大切な人の笑顔を守るためなら何でもできる。空も飛べるし女装もできるしアイドルにだって擬態(ぎたい)できる。『神楽がゆく!』の主人公・神楽はハイスぺだけどトリッキーな生徒会副会長。生徒会長・金守の恋路を全力でサポートします。
東京にある一ノ宮高校の頂点・生徒会。校内の規律に目を光らせるのは生徒会副会長の神楽です。完璧主義で完全無欠な彼の行いは学校のため……ではなく、たった一人、生徒会長の金守のためのもの。
金守財閥の御曹司で超お金持ちの金守会長はちょっと天然だけど優しく謙虚。神楽の親友です。「会長には人の心を動かすお力がある」。そう信じて幼い頃から金守を慕う神楽は、出会いから10年を経た今も副会長として、友人として、全力で金守を支えます。そう、神楽の行動原理はすべて金守の幸せのためなんです。
神楽っていう大事な友達がいるんだし、これ以上の幸せはほかに望まないよ
なんなら神楽が彼女だったらな~ なんてね
金守の描くどんな幸せの形にも対応できるよう、常に準備を怠らない神楽です。
そんな彼らの間に、ある日春の風が吹き込みます。
可愛すぎる転校生・美園さんを一目見た瞬間、金守の胸は大きく高鳴ります。それはつまり……初めての恋! この恋を成就させるのは彼の魅力を誰よりも知る自分しかいない!
さっそく美園さんを呼び出す神楽。代理とはいえ、そんな態度で大丈夫……?
素性の分からない美園さんを会長に近づけてもいいのか? それを見極めつつ、美園さんに会長の歴史を学ばせようとする神楽です。過保護だなあ。
それでも、美園さんは会長の大切な人。ピンチになればこうして救出するのも神楽にとっては当たり前のことです。高圧的な態度もこのシチュエーションならむしろカッコいい……!
神楽の独特なカッコよさは美園さんの心にもしっかり響いてしまっている様子。この時点ではまだ誰も自覚していないけれど、会長の初恋は神楽の思惑をよそに三角関係に発展していくのです。
10年来の親友同士の間に嵐を呼ぶ女子・美園さん。彼女の圧倒的な可愛さは血が滲むような努力の結晶です。細かい言動にも気を配り、モテて当然の人生を歩んできたようです。
しかしただ一人、そんな美園さんになびかない男が。
そう、金守にしか興味がない男・神楽です。彼女にこんな顔を向ける男はきっと今までいなかったはず。
そして、こんな風にピンチから救ってくれる男も……。
ああ、さりげなく描かれているどんぶり飯さえも神楽の金守への愛を物語るアイテムなのがせつない。そう、美園さんの心を揺らす神楽の言動はすべて金守のためのもの。でも自分へのアピール抜きのこんな態度こそ、女心に響いてしまうんですよねー。
「これはチャンスですよ」「私にいい考えがあります」「代替案があります」……。神楽は金守の恋を実らせるためにあらゆる角度から次々と作戦を立てては実行します。そんな彼の力技を堪能できるのが、第4話「勉学」。
女は尊敬できる男に惹かれる傾向があります
知的なイメージを持たせて損はないですよ
ということで、神楽はテスト前に図書館を貸し切り、金守とみっちり勉強をすることに。いつこういう知識をインストールするんだろう。金守のための昼も夜もない努力がしのばれます。
ひそかに「1位に導く」「15人を葬る」究極の選択で揺れる神楽と、のんきな金守のギャップが楽しい。 そこに美園さんが現れ……。
神楽の問題解決能力と頭の回転に恋をしそうな人も多いはず! クレバーな神楽の素晴らしい献身を堪能できるエピソードです。
どうも初恋の行く末が危うい、優しさあふれる生徒会長・金守。いつも先回りして守ってくれる神楽と一緒にいるせいか、ナイトキャップをつけたまま登校してしまうような天然ぶりが可愛らしい。欲を言えばもうちょっとカッコよさを出して普段とのギャップを見せられればいいのに、と思っていたところ……。
美園さんが巨大な虫(中身は神楽)に襲われるアクシデントが!
ここで繰り出された「守りたいものを守れないくらいなら死ぬ方がマシだ」に痺れます。
謙虚さに意外な強さをあわせ持つ金守の恋路は神楽じゃなくても気になるところです!
レビュアー
中野亜希
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019