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2025.07.02

レビュー

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余命1年の青年と未来を視る少女が悪政に立ち向かう王宮ファンタジー『シャンバラッド』 

――100年の孤独と、1年の覚悟が交わるとき、物語は動き出す

『シャンバラッド』は、国の行く末を占う少女と、命を賭して未来を変えようとする青年の、静かで熱い革命譚です。
第1巻は2025年6月6日に発売されたばかり。乗り遅れないよう、「今」注目しておきましょう!

貧しい山岳地帯から王都に下りてきた青年・ラジャンは、自由な暮らしを夢見つつも、困っている人を見過ごせない優しさを持つ青年です。しかし、その正体は民から忌み嫌われる旧王朝の末裔。ひっそりと生きてきた彼の運命は、王都でのある出会いをきっかけに大きく動き出します。
占いによって国を導く少女“御瞳(みどう)”――アムリタ。王が不在となったこの国で、彼女はただひとり、未来を視つづけてきました。ある日、襲撃からアムリタを救ったラジャンは、そのまま事件の容疑者として捕らえられてしまいます。
アムリタから「逃げ出せば死ぬ」「明日を凌げば解放される」という予言を受けたラジャンは、その言葉を信じ、生き延びます。
ラジャンに「王の器」を見ているアムリタは、「1年後に死ぬ」と未来を告げたうえで、その命を賭して国を変える手助けをしてほしいと願うのです。

やがて明かされるのは、アムリタ自身の運命

視る力を持ち、長い時をひとりで生きてきた彼女の孤独に、私たちの胸も締めつけられます。自ら望んで選んだわけではない「国を背負う役目」によって、どれほど多くの感情を凍らせてきたのでしょうか……。
ラジャンはそんなアムリタを知り、迷いながらも「自分じゃない誰かのために生きる」覚悟を持ち始めます。彼のまっすぐな優しさは、過酷な宿命を背負った少女にとって、初めての光だったのかもしれません。
そのラジャンの行動には、読者の背中をそっと押してくれるような力強さがあります。自らの出自に苦しみながらも、誰かのために手を差し伸べられる――その姿は、世界を変えるために必要なのは特別な力ではなく、「覚悟」と「優しさ」であると気づかせてくれます。

そしてアムリタもまた、ラジャンと出会うことで、「誰かと共に歩む」物語をようやく生き始めることができるでしょう。ラジャンの行く末を照らす存在である彼女ですが、私には、彼と共に生きることで救われるのはアムリタのほうなのだと感じられてなりません。
信頼が芽吹き、心が交わりはじめる第1巻。これは、王宮の悪政に立ち向かうバディの物語であると同時に、「誰かと共に生きる」ことを知る物語でもあります。

終わりを知る者と、終わらない時を生きる者

その出会いが導く革命の行方を、これからも見届けていきましょう。
理想郷(シャンバラ)を目指す者たちの物語詩(バラッド)は、いま始まったばかりなのだから。

レビュアー

Micha

ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!

X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier

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