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2020.02.08

レビュー

体の傷も 心の傷みも私たちが治します! 血小板ちゃんの楽しい日常スピンオフ


『はたらく細胞』は人間の身体の中にある細胞を擬人化した大ヒット漫画です。アニメ化もされているので知っている方も多いはず。この漫画には「血小板ちゃん」というかわいいちびっこキャラクターが登場します。今作はこの血小板ちゃんのスピンオフ作品です。

血小板とは血液の中にいる細胞で、血管が損傷したときに傷口を塞ぐ血液成分のひとつです。一般的な細胞よりサイズが小さいので、漫画の中でもちいさくてかわいらしいキャラクターで描かれています。漫画の中では6人(「人」でいいのかな?)で血管の中をあちらこちら行ったり来たりしながら働いています。

血液の中にいる他の細胞たちからも愛されている血小板ちゃんたち。小さな身体で一生懸命お仕事をする姿は、愛おしさひとしお。こんなにかわいらしく描かれている彼女たちですが、血液の中では大切な成分です。

漫画の中では血小板ちゃんたちのお仕事を比喩を使ってわかりやすく紹介しています。少し難しい言葉には注釈が付いているので安心して読めます。

身近なモノの擬人化って面白い!

たとえば、血液の粘度を高めて餅状態にした「血餅(けっぺい)」は、止血や回復のために作られます。注釈を読むと「ふむふむ、そういう言葉なのか」とわかるので、漫画を楽しみながら勉強しているような感覚になります。

登場するほとんんどの細胞が、読者の私の身体の中にもいて「へ~、私の中で怪我をすると、こんなことが起きているんだ」と感じられます。「そういえば、血が止まるとき、ドロッとしてるなぁ」と、記憶の片隅にあるものが思い出せるので、擬人化って面白いなぁと感じました。

血栓が完成するシーンでは、凝固因子という少し難しそうな仕組みが説明されていますが、絵になることでとてもイメージしやすいです。

登場する細胞も用語も実在するものなので、スマートフォンで検索しながら読みました。「こういう仕組みなんだ」「こんなにちいさいんだ」など知るのは、自分の身体の中の出来事なのに知らないことだらけで、不思議さや面白さに感心するとともに、ゆっくり少しずつ「へ~」と唸りながら読むのが楽しいです。

スピンオフ作品なので、血小板ちゃん以外の魅力的なレギュラーキャラクターもちょこちょこ出てきます。安定のマクロファージさんの強(つよ)かわいさも健在。好きなキャラクターが見つかると、本編や他のスピンオフを合わせて読めるのも『はたらく細胞』の良さです。

身体の仕組みを知ると、自分をもっと大事にしたくなる

今回の第1巻でお気に入りのお話は「バブちゃんてゆわないで!」です。生まれたばかりの血小板たちが、身体の中でどのように大きく成長していくか、その過程でどんなことをしているのかがとてもわかりやすく、漫画としても楽しく読めました。

血小板ちゃんたちが白血球さんに肩車して運んでもらう擬人化も、調べながら読むと「なるほど!」と思いました。いきなり難しいことを勉強するのではなく、まずは仕組みを絵から易しく知り、「これはどういうことなんだろう?」と調べるきっかけになっています。

自分の身体の中で毎日起きている細胞たちが、こんな風に頑張っているのかと感じられるので、『はたらく血小板ちゃん』の漫画を読んでいると、自然と自分の身体を尊敬したりビックリしたり、どんどん興味を持って好きになっていきます。

生きているだけでこんなに複雑な作業をしているんだ。しかも毎日! 知ることで、日々の自分の身体をもう少し大切にしたくなります。かわいい漫画とほんわかした物語で、自分のことを知っていく。知るから愛おしくなる。生きているってどうしてなんだろう、を学べる素敵な漫画です。

レビュアー

兎村彩野 イメージ
兎村彩野

AYANO USAMURA
Illustrator / Art Director
1980年東京生まれ、北海道育ち。
日常を描くイラストが得意。好きな画材は万年筆。ドイツの筆記具メーカー LAMY の公認イラストレーター。
著書『万年筆ですぐ描ける!シンプルスケッチ』は英語翻訳されアメリカでも販売中。
趣味は文具作りとゲームと読書。
https://twitter.com/ayanousamura

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