歴史上の有名人を題材に新たな作品を作るのは、一般的に不利だと言われています。それは、過去に散々やり尽くしているので、ハードルが高くなるからです。
そんな鉄則を覆して、『ヤンキー水戸黄門』はやってくれました!!
黄門様御一行は、おふざけ三昧、エロ三昧で絶好調です!!
水戸藩藩主であり天下の副将軍・水戸光圀(みとみつくに)は、徳川第3代将軍・徳川家光から、こんな相談を持ちかけられます。
ヤンキーの常套句「かったりい」と言いながらも、引き受けることにしたのは「運命の女!!」「俺のアモーレ(最愛の人)!!」を見つけるため。
世間に知れ渡っている「世直しのため、お供を連れて諸国漫遊した」という水戸黄門の話は実は虚構(うそ)で、光圀の目的はEDである自分を “勃たせてくれる女”を探すためだったのです!!
お供は、佐々木助三郎、渥美格之進の「助さん、格さん」ではなく、“実名”の佐々介三郎(さっさすけさぶろう)、安積覚兵衛(あさかかくべえ)の「介さん、覚さん」。
2人とも水戸藩藩士で剣豪であるはずなのに、介さんは「瞬間記憶を持つ・写し絵の介」、覚さんに至っては“ふんどし”の臭いも嗅ぎ分けられる「絶対嗅覚の持ち主・犬っ鼻の覚」というとんでもない設定。
これに八(はち)を加えた男4人で旅に出るのですが、目的が目的なだけに、宿場町に寄るたびにハーレムを楽しんでばかり。
実は光圀は、「吉原通い」をしていたという実話が残っているそうです。
もしかして、お凛さんが黄門様に同行しないのはそういうこと!?と勘繰りたくなりますが(笑)、お凛は隠密として彼らの様子を窺っていました。再び大名に返り咲くことを目論む柳生十兵衛の手下として、光圀に取り入るのが任務だからです。
ドラマでは、お凛さんの入浴シーンが定番だったので、ゆくゆくは出てくるでしょうが、とんでもないシーンになりそうで今から楽しみです。
江戸城を出立した黄門様御一行は、今の新宿にあたる宿場町「内藤新宿」で、いきなり悪徳商人の用心棒となります。
彼らが用心棒になったのは、盗んだ金を貧乏人にばら撒く、怪盗閻魔哀(えんまあい)を捕らえるためです。
この絵を見たとき、一瞬えっ!?となりましたが、まさかお江戸版「キャッツアイ」が出てくるとは思わず、ニヤリとしてしまいました。
しかも色っぽいを通り越して、光圀の“ど変態”が加速していきます!!
もうこうなると作者自身が面白がっていることが伝わってきて、おふざけ三昧エロ三昧に“下ネタ満載”“ど変態”も加わって、ついこの間までディズニー公認の『殿さまとスティッチ』を描いていた漫画家さんとは思えない振り切れ方です。
実は、『ヤンキー水戸黄門』の目次の前のトップページに、こんな漫画が描かれています。
ご存じの方も多いと思いますが、和田洋人(わだひろと)先生は2021年7月にご病気で急逝されました。あまりにも突然のことで、驚かれた方も多いと思います。
この漫画を描くにあたって、「今までついて来てくれた、わたくしのファンが離れるかもと不安が一瞬よぎりました」とありますが、いやむしろ、この続きを楽しみにしているファンはいっぱいいますよ!!と伝えたいです。
それぐらい洒落っ気たっぷりの和田洋人ワールドが展開する『ヤンキー水戸黄門』、とにかく面白いので、ぜひ手に取ってみてください!!
和田洋人先生が、2021年7月18日にご病気で急逝されました。
心よりの哀悼の意を捧げるとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。(講談社コミックプラス)
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp