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2018.04.07

レビュー

「親にも言えない」タイトルだけど、ゲスでナイスな智也くんの最高の恋愛話!?

最高にいいタイトルだなと思う。
本作について「親にもいえないタイトルの漫画」と作者の倉本たけみ氏はあとがきで仰っている。たしかに身も蓋もない真実を自分の親に言うのはしんどいことだ。

そんな身も蓋もなくてゲスでナイスな主人公「智也くん」は16歳の高1でアニメオタク。自分がモテ市場の最下層にいると自認している。「キス 避妊」などをググる、きっと世界のあちこちにいるであろう、いじらしい童貞だ。

そして「どブスだがおっぱいが大きく気立ての良い女子」である同級生の「里崎さん」からの好意に気づいている。でも「かわいい!」子と付き合いたい。そりゃそうだろう。16歳のアニオタ童貞ボーイがいきなり「情緒の安定した人がいい」とか言い出したら不安になる。

この智也くんと里崎さんの攻防が本作のメインストーリーだ。

読みながらふと思い出したのはMr.Childrenの「シーソーゲーム」という曲のことで、歌詞の細部は思い出せないけれど「恋はシーソーゲームですよね」的な主旨(だった気がする)には完全に同意で、恋愛で当事者たちのパワーや立場がおんなじになることなんて多分ない。追いつ追われつ、有利不利が必ずついてまわる。

有利な側は、不利な立場の相手のことを持て余したり可愛く思ったりする。つまり余裕がある。

じゃあ不利な側は余裕もなくカツカツで不幸かと言えば全然そんなことはなくて、好きな相手に引きずり回されることは心地良い。たとえば恋の只中にLINEの既読がつくタイミングを待ちわびながらスマホを握る時間なんて麻薬的に楽しい。

では、本作で有利なのはどちらなのだろう。

智也くんは「俺を好いている里崎さんがマジでブス」をカードに、自分を有利で安全なポジションに置いたまま、里崎さんを「女の子慣れの練習台」にしようと試みる。 

で、さすがアニオタ、脳内の豊富なビジュアルリソースと特殊スキルの「即脳コラ」を駆使して、里崎さんの「お笑い芸人のおっさんのような顔」を、「エロゲーの美少女」にすり替えて接する。

里崎さんは、誰が見ても心の優しい良い子で、友達に恵まれており、お顔はさておき、体はS級美女のクオリティを誇る。当然そんな彼女を「いいな」と思っている人は少なからずいる。そして、とにかく智也くんが大好き。グイグイ迫る。

……ここだけを考えると、ゲスな智也くんが有利で余裕を持っているように思えるのだが、実際はそうでもない。

里崎さんは好きな男の子を健気に追いかける少女漫画の住人なのだ。そして持ち前の愛らしさと弾むような体で智也くんを無邪気に無自覚に翻弄する。武器を武器と知らずにふるう人特有のパワフルさがある。


そんな里崎さんを前に、智也くんの心の中で繰り広げられる「ブスだなあ……」と「オイかわいいぞ!?」の攻防戦はかなり面白い。余裕をぶっこける練習台だったはずなのに、エロ方面に完全にドライブがかかった童貞脳も手伝って、ぞんぶんに引きずり回されている。余裕がまったくない。


そうやって引きずり回されながらも「いや、お前はブスだ!」と踏ん張る智也くんの強さがこれまた良い。そう、やっぱり智也くんの世界では、里崎さんは少女漫画のヒロインではなく、圧倒的ブスで、即脳コラ不可避な存在なのだ。

この2人の関係はちゃんと勝負がつくのだろうか……。

こうやって心配になっているあたりで、もはや練習台を飛び越え、激しめのシーソーゲームになっていることに気がつく。 

ゲスvs.健気、男子高校生のリアルvs.少女漫画、理想vs.現実、外見vs.内面……あらゆる要素が揺れている。先が楽しみだ。智也くんも、里崎さんも、周りの友達も、揺れるだけブンブンと揺れまくってほしい。

ちなみにAVのパッケージのようなあおり文句が並ぶカバーデザインも攻撃力高めで素晴らしいですが、ぜひカバーをとったあとの表紙もご覧ください。童貞以前に自意識過剰ヤベーなって思いますよ。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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