1行目からいきなりこんな告白をするのは反則かもしれません。正直に申します。好きです。漫画のメインになる一条礼・五嶋千尋・家入雪之丞、親友イケメン3人組のキャラが素晴らしすぎます。キャラ設定、3人のバランス、描き分け。この3人じゃないとダメなんです! わかりみの極みに辿り着くほどすべてが完璧で、吐息しか出ません。いや、初見では呼吸すら忘れてたかも。読み終わって放心状態に。「好き過ぎる。私、好き過ぎる、この漫画」。一息ブレイクタイムを挟み、3回連続読み直しをしてしまいました。乙女ゲーで鍛えられた私のイケメンキャラ萌え魂が完全に臨界点を突破しました。好きです。
正気に戻ったので、ここからはきちんとレビューします。
舞台はとある共学の高校。主人公・七海緑。父が借金を残して蒸発し、母と弟と3人で助け合って暮らしています。家庭のことを考えて高校進学も諦めそうになっていましたが、母の説得により進学することに。
高校生活の記念すべき1日目。緑は財布を落とします。貴重な生活費が入った大事な財布。探していると目の前で拾われているところに遭遇します。しかしちょっと怖そうな相手。自分の財布だと名乗り出ようか悩んでいると、通りがかった3人組の同じ高校の制服を着た男子に助けられます。
ちゃんとお礼が言えないまま別れてしまいます。
しかし後日、財布を拾ってくれた人が、クラスメイトの一条礼であると判明します。
なんとかお礼を言おうとタイミングを見計らうものの、チャンスがありません。ところがそれからしばらくの間、3人組は学校に来なくなります。お礼が言えないままもやもやしていたら、3人が停学処分になっていると噂を聞きます。
そんな中、家計を助けるためにバイトをしていた緑は、学校に内緒で働いていることが関係者にバレてしまいます。緑の学校はアルバイト禁止。特待生として通学している緑は罰則として、特待生制度が取り消しになってしまいます。
バイトを許可する代わりに持ちかけられた「取引」
話を聞くとこの学校関係者とは、緑の通う学校の理事長でした。理事長は緑に取引を持ちかけます。停学してから学校に戻ってこない一条・五嶋・家入を学校へ来るように促し、2週間後のテストを受けさせることができたら、学校公認のバイトを紹介し許可するとのことでした。
家計のためにも通学のためにも緑には好条件。しかも助けてくれた一条に会える。理事長からの申し出を受けるコトにします。
ここで一度、緑とイケメン3人組のキャラ紹介をします。
緑が学校へ連れ戻す3人は一条・五嶋・家入。3人は中学のときから仲のいい親友グループのような関係です。ちなみに3人は個性も強く、一筋縄ではいかなそうな性格。
家計が苦しい緑とは大きく違う暮らしをしています。3人はひとり暮らしをする一条のマンションをたまり場にしていました。緑が3人にテストを受けに来てもらうためにどんな努力をしたか、3人が停学になった理由は何だったのかは、ぜひ単行本でお楽しみください。
「尊い」と感じるシーンに出会う幸せ
今回の1巻は緑の家庭の事情や3人の性格の紹介だけではなく、新しいバイトや体育祭のエピソードが続きます。
全編において3人のイケメンがいつも一緒にいたり、行動する姿がとても良いのです。まさに「尊い」という言葉が似合います。
緑を助けに来るのに駆けつけるときも、体育祭のクラス籏を修理するときも、体育祭で活躍するときも、教室でうだうだしているときも、登下校も。とにかく何をしていても3人で一緒にいることが多い。その描写が随所に描かれます。
黒髪前髪長めキャラの一条。ハネ毛で内側の影がメッシュに見えてかっこいい五嶋・垂れ目やや長髪の家入。モノクロの漫画の中で、キャラの描き分けに個性があり、読んでいて見間違うこともありません。どのコマにもそれぞれのキャラのかわいさや魅力がぼやけることなく、丁寧に描かれています。細部までしっかり楽しんで読めて、繰り返し読む度に「あぁ、ここにこれある~」みたいな発見があります。
身長もきっちり差があるようで、3人が並んで描かれたコマに注目してほしいです。小柄な五嶋のパーカーのフードがかわいく感じたり、長身でスタイルが良い家入のカッチリ目な服装に垂れ目気味の目が大人っぽいなと感じたり。常に3人でいるからこそ、1コマに個性が集まるので、どこのカットもキービジュアルのように、シチュエーションを含めて楽しめます。こういうのを眼福と呼べば良いのでしょうか。
一生懸命で真面目で家族思いだけど、ちょっと天然な緑が、嫌な感じなく3人の男の子の世界観に馴染んでいて、読みにくさがないところがとても楽しめます。
あとがきのおまけページによると、構想段階では緑はショートカットでツンとしたキャラだったのだそうです。それが紆余曲折あって、現在のほんわか一生懸命な緑に着地。たしかに、現在の緑の絶妙なキャラ設定が、読者として感情移入しやすかったり、「がんばれ~!」と応援したくなったりします。個性が強いイケメン3人組と絡んでもイラッとさせない、柔らかいクッション感が最高に合っているなぁと感じました。貴重なショートカット姿の緑のビジュアルは漫画の単行本でお楽しみください。
こんなに気持ちよくズバっとキャラがはまったのが久しぶりで、ずっと読んでいたくなります。2巻も楽しみで、それまでひたすら1巻を読み直しては、「あぁ、ここ尊い」を見つけたいです。
レビュアー
AYANO USAMURA Illustrator / Art Director 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始、17歳でフリーランスになる。万年筆で絵を描くのが得意。本が好き。