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2026.10.20

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学歴なし、親なし、才能なし──この最悪で理不尽な現実を異世界魔法で無双する!

今を生きる私たちが感情移入できるファンタジー作品のキャラクターは、どんな存在でしょうか。株価は右肩上がり、大企業は潤って、でも庶民の給料は増えず、物価の上昇は止まらず。そんな二極化した閉塞の時代に人々の心を惹きつけるのは、見返りを求めず異能を駆使して悪の軍団や恐ろしいモンスターをやっつける正義の味方よりも、家族を養うために頑張って怪物を倒しお金を稼ぐ、そんな等身大の人かもしれません……。

本作の主人公・桜坂天人(さくらざかあまひと)は、妹とふたり暮らしの18歳。両親はすでになく、なんとか生き抜かねばならないなかで、50社連続で就活に失敗する危機的状況です。そんな彼が住む日本は、30年前、突如出現した【ダンジョン】の存在によって一変しました。
【イデア】が発現する者は討伐者となり、隆盛を極めるダンジョン産業のなかで人生勝ち組が確定。一方で【イデア】のない一般人は、慎ましやかな暮らしを送る。現代日本とは異なる理由ながら、貧富の差が拡大する状況には大差なし。

一般人である天人は、本来なら負け組一直線。しかし、とある変化から人生一発大逆転ルートの扉が開く、というのが本作のオープニングです。

前世は大魔導師! 秘密を抱えて生きる“お兄ちゃん”

大逆転ルートの扉を開くカギは、前世にあり。たったひとりで数万もの魔物を狩っていたという、名うての大魔導師こそが、天人の前世。現世にて突然現れたドラゴンに襲われ、絶体絶命というピンチに、前世の記憶がよみがえります。そのきっかけは、愛する妹・那美(なみ)への想い。
愛情によって呼び起こされた前世の記憶から、大魔導師の魔法を現世で繰り出すことに成功した天人は、討伐者でも簡単には倒せないドラゴンを一撃で撃退!
大魔導師の力を得て、これはもう人生勝ち確……と、そう簡単にはいかないのが、世の常。この世界には存在しないはずの「魔法」の使い手であるということは、様々なリスクが生じます。
【イデア】の場合、ひとりが持てるのは1つまで。それに比べて大魔導師は、攻撃から回復、そして補助など様々な魔法を使うことができる。しかも加減を間違えると、街ごと吹き飛ぶレベルの魔法。それほど強大な力を得てなお、いや、それほど強大だからこそ、【イデア】という蓋で隠さないと妹との暮らしが破綻しかねない。

そう、天人の生きる目的は、妹の幸せのため。自分が裕福になる、あるいはヒーローとして脚光を浴びようなどとは、まったく考えていないのです。

妹にも世間にも隠し事を抱えて、それでも妹の幸せのために生きる。兄は強いのです。

「ビジネス」としてもしっかり描かれるモンスター討伐

本作の世界観として特徴的なのが、【イデア】を持つ者、すなわち討伐者を取り巻く環境です。彼らは対モンスターにおける優秀なハンターであり、ダンジョン産業の中核を担うカンパニーと契約しています。

ダンジョンおよびそれに付随するモンスターが、脅威であると同時に経済を回す存在にもなっている。お金が生まれるということは、そこに企業(カンパニー)が集まり、企業は討伐者を雇用。雇用契約を結んだ討伐者は、モンスターを討伐することで給与と報酬を得る。

この仕組みが成り立っているからこそ、天人は前世の記憶を活かして、名より実、つまりは正義の味方ではなくプロの討伐者としてお金を稼ぐ道を選ぶことができるわけです。

カンパニーにも大手から零細まで様々あり、討伐経験もなく、本来15歳までに発現するはずの【イデア】を18歳になってから獲得した(という嘘のプロフで魔法をごまかす)天人を大手カンパニーは敬遠。そんななか、口コミ評価は★1つ、危険な香りプンプンな「詩条カンパニー」へ足を運んだ天人は、【イデア】測定テストを受け、合格を勝ち取って無事に討伐者として契約することになります。

ここから即モンスター討伐するのではなく、お金まわりの話を丁寧に説明されるあたりが、本作におけるダンジョンビジネスの重要度を物語っています。働く前に雇用契約を結ぶ者同士、お金の話をするのはとても大事なことです!
予想をはるかに超える高収入に、前のめりな天人。そりゃあ討伐者になれば人生勝ち確、と言われるわけです。

妹、謎の先輩、好敵手? ……主人公をとりまく魅力的なキャラクターたち

天人を中心に進む物語のなかで、1巻にして早くもその魅力を放っているキャラクターたちが続々登場します。まずは天人が愛してやまない、たったひとりの大切な家族である妹・那美。貧乏生活が染みつきすぎて、兄が討伐者として得た報酬で買ってきたとある高級料理を前に大感激する姿に、どうか幸せになってほしいと願わずにはいられません。
さらに、天人が合格した【イデア】測定テストで、彼と同等の能力を示した詩条カンパニーの先輩討伐者・黒月七夜(くろつきななよ)。
なにやら近寄りがたい、クールな雰囲気に惹かれますが、実は――
ギャップ萌えのポテンシャル、かなり高そうで期待大のキャラクター。

そしてもちろん、各カンパニーに所属する様々な討伐者たち。それぞれにどんな【イデア】を持ち、どのようなスタイルでモンスターを狩るのか、その描写も楽しみです。

討伐者としてデビューした天人が、これから先どんなモンスターと対峙するのか。その強大な魔力に対抗し得る存在は現れるのか。モンスターを倒し、お金を稼ぎ、妹を守って、「前世は大魔導師」という秘密は隠す。何種類もの課題を背負って生きる桜坂天人の人生に幸あれ!

前世が最強魔導師だった俺、異世界魔法で無双する!(1)

著 : 安康 マイ
構成 : シミズヒロノリ
原作 : kimimaro
その他 : 刀 彼方

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レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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