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2025.06.28

レビュー

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男もお嬢様やる時代。“お嬢様部”創設に挑むカリスマ男子の最前線スクールコメディ

お嬢様の魂は誰にでも宿る

好きな格好をしている人はだいたい生命力が強い。ではそれは先天的に与えられた「強さ」なのかといえば、たぶんそうではない。『お嬢様男の心得』のポップな絵柄とコメディの向こうには、私が欲しいなあと思ってきた「強さ」がある。
立派な金髪縦ロールが3つ揺れている。骨張った手に、男子高校生の制服。背も高そう。そして一人称は「俺」! でも彼は頭のてっぺんから指先まで「お嬢様」なのだ。その証拠に彼が「ファサ……」と髪を揺らすとバラの花びらが舞う。そんな特殊効果はお嬢様か王子様にしか使われないし、その二択でいえば、彼は間違いなくお嬢様だ。

ところでお嬢様部って何?

アイドルなのに過激グラビアばかりやってしまう

“お嬢様男”こと“金輪際ミナワ”は高校1年。金粉がキラキラと舞っていそうな氏名だが、実際に金輪際財閥の子息でヤケクソのように大金持ち。そして、とある高校に転校したばかり。

その転校先にクラスいたのはアイドルの“墓穴メグリ”。大きな胸(Fカップ)の持ち主で、15歳なのに過激なグラビア仕事ばかりをやっている。
しかもメグリ本人がやりたくてやっている訳ではなく、断れない性格もあって水着の面積がどんどん縮小しているのだ。アイドルなのに、あとちょっとで見えちゃいそう(めっちゃくちゃかわいいんだけどね……)。

メグリは学校でもハッキリ「イヤ!」と言えない性格で、意地悪されても抵抗できず、失礼なことを言われても怒れず、なんだか友達もいない。墓穴という名字そのままのような毎日だ。そんなメグリにとってミナワの一挙手一投足が「すごい」。
こんなに堂々とされちゃったら何も言えないよ。確かに似合っているし。強い。

しかもミナワは強いだけじゃなく親切で、いつもハキハキと真剣で、まっすぐで、メグリのことを何度も助けてくれる。
ホント、お嬢様部って何……? お嬢様部には「お嬢様部」と刺繍されたハンカチがあることはわかったが、何なのだろうか。金輪際ミナワお嬢様に説明してもらおう。

お嬢様部とは!
ミナワの大声による解説を私なりに解釈すると、お嬢様とは、語尾を「ですわ」にしなくても、性自認がどれであっても、あとお金があってもなくても、高貴なる魂さえもっていれば誰でもなれる状態のことを指すらしい。スタイルともいえるだろうか。で、我こそはお嬢様だと胸を張る人びとが参加し、お嬢様を実践する部活動。それがお嬢様部だ。

自分に負けないことですわ!

実は、かつてメグリもお嬢様に憧れていた。
幼い頃、公園でブラックカードと強靱なメンタルでメグリを助けてくれたゴリゴリの“お嬢様”の言葉を、15歳になったメグリは忘れたわけじゃない。でも自分にはあのお嬢様のような負けない心はなさそう……。そうやって悶々とするうちに、水着が小さくなってしまったのだ。

でもミナワの言葉を思い出してほしい。お嬢様は男でも老人でもなれて、誰でも歓迎。そしてあの小さなお嬢様の名言と同じことをミナワは口にする。だってお嬢様だから。
お嬢様とつければなんでもアリ! ミナワのむちゃくちゃだが謎の説得力に満ちたお嬢様ムーブとバラの嵐を浴びるうちに、メグルもお嬢様に憧れていた自分を取り戻す……?

ところで、ミナワは大財閥の家の子に生まれたが、その圧倒的突破力は果たしてガチャ的な要素によって与えられたスキルなのだろうか。

私にはそうは思えない。「自分に負けないことですわ」と自分に言い聞かせる人には、たぶん負けそうな瞬間があるからだ。だから、ミナワのお嬢様魂は自らの意志で磨いて獲得したもののような気がする。なるほどお嬢様部は誰でも入れる。その「心得」さえあれば。

ただ、そうはいっても魂を磨くなんてそう簡単じゃない。
ミナワの言葉にグサッとくる。このページを読んでから本作の表紙のカバーを外して眺めてみると、なかなか胸にくる(とてもいい絵だ)。
すごくいい。これは入部したくなる。

ちなみにお嬢様部には部室がなく、そもそも認可も下りていない。部活として認められるには、部員は最低でも4名必要なのだという。つまりミナワはお嬢様の魂をもった人物を探し、勧誘しないといけない。自分に負けないお嬢様の突破力で創部なるか?

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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