをスクロールしたりファッション誌をめくっていたはずなのに、気がついたら「このポルカドットのワンピースはどう着こなすの?」を飛び越えて「なんて楽しそうな笑顔なんだろう」と見てるこちらも楽しくなる。
だから、ジャケットの素材やスカートの丈にとどまらず、人柄や生き方も知りたくなる女性だ。「私が感動するおしゃれな人って、どういう人なのか」と立ち止まって考えたくなるのだ。
『飽きる勇気 好きな2割にフォーカスする生き方』は、大草直子さんの半生とこれからの生き方を語った本だ。80歳をこえても「働きたい」と考えている女性が、どんな少女時代をすごし、どうやってキャリアを重ねてきたのか? どんな家庭を築いて、どんなパートナーと人生を共にしているのか? そのひとつひとつに笑顔のヒントがある。
「飽きること」「変わること」は全然わがままじゃない。勇気を持って飽きる、恐れずに変わる──。その考え方、具体的な方法を、この本では紹介しています。
知りたい。そして、見出しにはこんな言葉がならぶ。
人と比べなくていい。枠にとらわれなければラクに生きられる
変わったねという評価は絶対に気にしない
生まれながらにパワフルで自由な女性からのメッセージ……と思うかもしれないが、次のようなエピソードが語られるので、やがて自分の言葉として胸におさまる。
ページ作りに関わっているとはいえ、連れ子で再婚し、夫は主夫で私はフルタイム。どの雑誌の読者像にも当てはまらない自分自身に、どこか居場所がないような、「これでいいのかな?」という気持ちを抱いていました。
いまなら、「そんなことは、他人が決めたフレーム。気にしなければいい」と言えますが、当時の私には、それができなかった……。
(略)「ミモレ」は、読者のヒエラルキーも作らず、ペルソナも作らず創刊しましたが、本当にたくさんの方が、いま、支持してくださっています。
「ミモレを読んで、生きるのがラクになりました」なんて言葉を頂けることは、私にとって喜びでしかありません。
人生の先輩とゆっくりおしゃべりする時間をもらったような読後感だ。めちゃくちゃ仕事を頑張りたくて月曜が楽しみになったし、同時に心のこわばりや混線がスッキリとほどけて、ゆっくりお風呂に入ろうと思えた。
飽きっぽい、でも自分にだけは飽きない
大草さんの人生やキャリアには「潮目」がたびたび登場する。憧れていた編集者としてのキャリアを5年で手放し、大好きなサルサを学ぶために中南米へ単身遊学。帰国し人気スタイリストとなったあとも、肩書きがくるくると変わる。そして「飽きる」という言葉が伴奏のように繰り返し語られる。
「築き上げたキャリアや固まった足場を守らないと」と考える人が聞けばギョッとするような変遷ぶりだ。飽きたから仕事を辞めるなんて、どうなの? でも……?
成功した事例や体験を手放すことが、怖い。その気持ちもよくわかります。(略)
だけど、そんな不安もかき消してしまうほどに、飽きたものをひとに伝えることはしたくない。顔にも言葉にも出てしまう、というのもあるけれど(笑)。飽きたものを出し続けていたら、いずれは自分自身が、そしてその仕事が飽きられてしまうから。
ここを読んで冷や汗が出た。そう、飽きると出力は下がる。言葉は曖昧で鈍くなるし、情熱なんてもちろん消え失せるし、それは周りにも伝わる。
そして、数年おきに飽きる生き方は、無計画な生き方ではない。ふたりめの子供が生まれたとき、大草さんは自身のキャリアについて自分に問い直し、こう答えを出す。
スタイリストという職業には、ふたつのタイプがいる。(略)アーティストのように服を組み立てていく職人的な存在と、自身のフィルターを通して親和性のあるファッションを提案していく存在と。──私は、圧倒的に後者に興味がありました。(略)
それまでは、「どんな仕事も引き受ける」というスタンスでいましたが、親和性を感じられない企画はお断りもしましたし、それまでにやり尽くしたような細かな仕事などは、少しずつ手放していきました。
なりたい私へと進化していくためには、挑戦するための「余白」を残しておきたかったのです。
計画や道はちゃんと整っている。あらゆる転換期において大草さんは自分の人生を自分で選び、フォーカスし、情熱をそそぐ。
飽きっぽいと自覚している私ですが、自分にだけは飽きたくありません。飽きることなく、最後まで愛し続けたい、と思っています。(略)
そのためのツールとなるのが、ファッションやメイクです──48歳になったいま、皆さんにはそう伝えたいです。
ああ、だから私はこの人のファッションや笑顔が好きなんだ。服やアクセサリーが気持ちよさそうに大草さんを包んでいる、あのスタイリングの魅力は、生き方や心の自由さの表れなんだ。
この本をどの世代のひとにおすすめしようか。私と同じくらいの30代?40代以降? すごくいい。次の10年20年の鮮やかさが増した。そして、20代の頃に読んだら、30代の計画をうんと自由に描けるだろう。じゃあ、ティーンエイジャーは? 私だったら読みたいな。大人ってこんなに伸びやかで情熱的な存在なのか、と知ることができるから。心から大切なものに時間と情熱を捧げること、新しい自分を選ぶこと、そしてカラフルに年齢を重ねることが楽しみになる1冊だ。
- 電子あり
飽きること、変わること、そして自分を愛すること。これ全部、わがままじゃないーーー。
超人気スタイリングディレクター、ブランドコンサルタントとして活躍する著者がその半生を振り返り、しがらみ、こだわり、未練、キャリア、人脈など「積み重ねてきた」ものをあえて手放して「自分が今本当に楽しい、大切だと思う頃に集中して生きる」ことの大切さについて語ります。時代の転換点の今だからこそ読みたい、新しい生き方本です。
【目次より抜粋】
<第1章> 飽きたっていい、逃げたっていい
不登校の経験が教えてくれた「逃げたっていい」
仕事が私に自信をくれるはず。だから、就職浪人してでも編集者になりたかった
「ヴァンテーヌ」が教えてくれたこと。サルサとの出会い
飽きることはマイナスじゃない。飽きたことを続けるのが一番怖い
<第2章> 仕事は「3つのステージ」で考える
目の前にあることに「虫」の視点で取り組んだ第1ステージ
第2ステージは「鳥」の視点で視野を広げ経験や知識をシェア
キャリアを手放す勇気が時に必要に。空いたスペースに運が転がり込む
70代からは「本質的なこと」心血を注ぐと決めている
<第3章>枠やしがらみから自分を解放する練習
おしゃれは自分を好きでいるためのツールになる
離婚と再婚が教えてくれたこと。フレームに押し込めて苦しめていたのは私自身だった
人と比べなくていい。枠にとらわれなければ、ラクに生きられる
自分を好きになること、自分軸で考えることを「練習」すればいい
「変わったね」という評価は絶対気にしない
<第4章>新しい家族のかたち
家族の一員である前にまずは自分。家族はあくまで「個」の集まりだから
「子供のために」とは考えない。いつか「子供のせい」になってしまうから
子供は社会からのお預かりもの。一対一でオーダーメイドな子育てを
子供自身が「楽しい」か。子育てで大事なのは「選択」を選択させること
<第5章>新時代のタイムマネジメントとビジネスマインド
8割はやらない。好きな2割にフォーカスする
心の可動域を広げ「詰まり」は自分で開通させる
ビジョンを持ち、逆算して行動する未来への段取り力
コロナが教えてくれた、おしゃれの尊さと時間は貯金できること
<第6章>シェアと軽やかさを鍵に、次の時代へ
時代は「所有」から「シェア」へ。私ができること
軽やかに生きるとは、より本質的なものに移っていくこと
情熱の種はみんなにある。それを芽吹かせる術がわかれば誰もが情熱的な人生に
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。
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