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2024.03.30

レビュー

ずるすぎる、でも好き…!!(泣)甘い顔したクズ男子×クール女子のピュアラブ

警鐘を鳴らしたい。世の中の女性はもちろん、男性にも。息をするように相手の心をかき乱し、思わせぶりな態度を取る。でもその真意を測りかねる厄介な魔性の存在について、警鐘を鳴らしたい。

本作を読んで、真っ先に沸き上がった感情です。

主人公は、中条一香(なかじょういちか)、大学生。身長が高く、目立つ存在の美人ゆえ、彼女の中身ではなくそのスタイルばかりが注目され、合コンの場でも居心地が悪い。そんな一香が出会ってしまったのが、同じ大学に通う佐成航生(さなりこうせい)。

数合わせで来たという佐成の、下心のない純粋な優しさやフラットな振る舞いに、気づけば自然と会話が弾むふたり。「オカルト系動画」にハマっているという共通の話題で意気投合するなど、グッと距離が縮まります。残念な合コンだと思っていたけど、いい出会いがあったと喜ぶ一香……なのですがさっそく魔性を発揮する佐成。



いや、距離感よ。私も、異性の友人が “髪食ってる”状況だったり、髪にゴミが付いていたりするとき、何らかのアクションは取りますが、よほど親しくなければ、口頭で伝えるのが限度。髪の毛に手を伸ばすとか、それが許されるのは幼馴染か恋人同士レベル。

一香はこの行為にドキドキしてしまうのですが、合コン解散後のスマホでの会話は実に他愛もない内容で、あの思わせぶりな行動の答えが見えません。掴みどころのない佐成に一香も、そして読者である私もちょっとモヤモヤ。目立った進展もないままのふたりですが、ある日、一香のスタイルの良さに、通りすがりの男たちが下世話にリアクション。そこからの一香、そして佐成の会話が流れを変えます。

はい、キュンきました。同性から言われても、グッとくる発言。それをましてや、気になる異性から食らったら……! スタイルの良さなんかじゃなく、「姿勢の良さ」に目が行くその視点と感性に、読んでいて思わずドキドキ。さらに……。

一香にとってのコンプレックスを「最強」と絶賛する佐成。往年の男性向けモテ指南雑誌「Hot-Dog PRESS」に見出し付きで載せておきたいくらいのスゴ腕テク。これをナチュラルに言えてしまうのが、佐成のいろいろな意味でヤバイところ。計算ではなく、素直に相手の魅力、それも性的云々ではなく人間としての魅力をきちんと見抜いて伝えるスキルがヤバイんです。

ここで終わればシンプルにめちゃくちゃいい男で、圧倒的恋人候補として一香の背中を押したくなるのですが――。



これだけモテ匂漂う男に、女性の影がチラつかないハズもなく。しかも、これだけでは終わりません。

人間って難しい。堂々の遊び人宣言。誤解を恐れずに言えば、清々しいクズ。「女性の扱いに慣れている」という類ではない、ちゃんと相手の魅力に気付いて伝えることができる素晴らしい人間性を持ち、見た目も爽やかで絵に描いたような素敵な人、だったはずなのに……!
でも、本気の人はお断り、という点ではある意味誠実なのかも!? あれ、わかんなくなってきました笑。

そんな佐成の、ナチュラルボーンモテ男言動は、遊び人宣言後も容赦なく一香を襲います。印象的なシーンをいくつか、ダイジェストでご紹介。

遊び人発言を受けて佐成への想いを断ち切った一香の、開き直りな笑顔を見ての言葉。

突然の雨に、折り畳み傘を差した一香の手に重なるよう、傘を握る佐成。

一香が友人の紹介で男性とデートした日、男受けを意識した服を着たことに対する佐成の発言。

彼氏を作ろうと必死な様子の一香に対して放つ、佐成の芯を食ったひと言。

佐成の言動は、自分のことをちゃんと見てくれているし、好意もある……?と思えるものばかり。

極めつけともいえるのが、一香が別の男性とデートをすることを伝えるシーン。誰とデートしようが興味なさそうな佐成から、軽く突き放すような言葉を言われてしまいます。情けなくなった一香はその場を離れようとしますが、彼に呼び止められ、次の瞬間――


一香も私も、パニックです。

興味なさそうなフリをしながら、手を握ってくるアンビバレントっぷり。手、というより指ですね。指を握る、という接触度合いもまた絶妙。この触り方から、佐成の名残惜しそうな寂しさが感じられます。「振り回すとはこういうことだ!」と言わんばかりのこの言動に、一香と私の心は右往左往。

佐成の要注意シーンはまだまだありますが、そこは本作品を読んでいただいて、しみじみと味わっていただきたいところ。

本当の自分を見てくれている、そんな信頼感。「好意」と「無関心」をいったりきたりする曖昧な態度。佐成が放つ、爽やかでキケンな香りは、まるで媚薬。一度摂取したら、離れがたくなる魔力を感じます。

ハマっちゃいけない、でも抗えない一香。素直に一香を応援できない、でもページをめくる手は止まらない私。我らふたりの落ち着かない心に、いっそトドメを刺してください……!

レビュアー

ほしのん イメージ
ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
X(旧twitter):@hoshino2009 

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