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2021.04.03

レビュー

許されざる恋が始まる──。運命的に出会った兄と妹の禁断純愛物語 

大学生活3年目、やっと何かが起きそうです

ちょうど桜がきれいに咲き始めたタイミングでこのマンガの表紙も桜が満開で、「なんてタイミングだ」と思いながら読んだ。



『僕たちは繁殖をやめた』は、最初から最後まで「なんてタイミングなの~」と思いながら読むラブストーリーだ。

“冴えない大学生”が、“とびきり美しい新入生”と禁断の恋に落ちる。誰にも読んでもらえなかった自主制作映画の脚本を、ある日突然、誰かがが見出してくれたら。作品だけじゃなく、自分の全部を手のひらですくい上げてくれるような人と出会えたら。そんなありそうでなさそうで、たいてい誰の身にも起こらないことが起こるマンガだ。

でも、よりによってなんで今それが起こっちゃったのかと思う。

起こっちゃいけないことが、起こっちゃいけないタイミングで一気に始まってしまう。

どうして2人は惹かれ合うのか

“百足心(ももたりしん)”は大学3年生。



大学のサークル「映画研究会」に所属し、脚本を書いているけれど、誰からも相手にされずにいる。この心の鳴かず飛ばず感に拍車をかけるのが“父”の存在だ。



心のお父さん“孝太郎”は売れっ子小説家。彼が書いたラブストーリーは何度か映画化までされている。この状況で息子がパッとしないなら、その子は屈折してもよさそうなのに、心は「いいよなあ才能があって」と言いつつ、自分が作る物語の映画化を諦めていない。素直というか、ひたすらいい奴というか、実は非凡な青年なのではという気がする。

心はある日とても美しい女の子と出会う。



“大迫瞳(おおさこ ひとみ)”。道ゆく人がみな振り返るような美人で、心は「彼女が自分の映画に出てくれたら……」と夢想する。

瞳は偶然にも心と同じ大学に入学予定の新1年生で、ある出来事がきっかけで心の脚本を手にする。で、サークルの誰からも見向きもされなかった心の脚本を、瞳はちゃんと最後まできちんと読んで、しかも大絶賛するのだ。



気を使っているわけじゃなく、もう本気で褒めてる。作品に感動しまくった瞳は映画研究会に入り、先輩たちにも心の脚本を猛プッシュ。そんな瞳の勢いに押されて周りもやっと心の脚本に注目し、なんと初めて映画化することに。

「最高の映画を作る」という心の夢がやっと叶う。しかも神様はもう1つ贈り物をくれる。



瞳は心に惹(ひ)かれている。冴えない大学3年生の夢がここへ来て一気に叶いすぎてる! 神様ってば、やってくれるよね! ……そう、運命はものすごく意地が悪い。神様やりすぎだ。



このタイミングで心は父親から「生き別れの妹がいる」と告げられる。急にそんなことを知らされて心はショックを受けるけど、それはそれとして、大学生活は最高に面白いまま進む。そう、止まらないのだ。そして読んでるこちらは「ああ、瞳がその妹なんだな」と薄々気がつくのだけど……、



何も知らない心と瞳は、恋人として結ばれてしまう。繁殖の相手としてNGな者同士なのに。

それにしても瞳の告白をあらためて読み返すと凄い。心の才能も、容姿も、声すらも愛しいのだという。理想的すぎないか。そう、理想的すぎるんですよ。心がいい子なのはわかる、でも、瞳はどうして心の才能を見出すことができたの? こんなに惹かれてしまうの?

他人以上の深い絆があったから、2人は誰よりも強く結ばれてしまったんじゃないか、起こるべくして起こった悲劇なんじゃないか、という気がしてくる。



恋人となった心と瞳、そして何か思惑がありそうな両親。1巻で出揃うものが出揃った、という状態だ。しかも心の映画の撮影も始まる。この映画がまた曲者だ。心が書いた脚本は撮影にあたって、「禁断の愛」を描くために「ある設定」が書き加えられた。やっぱり、おそろしくタイミングがよすぎるのだ。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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