美魔女って言わないで……?
「美魔女という言葉は、嫌いどす」……と、とある大変お美しい元芸妓さんがおっしゃっていたのだが、なんだかちょっとわかるんですよ。「おばさんのわりに綺麗よね」的な、もっと言うと「和製プレスリー」的な、どこか寒いムードが付いて回る気がして。美魔女と呼ばれてガチで喜ぶ女の神経がわからない。
ところが、だ。『美魔女の綾乃さん』の"綾乃さん(39歳・主婦)"ってどんな人? と尋ねられたら「び、美魔女です……」と言うしかない。それも超ド級の美魔女。
こちらが綾乃さん。息子の同級生もびっくりの美人です。(全然似てない息子による冷静なツッコミがリアル!) ただ、綾乃さんの美魔女っぷりの本質はここではまだ発揮されていない。次です。次のシーンが、綾乃さんを真の美魔女にしているのです。
ここ! すごいマジカル! この肉感、ペタンコ靴とトートバッグって言う主婦の日常コーデ、そしてボケボケ!(※以降もパンチラしまくるのに全部気が付いていないよ)。天然の美魔女が繰り出す魔法って凄い。第1話ですでにマジック全開。このずり上がったスカートを見て即確信しました、こりゃ、綾乃さん色々やってくれるな、と。同時に私の中でブスブスとくすぶり続けてきた美魔女観も吹っ飛んだ。
美意識高めでゆるーく頑張っているのに嫌味に見えないのは稀有だ。ちょっと頑張るとすぐ「美魔女ですね」とか言われるんだよアラサーとアラフォーって。そんなときは「綾乃さんだって頑張ってるし」と思うわ。
最初から最後までずーっと綾乃さん
『美魔女の綾乃さん』は、綾乃さんの魅力にヤられまくる周りの人々と、そんな周囲にぜーんぜん気づかず「のほほん」と暮らす綾乃さんが繰り広げるショートコメディだ。尻尾まであんこが詰まってはち切れそうな鯛焼きを想像してもらうとわかりやすいかと思います。あんこ=綾乃さんです。あのハフハフ感と同じ美味しさが楽しめる。
短パンキャミを隠すつもりでエプロン羽織ったら裸エプロン化。なんかもう説明するのもヤボだなと思うくらい綾乃さんはいいところだらけだ。ムチムチの体(とくに足腰)を揺らし、ゆるくまとめた細い髪はただただ柔らかそうで、お酒も好きで、綺麗なお顔の上で表情がくるくる変わる。
こんな顔されちゃったら、フリマで大幅に値切る図々しい爺さんのメガネだって吹っ飛ぶよね。
腰が痛いヒロイン(アラフォー)
そうはいっても、綾乃さんは39歳の主婦。腰も痛いしワイドショーも嗜(たしな)みます。これらの日本のおばちゃんネタも頻繁にキメてくれるが、そこは綾乃さんマジックでやっぱり可愛い。
腰痛に悩むヒロインって新しいよなあ。
そりゃ魅了されちゃうでしょ
パン屋さんもお菓子屋さんも、配達のお兄さんも、少年も、犬も、とにかくみんなが綾乃さんに魅了されるのですが、ただ単に「美人だから」「エロいから」だけじゃないんですよね。
さらっと話しかける言葉がとっても優しくて明るい。こんな人がいたら、たしかに場の空気が絶対良くなる。
最後に、このシーンの綾乃さんのファッションに注目したい。しみじみ「凄いぞ」と思ったんですよ。緩いシルエットと縦ストライプで体型をカバーするワンピース、トートバッグの抱え方、バッグの取っ手の片一方ずり落ちてるゆるさ、そして何と言っても腕時計を内側につけるスタイル、これら全てが「ぽい」。ゴリゴリのハイスペ妻でもなく、オカンでもなく、色気を触手のように振り回すでもなく、程よく「いい」のだ。
他のページのファッションも素晴らしい。とくにお出かけ時のペンダントがどれも可愛くて、思わず「綾乃さんどんなペンダント持ってたっけ」って読み返しちゃったよ。主婦は水仕事や手を使うことが多いからか指輪よりも首回りその他で着飾る人が多いイメージだ。綾乃さんの描写が細部までとことん良いのも本作の見どころだと思う。理想の美魔女は1日にしてならず。
こうやって隅々まで舐めるように見ちゃうあたりで、私も綾乃さんに魅了されてるなあと気づく。もっともっと、たっぷり、綾乃さんが見たい。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。