おとなも絶対たのしい
日曜日のファミレスで今これを書いています。親子連れのお客さんのテーブルではお子さんがスマホで動画を見ていて、しかも「ここWi-Fiあるよ!」を「宝物みっけたぞ!」くらいのテンションで叫ぶ声も聞こえて、その声の主は4歳児さんだったりする。しびれる。おとなも学生も幼児もWi-Fiの有る無しが死活問題に直結してるの、まさに2019年の日本って感じがする。
『かりんちゃんねるはじめてみた!』は、そんな2019年らしい最高にあかるくて楽しいまんがだ。大好き。なかよし世代の女の子たちだけじゃなくおとなにも自信をもっておすすめしたい。
動画をバズらせ夢をかなえる!
主人公は料理が大好きな13歳の女の子"橘夏鈴(たちばな かりん)"。いつか自分のお店を持つことを夢見ています。かりんちゃんが9歳の時に書いた作文がこちら。
お友達になりたい!
そして『かりんちゃんねるはじめてみた!』というタイトルから想像する通り、本作は「動画サイトに自身のチャンネルを持ち、動画を配信する」女の子のお話です。リアルタイム感はんぱない。
かりんちゃんの世界の動画サイトは「New!(ニュー)」という名前。そこでは私たちの世界と同じように「歌い手」や「バーチェル"ニュー"チューバー」が動画を配信しています。
ある日、かりんちゃんお気に入りのチャンネルで料理大会が開催されることに。この大会のスケールがとんでもなく大きくて、優勝者への賞品は「レストラン」!
「おとなになるまで叶(かな)わないって思ってた」のつぶやきに「おとな」の私はグッとくる。今は動画を自分で投稿できるし、それを世界中の人が見てくれるかもしれないし、もしかしたら大きな夢だって叶っちゃうかもしれない。そう、おとなになるのを待たなくてもいいかもしれない。
かりんちゃんと料理と動画のお話がここから始まります。
料理バトルの勝利条件は「チャンネル登録者数が一番になること」です。そして、このバトルへの応募資格は「エントリーから一週間で動画の再生回数が1000回をこえること」。そう、とにもかくにも「バズらせろ!」。燃える……!
最先端で普遍的
「動画をバズらせる」最先端な中学生のお話でありつつ、本作は「夢をあきらめない」や「まっすぐがんばる」といった少女まんがの普遍的なテーマやキラキラも存分にあって、もうね、そこもとんでもなくチャーミングなんです。
悔しいときは手加減なしでズルズルに泣きますし、
「泣くな」とおんぶしてくれるサイコーにかっこいい友だちもいますし、
「歌い手」の歌声に感動したら世界にお花が咲いてクルクル回っちゃうし、あー、めくるめく女の子の感情がスパークしてる! かわいい!
「好き」に夢中になること
かりんちゃんは毎話オリジナルのレシピを考案して動画で披露します。
かりんちゃんにとって最高のレシピとは「おいしいこと」「楽しいこと」そして「食べてくれる人を笑顔にすること」を満たすもの。この「食べてくれる人」との物語がどれも優しくて熱くて泣ける。
かわいいラッピングのスペシャルなお菓子に添えられた「検索して下さい」で終わるお手紙、めちゃめちゃ現代!
料理風景は大変アグレッシブです。
これはバズる。動画だったら絶対最後まで見るもん。そして、出来上がるお料理はどれもちょっとやってみたくなるような可愛いお料理ばかり。胸があったかくなるの。(各話の最後にレシピがついてます!)
バズるって楽しいことばかりじゃないかもだけど
とにかく料理と動画のどちらもフル回転で楽しい作品なんですが、単に楽しいだけじゃなくて「動画を投稿すること」をさりげなく冷静に描いているところも好きです。
動画の再生回数の下に続くサムズアップ(=いいね!)とサムズダウン(=よくない)の数がリアル。そう、「批判コメ」だって当たり前のようについちゃう世界でかりんちゃんは動画を投稿するわけです。でも「夢をあきらめない」で「大好きなことを夢中でやる」人は年齢問わずみんなタフ。
いい笑顔。好きなことにまっすぐな女の子ってなんてかわいいんだ! 全ページから「好き!」と「やりたいことをやる!」があふれ出てて読むたびに元気になる。「2019年ってめっちゃ楽しい時代だね!」と思います。ありがとう、かりんちゃん。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。