あるある満載! ドルオタ生態観察コメディ『矢野くんに推し変はできない!』刊行記念に、『浪費図鑑』(小学館)の「劇団雌猫」の4名が座談会を決行!
それぞれの沼を持つ彼女たちは『矢野くん』をどう紐解く!?
それぞれの沼に忙しい「劇団雌猫」が『矢野くん』を読んだら?
──今回は、『矢野くんに推し変はできない!』刊行記念の座談会ということで……今オタク女子の間で話題のサークル「劇団雌猫」のみなさんにお集まりいただきました!
もぐもぐ、ユッケ、かん、ひらりさ よろしくお願いします!
──オタク女子たちのインターネットでは言えない話をまとめた同人誌『悪友』がヒットし、書籍『浪費図鑑』も話題となっている「劇団雌猫」さん。それぞれに「推し事」を頑張り、さまざまな「沼」にも精通している4人に『矢野くんに推し変はできない!』を読んで感じた「あるある」をざっくばらんに語ってもらおうという企画です。
もぐもぐ はじめまして。もぐもぐです。AKBから宝塚、競泳まで、あらゆる「沼」を行き来しています。アイドルのなかだと、今はNMB48とSexy Zoneが好きです。推しでいうと、NMB48なら吉田朱里さん、Sexy Zoneだと菊池風磨くんですね。語弊がありそうですが「誤解されやすいタイプ」の子を好きになりがちです。
ユッケ 私の注力してる沼は、若手俳優とジャニーズJr.なんですが、最近はとくに「東京B少年」というジャニーズJr.グループを追いかけてます! 推しは那須雄登(なすゆうと)くん。グループみんな仲良しでわちゃわちゃキラキラしているところが大好きです。女子ドルもちょこちょこ見てます!
かん 私はずっとハロプロ系の女子ドルか、乙女ゲームに登場する優しい男性キャラしか愛せなかったんですけど、春に友人から「乙女ゲーみたいだよ」と送られてきたセブチ(SEVENTEEN)のMVを見て一気にK-POP沼に落ちました……。
もぐもぐ ものの見事な落ち方だったので、見てる我々もびっくりしたよね(笑)。
かん 動画を見だしてから丸1日の記憶がないですからね。セブチはジスペン……ジョシュア推しですが、女子ドルオタの血も捨てられず、K-POPのヨジャ(女子)ドルにも手を出し始めてます。次々新しい子たちも出てくるので、毎日忙しいです。
──最後にひらりささん。
ひらりさ はい。酒とBLとオタク女子文化を愛しており、アイドル界隈は友人に誘われて近寄ってはほどほどに楽しんで次の沼へ……というのを繰り返してますね。 『矢野くんに推し変はできない!』だと、加藤くんを推してます(笑)。ただ、最近LDH事務所による一大エンターテイメント「HiGH&LOW」にハマってからは、3代目JSBの登坂広臣さんの横顔にひたすら心奪われております。この間も東京ドームで行われたライブに行ってきました! フラッグ(※)を振りましたよ……。
※LDH系のコンサートではペンライト・サイリウムのかわりに公式で販売しているフラッグを振る文化。
──十分「推しのいる生活」をしてると思いますよ!
周囲にオタクを隠す? 隠さない?
──そんな4人は『矢野くんに推し変はできない!』を読んでみて、共感したところもあったんじゃないでしょうか?
ユッケ 共感半分、新鮮な気持ち半分という感じでした!
かん 私たちはみんな28歳なので、主人公の慧ちゃんと結構年の差があるのと、我々は全くオタクを隠さずに暮らしてますからね。
ユッケ 私も、JKのときは隠してたよ! あくまで「茶の間」(※)を装っていたので、慧ちゃんが「自分にラブレの魅力を教えてくれた友人より自分が詳しくなってしまって、その子と疎遠になったのがきっかけでオタクを隠している」ことの気持ちはわかる……。私も、クラスでカーストの高い男女にオタクだと思われて引かれたくないという一心でした。
※現場に行かず、あくまでお茶の間でテレビに出ている推しを応援する在宅オタのこと。
かん なるほどな〜〜。私は自分と同じもの好きな人見つけてはどんどん話しかけてたし、ギャル達と同じグループにいたから、ギャル達にめっちゃアニメとかすすめてたよ! 「明日のナージャ」に激ハマりしてて。
ひらりさ あまりにも唐突なナージャ。
かん ナージャの夢小説とかイラストとかノートに書いて回して遊んで!
もぐもぐ 伝道してるな──!
ひらりさ かんさん、コミュ強やで……。私はオタク隠してなくてオタクグループに所属してたけど、大人数でアニメやマンガの話をしていたらさすがに受験期に「うるさい」と言われるようになり、ベランダに出て集まるようになった。オタクは好きなものの話をしていると周りが見えなくなってしまうのです……。
ユッケ そういえば、私もこっそり廊下の隅で好きなアイドルの切り抜きの交換してた。相手の子にだけは「実は好きなの」って明かして、その子は秘密にしておいてくれたの。
かん 信仰告白じゃん!
ユッケ オタクをやっとオープンにできるようになったのは、大学時代以降ですね。それまではインターネットで暗躍してました。
もぐもぐ そういえば私とかん、ユッケさんはそれぞれインターネットで当時の推しの話してて知り合ったもんね。
かん インターネットは偉大。
ユッケ 大人になってからは隠してないので、デスクに推しの写真を飾ったりもしていますが、オープンにしすぎると定時上がりや有給とったときに、「あいつ現場に行くんだな……」というのがバレバレすぎて恥ずかしいという問題がある。
もぐもぐ 私は本格的にオタクになったのは働き始めてから。隠したことはないけど別に言う機会もなくて、だからこそちょっとした時に「あ、こいつ同志だ」ってなる瞬間が楽しい! 朝電車に乗っていて何らかの動画見てる人とか、超高速で萌えを発散する文章をTwitterに打ち込んでる人とか。
かん あー、わかるわかる!
もぐもぐ そういう意味では、加藤くんのお姉さんが朝仕事に行く前に推しの動画見て気合い入れてるのはすごいわかりましたね。「始業前に少しでも生きる希望を摂取しないとやってけないんだよ」って。
──(笑)。
推しが推されると、うれしい? さみしい?
──主人公の慧は、人気アイドルグループ「LOVE LETTER」(通称ラブレ)の濃いオタクで、中でもクールキャラなヤッチン(八杉)を自推しとしています。ラブレの中で、気になったメンバーはいましたか?
かん 私は司くんがセブチのジョンハンにしか見えなくて、推しに重ねて「キャー!」となりました。中性的で繊細なビジュアルなのに中身オラオラなところが、少し前のジョンハンにすごい似てる!
ひらりさ 自分の推しとラブレのメンバーを重ねるの楽しいよね。
ユッケ それでいうと私は西高さんか藤原くんかな。なんか、作品の中の世界でも割と人気あって推されてそうじゃないですか? 私、運営に推されてる人しか好きにならないんですよ。
ひらりさ 贅沢な女だ!
──「矢野くん」の中でも、ヤッチンのメディア露出が急に増え、慧が一喜一憂するというエピソードがありましたが、皆さんは推しが運営に推されたらうれしいですか? さみしいですか?
ユッケ 昔Hey!Say!JUMPの伊野尾くんが好きだったんです。その頃の伊野尾くんはまだあまり世に知られていなくて、ずっと「何で運営は伊野尾を推さないんだよ怒怒怒」と思ってました。だから、数年後の今、事務所からも推されてる姿、そして本人がやりがいを感じて楽しんでそうな姿を見ると、本当にいいな〜と思います! なので私は「うれしい」派なのかな。ただ、ずっと同担が少なくてまったりしてた古参たちが新規にブチ切れているのも見るので、今伊野尾くんをリアルタイムで推していたら、また違う気持ちなのかも……。
かん 私はユッケさんとは違って、「すっごく素敵!」と思った子が推されだったことがない……。「今回こそは推されだろう、こんなキラキラなんだから」っていつも思っているのに、よくよく調べると、大体3〜5番手なんですよ。だから、運営が推してくれたらすごくうれしいです。干され(※)が好きな人もいると思うけど、私はそうじゃないの。ちゃんと好きな子は推されてほしい。
※「推され」の反対の概念。
もぐもぐ 私も、好きな子やグループに、なんでもいいから売れてほしいタイプなので、運営にもガンガン推してほしい! でも「公式と解釈違い」ってなる気持ちもわかる……。「この人のこういうところを好きになってほしいのにここクローズアップするの!?」みたいな。
一同 あ〜〜〜。
もぐもぐ そういう視点で「さみしい」って思う人はいるでしょうね。ただ私は、「世間的な知名度が上がるなら我慢する」という謎の目線になる。
ひらりさ 運営の気持ちに寄り添うタイプのオタクだ。
もぐもぐ その点、今放送中の菊地風磨くんの単独主演ドラマは制作陣とめちゃくちゃ解釈が合ってて最高にハッピーです! ファンが感じてるその人の魅力がちゃんと発揮されてるとうれしい! NMB48の吉田朱里ちゃんも今推しててすごく楽しいです。もともとはあまり握手会にもファンが来ていなくて、見てるこちらも心配していた時期があったんだけど、YouTuberとして自力でブランディングして成り上がって、人気メンバーになった。「総選挙」もある意味そうだけど、運営からプッシュされるのを待つ以外のやり方もあって、チャンスをつかんでいく過程を見られるのは幸せだよね。
かん あれは本当によかった!
ひらりさ 私は根っからドルオタというわけではないので、推しが運営に推されてるかどうかをあまり気にしたことがないんだよね。あまり王道の「推され」にはならないだろう子が好きで、そういう子が性格とは違ったポジションを任されたり推されたりすると「頑張れ……!」と心から応援しつつ、「無理しないで〜〜〜」となったりします。親の気持ちです。 昔AKB48のまゆゆ(渡辺麻友)が好きで握手会にも行ったりしたんですけど、ちょうど彼女がすごく忙しくなって、体調を崩すときもあるタイミングで。「頑張れ……!」と心から応援しつつ、「無理しないで〜〜〜」となることが多いですね。親の気持ち……。
──「うれしい」派が優勢ですが、四者四様のスタンスでしたね。
推しと接触したい? したくない?
──先ほどひらりささんから「握手会」の話が出ましたが、みなさんは推しとの「接触」の現場には積極的に行く方ですか?
かん 女子ドル推してた時はめちゃくちゃ行ってました! セブチの接触にも行きたいんだけど、ものすごい競争率でつらい……。
ユッケ ジャニーズはなかなか接触がないんですよね。コンサートでうちわに反応してくれたりはあるけど。若手俳優さんの握手会などには行きます! せっかく同じ次元に生きてる人間同士なんだから対面で会話したいし、自分が聞きたいことを聞きたい! チェキとかも好きですね。
ひらりさ 私はずっと2次元の方が主戦場で、2次元アイドルは基本接触できなかったので、あんまり接触に重きを置いてないですね。なんだろう……個人的には「パフォーマンス」をライブで眺めるのが好きなのであって、あまり双方向の「ファンサービス」に興味がないです。推しに眼差されたくない!
ユッケ 自意識が高いね。
もぐもぐ 私は推していた子が卒業してしまって寂しすぎて、あらゆるグループの握手会に行くようになりましたね……。なので推しではない子との接触も盛んにしてます!
──「矢野くん」でも、慧がラブレの各メンバーと握手するエピソードがありました。
もぐもぐ 接触って、やっぱり自分がかけた言葉にダイレクトに反応してくれるうれしさがありますよね。それと、アイドル活動じゃなくて趣味の話をできるのがすごく楽しいです。普通のインタビュー記事を読んでいても触れられないような、アイドルとしての本業とは関係ない話ができる。自分の推しと仲いい子のところに行って、「○○ちゃんの最近のかわいかったエピソード教えて〜〜!」なんて言うのも好き。自分の中ではちょっとした取材みたいな気持ちがある。
ユッケ でも、わかる! まだ誰も知らない情報を手にいれたい。
かん 貪欲な女たちだ。
もぐもぐ だから握手会前は、予習が欠かせない。推しじゃない子のレーンに行くときは特に! ブログを読んだり、その子の趣味の話を仕入れたり……。
かん 私は趣味の話とか振れない!「お仕事中だしオタク相手にその話したいかな……?」とか気を使ってしまう。質問されまくっててつらいんじゃないか、とか。さっきも言ったようにあまり推されてない子を好きになりやすいので、「疲れてないかな?」とか「最近心折れてないかな?」とかそういうことを考えて、応援する気持ちを伝えに行くという目的が強いですね。「大丈夫! ここにあなたを好きなファンがいるよ!」って。
ひらりさ いい話だ。
ユッケ 寄り添い型干され推しオタだ!
もぐもぐ タイプ分類(笑)。
ひらりさ 新発売の煮干しみたいなネーミングだな。
かん 温めて食べると美味しそう(笑)。
つらいときもかなしいときも、オタクだった
──みなさんの推しへの愛が十二分に伝わって来たところで聞きたいのですが……、「推し変」や「担降り」を考えるときはどういうときでしょう?
ユッケ 私は、1人でむくむくと育ててきた「そのアイドル像」が何かによってぶち壊されたときに、スッと冷めて降りるパターンが多いです。
──「何か」っていうのは?
ユッケ 例えばスキャンダルだったり、パフォーマンスの解釈が変わったときだったり。あと基本的に箱推し体質なので、自分の推しじゃなくても、グループのメンバーが脱退したりすると、つらくなって降りちゃうなあ……。メンバー間で格差つけられて干されたときとかもダメですね。
かん あ〜〜〜! K-POP界隈めちゃくちゃあるわ……。私は、ちょっとひどいかもしれないけど、推しが推される見込みや人気が出る見込みがなくなったときに、心が折れて離れちゃいがち。
ひらりさ 寄り添い型干され推しオタだから、仕方ない。
かん 「いま推されてなくてもこんなに魅力があるんだからきっと推されるはず!」「歌割り増えるはず!」って期待してるときが一番楽しいんですよ。スキャンダルも、スキャンダルそのもので推し変を決意するのではなく、スキャンダルきっかけで運営からの干されが確定したら……って感じ。あと、推しがあまりにも不器用で、ガンガン後輩に抜かされまくってどんどん序列が落ちていって、それでも本人が悔しさを表に出さないときとか。「もっと本気見せてくれよ……!!」って苦しんだあと、離れることもあったね。
ひらりさ 私は、自分から「降りよう」と決心したことは全くないですね。気づいたら情熱のありかが変わっている……。そういや、もぐもぐさんって推し変したところ見たことないかも。ずっと推しが増えていってるよね?
一同 あ〜〜〜。
もぐもぐ うん。たしかに、長くずっと飽きずに好きでいつづけられるタイプですね。だから、あんまり推し変したことない。推しが卒業したら次の子って感じ。いろんなジャンルにそれぞれ好きな人がいるから、病まずに長く続けられるのかもしれない。
ひらりさ ライフハックだ。
ユッケ いいオタクだと思うよ、もぐもぐさんは。
かん 私はこれまでいろいろ病んできたよ。℃-uteのときも大変だった。
ユッケ もしや、「チャー隊」事件?
ひらりさ 何それ……。
かん 「SHOCK」という曲のソロパートが、鈴木愛理さん以外ほとんど「チャー」って掛け声のみだったの。
ユッケ それで愛理以外のメンバーが「チャー隊」と呼ばれた。
もぐもぐ・ひらりさ (笑)。
もぐもぐ 今聞くとおもしろいけど、リアルタイムで経験したらつらすぎるな。
ひらりさ みんな、数々の修羅場を乗り越えて来たんだね……。慧ちゃんはヤッチンそっくりの矢野くんに出会ったことで、ヤッチン推しとしてのアイデンティティを揺らがせたりしているけれど、幸せな悩みなのではないかという気がしてきたわ。
かん ほんとだよ!
もぐもぐ 矢野くんと慧ちゃんはどうなるんだろうね?
かん 付き合うかな!?
もぐもぐ 私は矢野くんがラブレ新メンバーになる説を考えてますよ。
ひらりさ 何それ(笑)。
ユッケ あ〜〜、ヤッチンが急性胃腸炎になって、矢野くんがステージに!?
もぐもぐ そうそう! だって振りコピ絶対してるじゃん!
ユッケ 慧ちゃんは「無理だよ!」って止めるんだけど、矢野くんの振りコピは完璧なので、事なきを得てしまうはず……。
ひらりさ 普段推しに対する妄想で鍛えてるせいか、このまま無限に話が続いてしまう……(笑)。「ドルオタあるある」も本当にたくさん出てくるし、そこに慧ちゃんと矢野くんの関係のスパイスも効いてくるし、2巻も楽しみにしてます!
──今日はありがとうございました!
(終わり)