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2021.09.12

レビュー

何度でも死ねる魔法少女、りすか。西尾維新×絵本奈央で贈る魔法冒険譚!

とても鮮やかな赤なのに、顔に飛び散った血しぶきが不穏な空気を漂わせる表紙に、まず目を奪われました。そして読後は、何と表現したらいいのか、言葉にすることすら難しい不思議な感覚を覚えます。
さすが、西尾維新(にしおいしん)氏の人気小説(全4巻)が原作であるだけに、独特な世界観が余韻を残し、あれはどういう事だったのだろう?と、また最初から読みたくなりました。

小学5年の供犠創貴(くぎきずたか)は、成績優秀ないい子という表の顔に反して内心は、「馬鹿どもの機嫌をとってやるのには、とかく苦労が多い」と普通人(=できそこない)を見下していました。

ところが、転校生の水倉りすかを見た途端、 魔法使いだと見抜いた創貴は、何としてでも自分の手駒にしたいと思います。
なぜなら創貴には大きな野望があり、その実現のためには、自分の手駒となって動いてくれる魔法使いがたくさん必要だから。


     
りすかは、右手に手錠を嵌(は)め、いつもカッターナイフを出したり引っ込めたり。

10歳の女の子には不釣り合いなモノと、可愛い容姿とのギャップに、表紙を見たときに感じた“いい意味での違和感”は、“先が読めない面白さ”なのだと気付かされます。

ある日、ホームにいた創貴は、前に並んでいた4人が同時に電車に飛び込む事故に遭遇します。これは自殺ではなく、魔法が絡んでいるのではないかと、りすかに調査を依頼。
りすかは、線路に浮かび上がった低レベルの『魔法式』から、「誰かに魔法を教わった長崎県外(ふつう)の人間」の仕業で、犯人は現場から10m以内にいた人物と推測します。

そして創貴と2人、魔法を使って犯人に会いに行くのですが、ここで手錠とカッターナイフが使われ、なるほどね!となるわけです。

実は、第1話の終わりに突然、「りすかが八つ裂きにされて死んだ」という創貴のモノローグが出てきます。
ここでも、えっ、どういうこと!? 魔法使いなのに、主役なのにいきなり死ぬって!? と先が読めず混乱しましたが、その謎は犯人と対峙したときにわかりました。

りすかは、「何度でも死ねる」のです!!


            
りすかの魔法の種類(カテゴリ)は「時間」。

10歳のりすかは「時間」に関する魔法しか使えませんが、時間を飛び越え27歳として蘇ったりすかの魔法は、ケタ違いに強く人格も凶暴でぶっ飛んでいます。

「赤き時の魔女」と呼ばれるりすかと創貴の関係は、グロテスクなのにエロチック。そして、ドライでありながらも親密。

          

今回の件には、りすかの父・水倉神檎(みずくらしんご)が関わっているのではないかと思う創貴。
であれば、この水倉神檎にはどんな目的があるのか、なぜ、りすかの血液内に高度な魔法陣を仕掛けたのか。
現時点ではまだ謎だらけなので、想像がかき立てられます。

もう1人、創貴の4番目の母親になった折口(おりくち)きずなという女性が最後の方で出てきます。
なるほど、創貴が10歳の子供なのに妙に冷めているのは、この家庭環境にあったのだなと思ったのですが、一体何があったのか……。
また謎が残ったじゃないか!! と思いながらも、この先が知りたくなる、そして読み落としたところはないかと、何度も読み直してしまう。それが『新本格魔法少女りすか』の面白さだと思いました。

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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