元悪役令嬢→オジサン、そのからくりとは!?
両親を亡くした幼いエイドリアンは、祖父に溺愛されるなかで、災いから守るという東洋の言い伝えをもとに、女の子のように育てられます。ある日、美しい瞳のエイドリアンはその姿をリガトーニ王国の王太子に見初められて、「我が家から王妃を!」と暴走する祖父の後押しもあり、男児であることを隠して王太子と婚約。幼いうちはごまかせましたが、声変わりや背丈の成長など、いよいよ苦しくなってきたエイドリアン。ふとしたきっかけから周囲に無礼な振る舞いをしてしまった彼は、そのことで自身の評判が落ちることに気づいて、あえて“悪役令嬢”を演じ切り、無事に王室から追放。
地位も財産も失いましたが、女性の姿で生きることから解放され、いわゆるスローライフを満喫中、というわけです。
ひとつ気になるのは、エイドリアンがもつ“夜明け色の瞳”。この瞳のパワーなのか、現時点で明示はされていませんが、彼は女性からオジサンまで、様々な人の心をときめかせる才能があるようです(本人に自覚はありません)。この不思議な力の秘密、気になります。
元悪役令嬢と王国からの逃亡王妃がバディとなる! 再出発の人生交差点
エイドリアンは元々、偽装生活に限界を感じ、自ら仕組んで悪役令嬢として追放され、その結果スローライフを手に入れた人物。一方のコハルは、エイドリアンが去った後で王妃という立場になりながら、その王妃の座を捨てた身。ふたりは時期と形は違えど、「王室」から抜け出してきたという共通項があります。
だからこそ、正体を隠したエイドリアンのもとにコハルが押し掛けてくる展開には、運命を感じずにはいられない。先述した、人の心を惑わすエイドリアンの不思議な力の影響を、なぜかコハルは受けないということも発覚。ますますふたりの関係性やバックグラウンドに興味が湧いてきます。
「気ままなスローライフ」の皮をかぶりながら、その実態は「かつての不自由から逃れてきたふたりによる、遅れてきた再出発の物語」。なぜ王妃は国を捨てることになったのか。そして、異なる形で自由を選んだふたりがこれからどんなバディになっていくのか。この奇妙な運命の交差が、本作の大きな推進力となっています。
「元の世界に帰れるかも」コハルのセリフで物語は一変!
これは、1枚の世界地図には収まらない、別の世界同士を繋ぐ壮大なファンタジー。エイドリアンの世界で古来より語り継がれてきた伝説の異邦人“遥か人”なる存在。その研究をしているエイドリアンと、その異邦人そのものである可能性を匂わせたコハルの邂逅。ふたりを結び付けた遺跡調査で、いったい何が明らかになるのか。俄然興味が湧いてきます。
元悪役令嬢のオジサンと、異邦人説が飛び出した元王妃のコンビ。自分の人生を取り戻そうとするふたりの再出発は、やがて世界そのものを揺るがす物語へと繋がっていく予感に満ちています。第3話では、漫画の構成的にも、そして物語的にも予想外&衝撃の展開が待ち受けているという、スローライフを織り交ぜつつ次のページに何が描かれるのかがめちゃくちゃ気になってしまう本作。
ふたりの会話やモノローグによって輪郭がハッキリしてくるこの世界の文化や登場人物たちの背景など、大事件が起こらなくても興味深く読ませてしまう、クオリティの高さも見逃せません。
エイドリアンの瞳の秘密や、コハルの王室離脱の理由、そして彼女に隠された真実など、大小の謎を携えながら綴られるスローライフファンタジー。一つひとつのミステリーに心惹かれながら、ふたりの関係性の変化や運命の道筋をじっくり味わいたいと思います。








